環境問題に取り組むお店の活動を取材レポートします。
《日水土》が使うのは、食材本来のおいしさと安全性を追求した自然栽培の野菜。手間ひまを惜しまず無肥料・無農薬の野菜を栽培する生産者、その味をしっかり引き出すシェフ…。店名どおり太陽と水、土だけで育った野菜のおいしさと自然栽培の魅力を伝えるレストランを取材しました。
ナチュラル&ハーモニック銀座 日水土 HI MIZU TUCHI
東京都/銀座
農薬や肥料を使わず土壌が本来持つ栄養分で育てた、自然栽培の野菜を食べられるナチュラルレストラン。フレンチをベースに和のテイストも盛り込んだ料理は、食材そのものの味を大切にしながら見た目の華やかさも楽しめます。1階の《結市場》ではこだわりの食材の販売もしています。

上質な自然栽培の野菜を使用
化学肥料や農薬はもちろん有機肥料も使わない自然栽培の野菜や果物を中心に、天然菌で醸造発酵させた味噌や、餌にまでこだわった肉など安全性の高い食材を使っています。

生産者の顔が見える食材を販売
レストランで使っている野菜をはじめ、米や味噌、納豆など安全な食材を販売。合成界面活性剤不使用の洗剤やオーガニック素材のタオルなど人にも環境にも優しい生活雑貨も扱っています。
古民家の2階を改装した店内は、スペースに余裕を持たせ落ち着いて過ごせるレイアウト。
茨城県産のレトロ人参や紅あずまなど、ほとんどの野菜が自然栽培もの。見た目も鮮やか。
古民家レストランで自然栽培の野菜を味わう
レストラン《日水土》があるのは、昭和4年に建てられた古民家の2階。1階は食材や雑貨などを販売する《結市場》になっています。自然素材にこだわって改装した館内は、漆喰塗りの壁や木目調のテーブル、カウンターなどが配され、のんびりとくつろげる空間です。
レストランで使用する食材のキーワードは“自然”。特に野菜は自然栽培のものが中心で、それ以外の野菜も化学肥料等は一切使っていません。化学肥料や農薬はもちろん有機肥料も使わない自然栽培は、土が本来持つ栄養素と作物の生命力を最大限に利用した栽培法。健康な土壌を作るには時間と労力がかかりますが、おいしい野菜が育つとあって注目を浴びています。また野菜だけではなく、肉や魚料理にも安全性の高い餌を食べて育った動物や産地直送の魚を厳選。卵は放し飼いの平飼方式で育った鶏が産む、有精卵を使っています。
これらの食材を見た目も美しくアレンジするのは浅川勇人シェフ。広尾にあるフレンチの名店《アラジン》を経て《日水土》のシェフになった浅川さんはこう言います。「素材のよさには自信がありますから、野菜本来の味をいかすことを一番に考えています。もちろん調理法や盛り付けには手間をかけ工夫を凝らしていますが、手を加えたことで素材の味が消えてしまうのでは本末転倒です」
浅川さんの料理は、見た目にも野菜の形が分かるものが多いのが特徴です。しかし食べてみると、下味やソースなど一品一品に丁寧な仕事が施されているのが分かるはず。ムースやスープなども、食べると素材の味が口の中に広がります。
ソースやダシにも安全性の高い食材を使用
《日水土》から声がかかる前から、食の安全性について思うところがあったという浅川さん。「安全な食材にこだわっている店は多いのですが、費用の関係からダシやソースに使う食材にまで安全性を追求できるところは多くありません。いくら自然栽培の野菜を使っていても、それにかけるソースに農薬が使われていては意味がありませんよね。そういう意味では、やはり食の安全は、提供する側がしっかり考えなければいけない問題だと思います」
《日水土》を経営するナチュラル・ハーモニーでは自然野菜をはじめとした食材を販売しており、出どころのはっきりとした素材を存分に使えるのが強み。1階の《結市場》には、毎朝、提携農家から新鮮な野菜や果物が届きます。その日のメニューは、仕入れられた食材を見てから浅川さんが決めています。「仕入れが予想とまったく違っていることも多く、最初はとまどうこともありましたが、今はそんなライブ感を楽しんでいます」
季節によっては野菜の種類がかなり限られるため、旬の食材を使いながら料理に変化をつけるのが大変と浅川さん。「茄子ばかり何種類も入荷された日もありましたが、そんなときこそ料理人として腕の見せどころですよね」
