環境問題に取り組むお店の活動を取材レポートします。
地球環境の保全と改善、人間の健康問題をテーマに、千葉に33万坪の自社農園をつくり、お店で出る食品残渣を有機肥料化して野菜を栽培。採れた野菜を料理として提供する…。そんな見事な循環型システムを確立したカフェ&レストランが考える「エコと健康」について、お話を伺いました。
ベーカリーカフェ129 Dennis AMERICAN GRILL
東京都/茅場町
隅田川のほとりにあるガラス張りの開放的なカフェ&レストラン。下町情緒あふれる街並みにあって、ひときわおしゃれな雰囲気を漂わせていますが、その裏で経営するピアザグループは環境マネジメントの国際規格であるISO14001の認証を受け、環境保全に対するさまざまな取り組みを継続的に進めています。

自家農園「ピアザ・エコファーム」
食の安全を考えたとき、行きついたのが自社農園の所有。千葉に約33万坪の農園「ピアザ・エコファーム」をつくり、農薬や化学肥料を一切使わずに野菜を栽培し、レストランで使用する野菜のほとんどをまかなっています。また同農園の敷地内には広大な社有林があり、自社で排出する二酸化炭素相当量を吸収する作用も期待できるとのことです。

ネイティブアメリカン インディアンフーズ
自然に寄り添って生きるアメリカのネイティブインディアンの伝統食を取り込んだ料理が自慢。ミネソタ産のメープルシロップやワイルドライスなどを隠し味に使っています。自家栽培の野菜との相性もよく、野菜本来の味を引き出してくれるそうです。お店で購入することも可能。
お店があるのは、ピアザグループの自社ビルでもある「永代橋エコピアザビル」。この都会的でオシャレなビルでは、風力発電や太陽光発電を導入しています。
20年前より地球環境への取り組みを続ける
隅田川にほど近い、東京中央区新川にある「永代橋エコピアザビル」。その1~2階にある《ベーカリーカフェ129Dennis AMERICAN GRILL》は、ガラス張りの開放的な空間でゆったりと食事を楽しめるカフェ&レストランです。
《ベーカリーカフェ129Dennis AMERICAN GRILL》を経営するのは、若者に人気がある街、原宿など都内に8店舗を経営するピアザグループ。母体となるのはガソリンスタンド経営のほか、不動産業、輸入業など幅広く展開する隅田商事(本社・東京渋谷区)です。「隅田商事では、約20年前から環境経営に注力し“地球環境の保全”と“健康問題”を2大事業テーマに掲げています」とまず先に教えてくれたのは、隅田商事取締役室長の山本英輔さん。「食の安全を考えたとき農薬や化学肥料を使わない野菜を自分たちの手で作ろうと、2001年には千葉県に自社農園“ピアザ・エコファーム”を作りました。お店で提供するほとんどの野菜を自分たちの手で栽培しているんですよ」。さらに2001年には環境マネジメントに関する国際規格ISO14001の認証を取得し、スタッフ一丸となって環境保全に取り組んでいるとのことです。
そんなピアザグループが手掛ける《ベーカリーカフェ129Dennis AMERICAN GRILL》で、実際に行われている環境への取り組みをお聞きしました。
食品残渣の循環システムでおいしい野菜を提供
《ベーカリーカフェ129Dennis AMERICAN GRILL》が行う環境保全活動の中でも、最も注目すべき点が前述の自社農園“ピアザ・エコファーム”の存在です。最近でこそ食の安全が騒がれていますが、その何年も前から食の安全と健康に着目し、検討を重ねた末に自社農園で自分たちの手で納得のいく野菜を作るという答えに至ったそうです。
千葉県富津市に作られた33万坪の広大な農園では、玉ねぎやジャガイモといった根菜からキャベツやレタス、白菜、ほうれん草といった葉もの、さらにトウモロコシからキノコ類、ハーブに至るまで、季節の野菜をたくさん栽培しています。専任スタッフを置いて農薬や化学肥料を使わずに愛情をこめて栽培し、さらに週末には社長を筆頭にレストランのスタッフも手入れに行くとのこと。
このエコファームには、さらに秘密があります。都内各所のカフェ&レストランで調理の過程で出る野菜の切りくずなどの食品残渣に処理を加え、有機肥料化して野菜生産に活用しているのです。
