ホルモン、カレー、和の23皿

【連載】マッキー牧元の「ある一週間」 第7週  日本を代表する食道楽の一人、マッキー牧元さん。彼はどんなものを食べて一週間を過ごしているのか。「教えていいよ」という部分だけを少しのぞき見させていただく。

2015年10月31日
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ホルモン、カレー、和の23皿
Summary
・福岡・春吉、名店のホルモン
・新富町の"危険"な一軒
・田町、"混沌とした"カレー
・名古屋・覚王山、想像を超えるおもてなし

9月22日一軒目「ホルモンの喜び」

福岡は春吉の「塩田屋」にて、敬虔なるホルモン教の祈りを捧げました。
湯引きの盛り合わせを味噌ダレと醤油で食べて、一気に祈りは深くなり、
ミミハツ (ハツの筋肉の部分)の「噛め」と叫ぶ食感に、のけぞります。
カリッと表面を香ばしく焼き上げた白 (直腸)で、笑いが止まらなくなり、ニンニク風味でこちもサクッと焼いたのど笛(豚の気管)で、嬉しさのあまり机を叩く。
切り方が素晴らしく、口の中で鉄分と甘みが溶けていく、牛レバーを食べて涙をし、
ゴマとごま油、一味を振りかけた、コブクロ焼きで、笑いがとまりません。
「よくこんな形にできるね、大変でしょ」というと店主が不敵な笑いを浮かべた、コラーゲンの甘みが舌の上で溶ける「テール」に、深く深くこうべを垂れ、
絶妙な甘辛タレに絡めたシンタマは、目の前の鉄板でさっと焼いて食べる。
「こん海苔がいい仕事をして、箸が止まらんばい。こんちくしょう」。
最後は丸腸のタレ焼きときたもんだ。
「最初からタレつけると焦げるので、焼いてからタレを絡めてあります」という丸腸は、カリッと表面にはを立てれば、中の甘い脂にふわりと歯が包まれる。
そこに甘いタレが漂って、ああ福岡の夜は、歓喜の雄叫びとともに更けていく。

塩田屋

住所
〒810-0003 福岡県福岡市中央区春吉3-25-10 王丸ビル1F
営業時間
092-712-2040
定休日
不定休
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/jsxf3h490000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

9月22日二軒目「新富町でもホルモン」

チレのコンフィは、えぐい甘みと血の香りで舌を惑わし、コブクロと紫玉ねぎのカチョ・エ・ペペは、チーズのコクと塩気がコブクロの食感と嬉しそうに踊る。
レバカツは、優しく甘く、豚足と山椒のバルサミコ煮込みは、コラーゲンのとろとろとした甘みが、バルサミコと抱き合って、人間を堕落させる。
ミックスホルモンの煮込みを食べては、その下処理の確かさと様々な食感甘みや脂に、思わず叫ぶ。
「これが人生だ!」
キャロットラペとパクチーを添えた豚おっぱいのグリルは、乳の甘みが顔を子供に戻す。
本日の内臓のグリルミストにいたっては、もういつ死んでもいいと言い出す始末。
新富町のこの店は、大変危険です。

Nodo Rosso(ノードロッソ)

住所
〒104-0041 東京都中央区新富1-6-5 107
電話番号
03-5542-0504
営業時間
18:00~24:00 (L.O.23:00)、金曜18:00~翌2:00 (L.O.1:00)、土曜17:30~23:00 (L.O.22:00)
定休日
定休日  日曜 ※月一回休み
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/2zgzg9cr0000/
公式サイト
http://ameblo.jp/nodorosso/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

9月23日「チキンカレーonドライカレー」

国境問題~私は国境を尊重する~
新宿「アカシア」の「シチカレー」はどうだろう。
運ばれるや、すでにシチューにカレーが侵犯している。
ただちにご飯で、万里の長城の如く国境を定め、両者が混ざらないようにして、食べすすむ。
時折カレーがシチューへ表敬訪問。
時折シチューがカレーに時候の挨拶。
しかし勝手には交わらせない。
最後の最後までルールは守る。
やがて国境は細くなり、崩壊し、融合する。
だがその時、両者を受け止めるべき国境(米)は存在を消し、あらためて国境という存在の偉大さをを思い知るのであった。
田町「ホーカーズ」では、国境が曖昧になってしまった。
ドライカレーという領土に、インドチキンカレー、玉子まで頼んでしまったからである。
カレーは同盟国とはいえ、いきなりインドカレーを来訪させてはいけない。
半熟卵は非武装中立国とはいえ、いきなり玉子の入国を許してもいけない。
まず本国のドライカレーを、三口ほど食べすすむ。
しかる後、同盟国を三分の一ほど受け入れる。
だが首都でなく、国のはずれに招き入れ、入念に意見を交換する。
うまい。
両者の主張と相互文化への理解がが、うまさを増幅させている。
ここで中立国を参画させるが、同盟国との外交地点とは反対側の領土、やはり国のはずれにて歓待する。
うまい。
中立国ならではの穏やかさが、その甘みが、本国の先走りしがちな一本気を、丸く収拾している。
三地区での、互いのよさを生かした展開をにらみ合い、噛み締めながら、ついに時が来たり。
三者を一気に出会わせる。
ああ、美しい。混沌の危うき美しさ。

Curry and Dining Bar Hawkers

住所
〒108-0023 東京都港区芝浦3-14-19 大成企業ビル1F
電話番号
03-3456-1755
営業時間
11:30~L.O.14:00、18:00~L.O.21:00
定休日
定休日 土・日・祝
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/174wxcnk0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

