【連載】東京・最先端のワインのはなし verre3

ヴァンナチュール。自然派ワインとも訳されるこのワインは、これまでのスノッブな価値観にとらわれない、体が美味しいと喜ぶワイン。そんなワインを最先端の11人が紹介する。

2015年09月30日
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【連載】東京・最先端のワインのはなし verre3
Summary
・3杯めはパリの名店出身
・ボージョレのガメイの域を超えた造り手
・ナチュール嫌いでも評価する1本

Domaine Yvon Metras Fleurie2012(ドメーヌ イヴォン メトラ フルーリー)

3杯めの美味しいワインを注いでくれるのは、目黒・元競馬場前にありながら、店に入るとパリの空気感が漂う「le verre volé à tokyo(ル・ヴェール・ヴォレ・ア・東京)」店主の宮内亮太郎さん。パリに本店を持つ、ナチュラルワインの最重要店の一つだ。そんな宮内さんにとって、特に強く印象に残り、今も愛してやまないワインがイヴォン・メトラだ。

<宮内さん>
出逢いは、衝撃でした。
フランスに渡り、先日、「ピヨッシュ」林さんが紹介したジャン・イヴ・ペロンのワイナリーで働き、パリの「ル・ヴェール・ヴォレ」(以下、V.V.)、その次にドメーヌ・アニエス・エ・ルネ・モスの畑を手伝っていた頃です。
V.V.のオーナーであるシリル・ボウダリエから連絡があって、社員にしたからパリにすぐに戻ってくるようにとのこと。
忙しくて人手が足りなかったようです。
2008年のことでした。

その頃のV.V.という店は、とてもマニアックなサービスばかりで全員がヴァンナチュールに詳しかったんです。いまのパリは詳しい人も増えましたけど、その当時、この手のワインのことがわかっていて、ちゃんとお客さんに伝えることができるような店なんて、パリ中を探しても5軒もなかったように思います。

そんな仲間たちと毎晩のように飲んでいたワインの一つがイヴォン・メトラのワインでした。

イヴォンのワインの良さってナチュールではあるけど、ナチュール嫌いでも飲めるということ。
そして、「ボージョレのガメイ」に貼られたレッテルを簡単に覆す味わいだと思います。

その当時飲んでいたのは、2007年ヴィンテージあたりだと思いますが、このフルーリーはとにかく余韻が長い。
体の中をスーッと流れるんだけど、もう一度お腹の中から湧き上がってくる。
ただただ、飲みやすいとかそういう類いのワインではないのです。

ボージョレのガメイなので、さくらんぼや、特にフルーリーなのでゼスト(柑橘の皮)のようなニュアンスがあるのですが、ヴィンテージになると、イチゴジャムのような力強さと余韻を感じます。
写真は2012年ヴィンテージで、もう市場にはほとんど残っていないと思いますが、本当に美味しいです。

僕がパリで飲んでいた頃からワインの仕上がりにブレも雑味も感じさせないというのは同じ。
なかなかこんなワインを造ることができる人はいないと思います。

イヴォン本人とパリ、フルーリーで一緒に飲むことが出来たのは貴重な経験です。