大阪立ち飲み文化の象徴=串かつ。ある名店、復活の話。

東京・NY・パリ、世界の食トレンドの最前線を走る街を中心に、国内外を問わず、「次に食べるべきもの」「こんど行きたい店」をクローズアップしていきます。

2015年09月17日
カテゴリ
コラム
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  • 串揚げ・串カツ
大阪立ち飲み文化の象徴=串かつ。ある名店、復活の話。
Summary
・いつ行っても満席の地元の超人気店
・ソースの隠し味は赤ワイン
・季節によってハモやポン酢をつけて食べるマグロも

大阪のファーストフード

09年10月に初めて発刊した『ミシュランガイド京都・大阪2010』で串カツ店が星を取ったというニュースは、「さすが大阪の串カツ」という声が上がったが、串かつ屋はそもそもファストフード的吞み屋。正直、地元大阪でも「ほんまかいな」と驚きだった。
タイミングを合わせるように10年には、高級歓楽街で知られる北新地に、このコラムで書いている新世界発祥の[だるま]が出店。「大阪新世界元祖串カツ」という看板が大きく踊っている。
またもうひとつ、今年夏、大阪で新聞・テレビでニュースになった串カツ店がある。ニュースは大阪駅前地下道の工事で阪神梅田駅西改札口裏にある「ぶらり横丁」の店舗に対し、大阪市からの「行政代執行」つまり立ち退き撤去が通告されたこと。その1軒が開店から閉店まで、いつ行っても満員の名店として知られる[七福神]だった。
わたしもその客の一人で、前を通る際にはいつも「空いてるかな」とチェックし、オッケーなら食べて帰る店だ。週3回行くこともあった。ここの串かつはパン粉の衣が薄く、「2度づけお断り」のソースは隠し味に赤ワインを使っていておいしい。もちろん1本百円ちょい見当と安い。夏の季節だけ出すハモやポン酢をつけて食べるマグロなど、グルメなネタも人気だ。

場所は変われど味は変わらず

たまたま行政代執行通知があったその日、テレビや新聞社がカメラを据えた「ぶらり横丁」前を通ってると大将の大越さんがいた。「代執行はむちゃくちゃにされるんで、自主撤去してます」と言いながら、苦虫をかみつぶしたような顔をして店のあれやこれやを運び出していた。
そしてこの串カツの名店、2カ月経ってお盆明けに駅前第4ビル地下2階に移転オープン。「ぶらり横丁の看板もついでに持ってきましてん」と大将。思い入れの深さがわかる。
ピカピカの新しい店は、キャパが3倍強に。コの字の向かい合うカウンター形式で、フライヤーは入ってすぐ店の左右ど真ん中に鎮座。「揚げても揚げても終わりませんわ」と客の注文を一人でこなす串揚げ職人の大将。
早速ビールとカツ(牛)2、イカ、キスなどと注文する。
「はいよ」と素材に素早く衣をつけ、揚げ油にぽいぽいと放り込む。
ほどなく出てきたアツアツの串カツ、まず牛から食べると「味、変わってませんか?」と訊く。
まさしく七福神の味、まるで変わってないと思う。けれども何だか無念さ悔しさが伝わってくる。

<メニュー>
串かつ110円、165円 盛り合わせ660円 ビール450円(すべて税別)

※江弘毅さんのスペシャルな記事『いい店にめぐり逢うために知っておきたいこと』はこちら

串かつ 七福神

住所
大阪府大阪市北区梅田1-11-4 大阪駅前第4ビル B2F
電話番号
080-1410-4177
営業時間
14:00~23:00、土・日 11:30~23:00
定休日
定休日 年末年始、お盆休

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。