9月24日「23皿」

揚げ銀杏である。
下に敷かれしはカカオ。上にかかりしは昆布茶。
銀杏のほろ苦みとカカオの苦み、昆布茶のうま味と銀杏のほろ甘み。すべてが繋がって、銀杏の個性を輝かせる。
それは銀杏へのありがたみを深くし、秋への感謝をそっと忍び寄らせる。
料理とはこういうことなのか。
こうして、名古屋 覚王山「野嵯和」の23皿への幕開けは、静かに始まった。

愛と精緻と、色気に溢れた料理は、何皿出されても飽くことなく、心をふるわせ続ける。
寄せたピュアホワイトは、ヨシエビのそぼろとほうれん草が乗せられ、振り柚子がされていた。冷たいのに、甘い。
いやその冷たさが、精妙に計算されている。よくあるトウモロコシの寄せものとは違い、海老の甘味と出会うことによって、優美な甘さに変化して、トウモロコシだけが突出していない。下にわずかに敷かれた、冷たい吸い地が心憎い。

おぼろ昆布のうま味に持ち上げられた、ほっくりと甘い百合根のなかで白海老が息づくアメリカンドック。
渡蟹のほぐした身と同化するよう、レンコン、絹さやが細く細く同寸に切られ、見事な塩梅の玉味噌がとろりとしなだれる、ため息が出るような滋味に富んだ小鉢。
昆布〆をして色気を増したボタン海老ととんぶりと菊の花を合わせ、香ばしい焼き椎茸の出汁をかけた小鉢。

噛めば、空気を含んだ太刀魚がムースのように甘く崩れゆく、春巻。
栗の甘みと渋み、海老の保の甘見、マスカット甘さと酸味が、白和えのうま味の中で優雅に舞う。
フグのタタキは、芥子味噌で。その厚みが精妙で、噛んで滲み出てくるうま味に芥子味噌がピタリと寄り添う。添えたのは、フグ皮のヌタである。
鱧のつみれは梅粥を合わせ、上に炒めた葱と鱧皮の天ぷらを乗せる。どこまでも穏やかに、安らかに心を導く、慈愛に満ちた味わいに目をつぶる。

北海道ぶりは、カマ下のなめろうを合わせて食べる。味噌が出過ぎず魚の味が主体にしたなめろうは、ブリの脂を持ち上げて、酒を飲ませる。
半生に火を通した三重の車エビは、海老味噌のたたきと焼き葱を合わせて。胴体は3/1ほど加熱し、ゲソは太白で炒め、同じく極細に切ったエリンギと昆布の太白炒めを合わせた皿は、新イカのいたいけな食感を、茸や昆布のうま味が静かに持ち上げる。
秋刀魚の鮨は韓国海苔と。添えたるはご主人いわく「秋刀魚のすべてです」。肝やら身やらをたたいたものだという。それを海苔に乗せ、くるりと巻いて食べる。日本の海苔だと主張しすぎる嫌いがあるが、上質な韓国海苔は秋刀魚を引き立て、中からは「秋刀魚のすべて」が現れて、我々は海の中を、秋刀魚とともに泳ぐのである。

赤万願寺唐辛子の寄せものは、ああ、あの三田の名店の赤ピーマンのムースのようではないか。赤万願寺がこんなにも優しく甘く、エレガントだったとは誰が知ろう。
シマアジは海苔の佃煮とわさびで。これもまた、海の中へと誘い込む味わいである。
そして野澤さんの真骨頂の一つである、子持ち鮎のコロッケは肝のソースを添え、上からは煎った卵と熟成ミモレットが振りかけてある。なによりコロッケが、歯が入っていけば行くほど鮎の味が湧き出てくる。そこへことチーズのうま味と肝の複雑味が加わり、たまりません。
うま味の濃度が極めて高い、香茸の天ぷらは、サクッと噛み込めば、うま味が粘りっこく、後から香りが抜けていく。

鰆白みそ焼きは、焼かれているのに関わらず、まだ海中にいるようなみずみずしさだが、余分な水分は抜かれているのだろう。その品のある甘みが凝縮している。上には砕いた枝豆と添えたのは、梨のガリ。
飛騨牛のシンタマは焼き椎茸の中の部分だけを巻いて、あけがらすを少し。塩加減が精妙で肉の味を生かし、椎茸の食感が牛肉をこれほどまでエロくさせるとは。
ウニと海苔を乗せた小クエは、食べればウニと海苔とまぐあうが、最後にクエの味だけが膨らんでくる。

バターと黒胡椒を少し聞かせた鮑のお粥は、米と鮑のうま味が馴染み、悦楽の高みへと引きすり込まれる。
水菓子は、黄桃と白桃のシロップのかき氷に黄桃と白桃とピオーネ。
極めて独創的であるが、味の道理を外していない。
昨今のアイデアが優先し面白さばかりが先行する料理とは、一線を画している。
発想の根っこに、アイデアよりも、食材への敬意が深く深くあって、今までとは違う方法で、食材の持ち味を引き出してやりたいという、誠実な熱意が燃えている。
しかも独善的になりすぎない。
「牧元さんは、お酒をお飲みになるので、今夜は魚のすべてを使うように考えました」。そう言って野澤さんは静かに笑った。
あくまで、客本位なのである。
こんな店は他に知らない。
来年からしばらくお休みされるということだが、いつかまた野澤さんの料理が食べる日を夢見て。
名古屋「野嵯和」にて。

野嵯和

住所
〒464-0833 愛知県名古屋市千種区大島町1-11-2
電話番号
052-752-7010
営業時間
月~日・祝日・祝前日 ランチ 11:30 (L.O.12:30)、ディナー 18:00 (L.O.20:00) ※ランチ、ディナーとも完全予約制
定休日
不定休日あり
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/3sne5mjs0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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