「野菜をたくさん食べることは健康につながる…と誰もが考えますが、ただ量をとるだけでなく、その野菜の質を栄養価レベルで考えることも大切だと思っています。そこで栄養価の高い良質な野菜とは? と考えたときに、無農薬で有機肥料を使用した露地栽培の旬の野菜を…という考えに達しました」と、店長の鈴木 哲さん。旬の野菜は栄養価が高く、野菜本来の持ち味が際立っているといいます。《ベーカリーカフェ129Dennis AMERICAN GRILL》では、手を加えすぎずシンプルな調理法で、そんな野菜が持つ甘みや心地よい苦味を引き出すよう工夫しているそうです。
食品残渣を減らし、栄養価の高い野菜を生産する自社循環型のシステムは、地球にもやさしく、そしておいしくて安心と、何よりも私たち自身に大きなメリットをもたらしてくれます。「週に2~3回、都内各店舗の食品残渣に乾燥処理を加えたものをたっぷり載せた車が千葉の農園へ行き、帰りにはいっぱいの野菜を載せて帰ってくる。その変身する姿を見るのもなんだかワクワクして楽しいものですよ」。この自社循環システムをもっと広範囲に広げていくことを今後の目標にしていると鈴木さんは語ります。
ピアザ・エコファームの種まきや収穫の様子は、エコファーム・タイムズとして配布しているほか、店内にも掲示されています。これからメニューに登場するイチオシの旬の野菜がわかるので、ぜひチェックしてみてください。
千葉富津市につくられた自社農園「ピアザ・エコファーム」。
都内のカフェ&レストランで出た食品残渣に処理を加え、有機肥料化するコンポストコンテナ。
週2~3回届くエコファームの野菜。ゆくゆくは生産量をあげ、地域の皆様に販売できれば…という夢も。
デニス・バンクス氏のお気に入り「野菜のクリームスープ」。手前の黒い穀物が、マノーミン。
エコファームから届いた無農薬の白菜を大胆に6分の1にカットし、そのままグリルした「白菜のロースト」。シンプルな調理法で白菜本来の甘みが引き出されています。
エコファームの野菜をたっぷり使った「ゴルゴンゾーラの野菜グラタン」。隠し味に使われたメープルシロップと素材の相性が抜群!
ネイティブインディアンに学ぶロハスな食生活
《ベーカリーカフェ129Dennis AMERICAN GRILL》の取り組みとして、もうひとつ特徴的なのが、アメリカのネイティブインディアン、デニス・バンクス氏がプロデュースする伝統的な自然食品を使用した料理の数々です。デニス・バンクス氏は著名なネイティブアメリカンの人権活動家で、また同時に環境保護のメッセージを世界に発信し、大きなムーブメントをつくり出した人物です。現在は若い世代の教育を中心に、自分の目の届く範囲でメープルシロップやワイルドライスといったネイティブインディアンの伝統的な自然食品を生産し、“ネイティブアメリカン インディアンフーズ”というレーベルで販売しています。
ピアザグループの社長はデニス・バンクス氏と親交を深めるなかで、「ファーストフードやジャンクフードによる食の乱れを見つめ直し、今こそ自然から与えられた恵みのみを摂取する昔ながらの食生活に戻るべきだ」という彼の自然と食と健康に対する真摯な姿勢に共感。彼の活動を支援する意味からも、鈴木店長いわく「デニス・バンクス氏の自然食品を“分けて”もらう」という形で、それらの商品を輸入・販売することになったそうです。
“ネイティブアメリカン インディアンフーズ”の自然食品の中でも、ワイルドライスの名で知られるマノーミン(稲の原種で、北米のリーチ湖に自生する水生植物)は、お店の料理にも頻繁に使われる食材のひとつです。特にこのマノーミンと自家製野菜をたっぷり使った野菜のクリームスープが人気。マノーミンの香ばしい香りとモチッとした食感がクセになってしまうようで、テイクアウトで求めるお客様も多いそうです。お店のオープニングにあわせて来日したデニス・バンクス氏もたいそうお気に召して、何杯もおかわりをしたというエピソードもあるほどです。
また“ネイティブアメリカン インディアンフーズ”自慢のメープルシロップも、デザートだけでなくメインデッシュの名脇役として味に深みを与えてくれます。
ネイティブアメリカンのロハスな生活の中から作り出された自然食品と自社農園で愛情たっぷりに育てられた野菜は、食の安全と健康を同時に追求する、《ベーカリーカフェ129Dennis AMERICAN GRILL》になくてはならない食材です。
