ジャクソン、という特別。
時間に余裕のある金曜の夜はシャンパーニュが飲みたくなる。少し肌寒くなりはじめた、秋の夜長。いい仕事をした自分へのご褒美としては、お仕着せのノンヴィンテージ(NV)ではなしに、ワンランク上等な一本を選びたい。そんな訳で、数あるシャンパーニュの中から私はジャクソンを選んでみた。シャンパーニュのNVは、栽培条件の厳しいシャンパーニュ地方において、年ごとのブレを最小限に抑えるため造られるもの。ところが、ディジー村にあるメゾン、ジャクソンの場合は少し違う。 ヴィンテージもののようにその年々のキャラクターを表現しつつ、複雑味を与えるため、過去のリザーヴワインをブレンド。こうして造られるのが「キュヴェ7XX」シリーズであり、その最新バージョンが今回お薦めする「738」だ。
「鰻のタレ」のごとく継ぎ足されたワインに由来する味の奥行き。
738の主たるヴィンテージは2010年。この年は黒ブドウのピノ・ノワールに病気が発生したことから、白ブドウのシャルドネの比率が必然的に上がり、全体の61%を占める。ひとつ前の737だと、シャルドネの割合は43%に過ぎなかったので、2つのキュヴェの味わいは明らかに違う。 リザーヴもふつうのメゾンなら過去2〜3年のワインを20%程度ブレンドしてお茶を濁すところだが、このキュヴェ738には33%も使われ、2009年のディジーのシャルドネと2008年のアヴィーズのシャルドネのほか、キュヴェ737、736、735がブレンドされている。過去のキュヴェを加え続けることで、注ぎ足し注ぎ足しの鰻のタレのごとく、味わいにコクが生まれる。事実、735にはもっとも古くて2005年のワインが含まれているはずだ。 これら以外にも、果汁は一番搾りしか使わないとか、発酵は大樽を使うとか、スペックを挙げ出したら切りがないので止めておくけれど、玄人好みの職人的メゾンがジャクソンである。 キュヴェ738はシャルドネ主体のピュアでエレガントな風味に、凝ったリザーヴワインに由来する奥行きが加わり、アペリティフから魚あるいは白身の肉料理まで幅広く楽しめる。シャンパン好きを自負するなら、一度は試してみるべきメゾン。
白金高輪の名店でいただく。
それを楽しむなら、上質でクラシックとモダンが見事に融合したフレンチとシャンパーニュの知識が豊富なソムリエのいるレストランで楽しみたい。お薦めは、白金高輪の「オレキス」。オーナーでソムリエの春藤祐志さんは、いまや伝説のレストランとなった西麻布「ザ・ジョージアンクラブ」で支配人兼ソムリエを長年務めた人物だ。シャンパーニュについての深い知識・経験を持ちつつ、大阪出身ならではの軽妙なトークで場を和ませてくれることだろう。
<OREXISでの価格>
「ジャクソン738」14,000円(税・サ別)
ランチ 3,000円~
ディナー 7,000円~
※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら
OREXIS(オレキス)
- 電話番号
- 050-3313-3678
- 営業時間
- 昼食:11:30~15:30(L.O.13:30)、夕食:18:00~24:00(L.O.21:30)
- 定休日
- 毎週月曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。