大阪、昭和10年創業の老舗のサバ料理が森一起さんの今年イチ

The Best of Dish 2015 2014年11月15日から2015年11月14日までの間で賢人のみなさんと編集部員が食べた料理のなかで最高のひと皿をご紹介します。お馴染みのあの店か?はたまた隠れた名店か?みなさんにとって、2015年はどんな「おいしい」一年でしたか?

2015年12月25日
カテゴリ
レストラン・ショップ
  • レストラン
  • 和食
  • 大阪
  • 居酒屋
大阪、昭和10年創業の老舗のサバ料理が森一起さんの今年イチ
Summary
・「からまぶし」という絶滅危惧料理
・大阪・阿倍野からさらに乗り換えてたどり着く理想郷
・大衆酒場の規範的一軒

いくらお金を積んだところで、手に入らないものがある。命とか、愛とか、誇りとか、それは人間の存在そのものに関わるものなのかもしれない。でも、僕にとってそれは、黄昏時の東京で突然襲いかかる「さばからまぶし」の強烈過ぎる誘惑だ。
無論、上質な鯖とおからが手に入れば、自らチャレンジすることも可能かもしれない。水準は到底比べようもないが、似たようなものは再現できる。しかし、その背後に、目配りと気配りで、てきぱきと店を采配する女将・久美子さんの声が聞こえなければ、自分の中での「さばからまぶし」は完結しない。

凛とした大衆酒場の規範

酒場に不可欠なものは、肴の旨さ、酒の旨さ、懐に優しい価格設定と、即座にいくつも上げることができる。だが、最も大切なものは「店の気」だ。そして、それを決定づけるのは店の中心に立つ、女将や大将の存在にかかっている。常に客に気を配り、スタッフに適切な指示を出し、店の全体を仕切りながら、細部にまで目を届かせる。

紅いカウンターと、ベージュの肘置き。歴史に裏付けられた店の品格と落ち着き、凛とした適度の活気の中に、色気さえ感じられる安らぎに満ちた空間。スタンドアサヒは、まさに大衆酒場の規範ともいうべき高みにいる。しかしながら、肴は滅法安く、飛び切りに旨い。居酒屋の価格で、割烹の味を堪能し、女将の粋に触れる。

時代を超越した肴に酔う

上方の古典落語『上燗屋』にも登場する「からまぶし」は時代の流れと共に忘れられつつある肴だ。しかし、昭和10年創業の「スタンドアサヒ」では、当たり前のように提供され、店の名物の1つになっている。
同じく「小鉢」も、ここでは欠かせない。カボチャや茄子などの野菜、トコブシやイタヤガイなどの貝類、鯛の子や鱧の子。それぞれ絶妙の出し加減で煮られ、カウンター後ろに並べられた煮物の鉢から、客の好みに合わせて女将が小鉢に装ってくれる。

まず小鉢と酒を頼み、旬の煮物に舌鼓を打ちながら、お代わりの酒とさばからまぶしを注文する。程なく女将から「ちょうどモロコが炊けたんやけど」などと声が掛かる。後は久美子さんに身を委ねれば、その季節、1番美味しいものを存分に味わえる。

評判のきずし(〆鯖)を、注文を受けてから、さっとおからで和えたさばからまぶし。旬の海と山の幸を、それぞれ丁寧に炊いた小鉢。この2品を食べるだけでも、南田辺という駅に降りる価値がある。

<メニュー>
さばからまぶし 300円
小鉢 350円

※森一起さんのスペシャルな記事『幸食秘宝館・武蔵小山、グルメランキング上位には載らないホントウの名店3軒を巡る』はこちら

スタンドアサヒ

住所
〒546-0035大阪市東住吉区山坂2-10-10
電話番号
06-6622-1168
営業時間
17:00~22:30
定休日
定休日 日・祝日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/62x50p010000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。