ゴールなき、あくなき環境への取り組み
さまざまな活動を通して地球環境の保全と人間の健康問題をテーマに事業を展開するピアザグループ。実際に《ベーカリーカフェ129Dennis AMERICAN GRILL》を訪れるお客様の反応が気になるところです。
「お客様と一緒にできるエコを提案していきたいと思っているのですが、私たちのエコを押しつけてしまっては、エコではなくエゴになってしまいますよね」と鈴木店長は前置きしながらも、お客様からの反響に手ごたえを感じている様子です。「環境のことや食の安全に対して興味を持ってくださる方は非常に増えています。最近では、逆にお客様から新しい情報をいただいたり、ヒントをいただいたりしているほどです」。
《ベーカリーカフェ129Dennis AMERICAN GRILL》では、従来カフェのテイクアウト商品にポリエチレン袋を使用していたところを、化石燃料を使わないという視点から未さらしの紙袋(脱色や染色加工を行なっていないクラフト紙で作られた袋)へ変更。さらに簡易包装の呼びかけをしています。包装を断っていただいたお客様にはポイントを発行し、10ポイントでコーヒーやブレッドといった商品か、あるいはオリジナルエコバックをプレゼント。社会的にエコバッグへの関心が高まっていることもあり、この活動に賛同してくださるお客様は非常に多いそうです。「これらは“チーム・マイナス6%”の活動の一環としてお客様とのかかわり合いの中で行なっているのですが、それは私たちが行なっている環境への取り組みをお客様と共有していくための手段のひとつ。小さなことですが、お客様と一緒に環境を“意識”し、気持を“共有”することが一番大切なことだと思っています」。その鈴木店長の思いは、確実にお客様に届いているようです。
環境に対する取り組みにゴールはないと、鈴木店長は続けます。「環境保全活動には、これが絶対に正しいということがありません。私たちスタッフは常にミーティングを設け、今行なっている活動に関する意見交換をし、見直しと改善を加えています。環境への取り組みをこつこつと継続していくことにこそ意味があると思っています」。
それは、デニス・バンクス氏がアメリカで巻き起こした大きなムーブメントのように、人々に伝播し、地球環境と私たちの暮らしをよりよい方向へと変えていくかもしれません。
若き日のデニス・バンクを描いたオリジナル・エコバッグ。包装を断ることによって得られるポイントを集めて交換できます。
お店で提供されるコーヒーも、環境にやさしい持続可能な農林業によってもたらされた農産物等に与えられる「レインフォレスト・アライアンス」認証のコーヒー豆を使用しています。
店長 鈴木 哲さん
ピアザフーズシステム株式会社へ入社し、今年で10年になる。カフェピアザ、ベーカリーカフェ426の店長を経て、現在ベーカリーカフェ129 Dennis AMERICAN GRILLの店長を務める。店舗リニューアルや新店舗の立ち上げに関わるとともに、ISO14001認証取得時にはプロジェクトチームに所属し、環境マネジメントシステムの構築、実施、見直し・改善に日々奮闘する。
※本記事では、お店が主体的に取り組んでいるエコ活動を、お店への取材に基づいて紹介しています。

チーム・マイナス6%とは?
CO2などの温室効果ガスが増え、地球の気候が変わってしまう地球温暖化を解決するために2005年に京都議定書が発効され、日本は、温室効果ガス排出量を1990年に比べて6%削減することを世界に約束しました。これを実現するための国民的プロジェクトが「チーム・マイナス6%」です。
レジ袋を使わない、エアコンの設定温度を控える、水や電気を節約する、エコ商品を進んで購入するといった6つのアクションプランを設定し、一人ひとりができることを実践することを提唱しています。個人でも団体でもこのプロジェクトに賛同することを宣言するだけで参加できます。一人ひとりの力はそれほど大きくないかもしれません。でもみんなの力がチームとなって結集すれば、地球規模の大きな力になれる。「チーム・マイナス6%」には、そんな思いが込められています。
公式ホームページ http://www.team-6.jp