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料理の世界に入るきっかけとなったお店 |
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「イル・ド・フランス」 (東京・六本木/フレンチ)(閉店) |
「イル・ド・フランス」は私が料理の世界に入るきっかけとなったお店です。70年代のオイルショックで定職が見つからず、何か技術を身につけてアメリカへ渡ることを考えていた私は、「料理人ならアメリカでも仕事が見つかるのでは?」と思いつきました。「イル・ド・フランス」は仕事探しで訪れた六本木で"従業員募集"のチラシが貼ってあったので、この店の扉を叩きました。その時はまさかこの店が日本フランス料理界を先導するシェフ、アンドレ・パッションさんのお店とは全く知りませんでした(笑)。二十歳を過ぎて料理世界の門を叩いたので、「この歳からでは無理だろう」と初めは断られました。仕方ないか…と店を出て、六本木の交差点で「次はどの店を当たろうか・・・」と思っていましたら、後ろから私の後を店の支配人が追いかけてきまして、「もう一度話しをさせてくれ」と言って来たのです。実はこの店は伝統的なフランス料理が食べられることで多くの外国人が訪れるとのことで、私の英語力が買われて働けることになったのです。渡米を目標にしていたこともあり、限られた時間の中で必死にパッションさんの技術を目で見て習得しました。そのおかげで半年後にはパッションさんに次ぐシェフまで地位が上がり、結局渡米するのではなく、この世界で生きていくことを決意いたしました。残念ながらこのお店は今はもうありませんが、とても思い出深いお店の一つです。 |
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フランスの技術の高さを感じた料理 |
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「ルキャ・カルトン」 (フランス・パリ/フレンチ) |
「ルキャ・カルトン」はパリのマドレーヌ広場の一角にあるアラン・サンドランスという天才シェフの3つ星レストランです。本場フランスの3つ星レストランということでどれだけ素晴らしいお店かと期待して訪れてみたら、マドレーヌ広場の歩道に面した割と地味目な普通のお店だったので驚きでした。店内も狭かったですし。しかしお料理はやはり素晴らしかったです。当時私はハトの料理を食べたことが無かったので、早速注文しました。訪れたのが春だったこともあり、春のお野菜が彩り良くお皿の上に並べられ、その上に非常にシンプルにローストされたハトが盛り付けられているんですね。おそらく表面にハチミツを塗っていたのでしょう。自然の甘さが感じられ、また火の通り具合もミディアムレアよりも若干柔らかめで、見事なお味でした。過度に飾ることなく、細部にわたるまで技術の高さが感じられる一品で今でも思い出されます。 |
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本場のサービスに心をうたれる |
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「ラ・セール」 (フランス・パリ/フレンチ) |
パリにある2つ星のレストラン「ラ・セール」は私が初めてパリに行った時の夕食に訪れた店です。店自体は狭いのですが、席と席の間の仕切りには花が生けられるような台があり、大変きれいな店内でした。そして印象的だったのが、この店の天井です。夜9時以降になると、天井が「ガー」と音を立てて開き、そのタイミングですっとライトが消え、夜空に光る星空が席から仰ぎ見ることができるのです。この演出には「さすが、フランスだな・・・」っと思いましたね。そして、この店のマネージャーが素晴らしい。食事が終わったお客様がいると、席まで挨拶をしに行くのです。手には小さなお皿やコーヒーカップなど"リモージェ"という記念品を乗せたトレーを持ち、「どうぞ、記念にお一つどうぞ」と女性にプレゼントを渡します。本当に素晴らしいサービスで、彼のお客様に接する態度は今でも私の頭にしっかりと焼き付いております。お食事もおいしかったですが、サービスの面で大変印象に残ったお店です。 |
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プロフィール |
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エノテーカ ピンキオーリ 取締役 総支配人
坂間英明
1951年千葉県生まれ。 フレンチレストラン料理長・支配人を経た後、リゾート地や都内にて数々のレストラン展開を手がける。 現在、株式会社アターブル松屋取締役・イタリアレストラン営業部長、エノテーカ ピンキオーリ 取締役 総支配人。 |
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