2007年6月のオープン以来、毎日のように訪れるリピーターも多く、そんな常連のお客さまも毎日変わるメニューを楽しみにしているそうです。
店頭には生産者が自信をもって出荷する、旬の野菜や果物が並べられています。
《結市場》ではオーガニックの砂糖や小麦粉、有精卵を使ったケーキやタルトも販売。
野菜や果物につけられたプレートには、農薬や肥料の使用履歴をはじめ詳細情報を表示。
安全でおいしい野菜を楽しんでもらうために情報公開を
1階にある《結市場》には、野菜や果物だけでなく調味料や日用雑貨なども置かれています。どれも自然をテーマに選び抜かれたものばかり。《日水土》で食事をした後、メニューに使われていた食材を買って帰るお客さまも多いそうです。
「初めてのお客さまには、お米や味噌、納豆などをおすすめしています」と語るのは、《日水土》の店長をつとめる中村吉郎さん。特に味噌や納豆は、原料の大豆はもちろん天然菌にまでこだわっています。「人工的な菌で醸造発酵させたものとは味が違いますよ。貴重な自然栽培米も、《日水土》で出している風味のいい七分米のほか、白米と玄米を用意しています。こちらも食べていただければ違いが分かると思います」
《結市場》の野菜や果物にはプレートがついており、生産地や生産者、農薬の使用履歴、肥料の種類などを明記しています。「土壌消毒剤、除草剤、化学肥料の不使用が前提ですが、やむを得ず農薬を使った場合も使用回数を明記しています。殺虫剤を数回使用している野菜や果物を見て、そんなに使っているのかと驚かれるお客さまもいらっしゃいますが、一般に流通している商品にはその十倍の農薬を使っているものもありますからね。そういった情報を隠さずに公開していくことも重要なことだと思っています」
食と生活環境についてのセミナーを開催
「生産者の中にも自然栽培に興味を持っている方は多いのですが、肥料をまったく使わないとなると、なかなか第一歩を踏み出せないのが実情です。しかし少しずつ自然栽培に取り組む生産者の方々は増えています。確かに自然栽培は手間がかかります。それでも私たちは自然栽培の野菜や果物の味に自信がありますから、それを広めていきたいと考えています」と中村さんは言います。
ナチュラル・ハーモニーでは、食と生活環境をテーマに自然について考えるセミナーを開催しており、農業関係の参加者も多いそうです。「このセミナーは、自然栽培の原理原則を理解していただくことによって、ナチュラルライフの実践をより具体的に伝えていくためにはじまったものです。初めは化学物質過敏症の方の参加が多かったのですが、最近では市民農園や家庭菜園をされている方、また美容や医療関係の仕事をされている方の参加も増えています」
自然と調和した生活環境について考えるセミナーは、安全な食材を選ぶポイントから農と自然の関係にまで言及しています。そのため、野菜の自然栽培や日本伝統の発酵食品に目を向けるような話題に展開することもあるようです。「以前に比べると、食の安全性について意識の高い方が増えていると感じます。みなさん身近な問題としてとらえています。こういった流れが、日本全体の食の安全性を高めることにつながればいいですね」
ナチュラル&ハーモニックスクールでは、自然と調和した生活についてのセミナーを開催。
セミナーでは納豆や味噌など天然菌を使った発酵食品についても学べます。
シェフ 浅川 勇人さん
広尾のフレンチレストラン《アラジン》を経て、オープン当初から《日水土》のシェフをつとめる。フレンチをベースに味噌や胡麻など和の食材も使った料理は、野菜本来の味を引き立てる。見た目の美しさにもこだわり、プレートを彩る料理は美的感覚をくすぐると評判。
店長 中村 吉郎さん
音楽関係の雑誌編集者時代から食材の安全性について興味があり、ナチュラル・ハーモニーに転職。同時期にナチュラル&ハーモニック銀座のオープンが重なり、銀座館長として本社流通部門より移動、《日水土》の店長を兼ねる。「レストランですから、おいしいことが大前提。常連のお客さまが多いのも、味が確かだからだと自負しています」
※本記事では、お店が主体的に取り組んでいるエコ活動を、お店への取材に基づいて紹介しています。