柳忠之さんが推薦。2015年私の最高のモエ・エ・シャンドン

The Best of Dish 2015 2014年11月15日から2015年11月14日までの間で賢人のみなさんと編集部員が食べた料理のなかで最高のひと皿をご紹介します。お馴染みのあの店か?はたまた隠れた名店か?みなさんにとって、2015年はどんな「おいしい」一年でしたか?

2015年12月11日
カテゴリ
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柳忠之さんが推薦。2015年私の最高のモエ・エ・シャンドン
Summary
・柳さんはひと皿ではなくシャンパーニュ
・中身の一部は瓶内3次発酵!
・あのドン・ペリニヨンP2を上回るプライス
・ゆっくり飲むとわかるその複雑性

「2015年最高の1本」のお題目に、「いえいえ1本なんて選べません」と一度は申し上げた私であったが、ひと晩で考えを改めた。やはり今年最高の1本はこれ。

複雑すぎる味とスペック

驚愕のシャンパーニュ「MCIII」。
シャンパーニュの巨人(※1)、モエ・エ・シャンドンが20年に及ぶ試行錯誤の末、ついにリリースしたキュヴェ・プレスティージュ。ステンレスタンク醸造の2003年に、オークの大樽で発酵熟成させた02年、00年、98年を加え、さらにそのうえ一旦は完成させたデゴルジュマン(※2)前のグラン・ヴィンテージ99年、98年、93年を抜栓してアッサンブラージュ(ブレンド)。04年にティラージュ(瓶詰め)し、丸10年寝かせて14年にデゴルジュマンした。つまり、99年、98年、93年のグラン・ヴィンテージにおいては瓶内3次発酵(※3)が施されたわけで、マニアならむせび泣きしそうなスペック満載のシャンパーニュである。

その飲み方に注意

これだけ複雑な造りをしてるのだから当然だが、フレーバーもコンプレキシテ(※4)の塊。しかし、その複雑さはアタックからフルスロットルで訪れるものではなく、時間とともにひとつ、ふたつと折り重なっていく。だからグイッと一気に飲み干してしまうような堪え性のない人だと、「飲みやすいね」のひと言で終わりかねないのだが、時間をかけてゆっくりと味わえば、グラスの中で繰り広げられる壮大なスケールのドラマにきっと涙を流すことだろう。
本国ではすでに発売されたが、日本ではどうやら来年に持ち越しらしい。価格はドン・ペリニヨンP2(※5)をも上回ると聞く。フルートグラスは厳禁。大振りのボルドーグラスがおすすめ。

<編集部注>
※1 シャンパーニュの巨人:LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループの中核企業で、シャンパーニュではモエ・エ・シャンドンのほかドン・ペリニヨンなどのブランドも有する。
※2 デゴルジュマン:澱抜き。発酵を終えた酵母などの澱を取り除く作業。瓶を逆さにして瓶口に澱をため澱の部分だけを凍らせるなどして取り除く。
※3 瓶内3次発酵:ワインの発酵とは、ブドウの果汁に含まれる糖分を酵母が消化し、アルコールと炭酸ガスに分解すること。シャンパーニュはまず、搾ったブドウの果汁を発酵させて普通のワインを造り(1次発酵)、そのワインに糖分と酵母を加え、瓶に詰めて密栓する。すると瓶の中で再び発酵が始まり(瓶内2次発酵)、逃げ場を失った炭酸ガスがワインに溶け込んで泡立つワイン、すなわちシャンパーニュとなる。ところがこの「MCIII」は2次発酵を終え、デゴルジュマンを待つだけのシャンパーニュを再度瓶詰めして発酵させたので、都合3度の発酵(瓶内3次発酵)が行われたことになる。
※4 コンプレキシテ:英語でコンプレキシティ=複雑性。味の構成が複雑であるほど良いワインだと言われることに基づく一つの表現。
※5 ドン・ペリニヨンP2:ドン・ペリニヨンは熟成段階において3回ピークを迎えるというのだが、通常はその1回目を目指してリリースされる。このP2は2回目のピークのタイミングでリリースされる。およそ50,000円程度の売価となっている。

※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら

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岩瀬大二
ワインナビゲーター/酒旅ライター/MC