標高1,273メートルで味わう、体に染みる極上の一皿

The Best of Dish 2015 2014年11月15日から2015年11月14日までの間で賢人のみなさんと編集部員が食べた料理のなかで最高のひと皿をご紹介します。お馴染みのあの店か?はたまた隠れた名店か?みなさんにとって、2015年はどんな「おいしい」一年でしたか?

2015年12月13日
カテゴリ
レストラン・ショップ
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標高1,273メートルで味わう、体に染みる極上の一皿
Summary
・ある山の頂上で食べることが出来る
・苦しみの先に待っているとっておきの一皿
・シンプルな味が心にしみる

こんにちは。dressing編集部の深作と申します。dressingのビール担当です。

今年とっておきの一皿を・・・というお題で編集部員全員が今年心に残った一皿を紹介をする、ということでしたが、酒飲みの私にとって、一皿を選ぶのは非常に難題でした。
今年飲んだとっておきの一本、ならばまちがいなくこれなのですが。
半ばあきらめつつ、スマホの写真をあさってみると・・・ありました。心に残る一皿が。

その一皿には、苦しみの先に、やっとたどりつくことができる

厳密にいえば、私が選んだのはいわゆる「飲食店」の一皿ではない。
標高1,273メートル、神奈川県の秦野市に位置する鍋割山の頂上で食べることのできる一皿なのだ。
自分の足で、山を登らなければ食べることは出来ない。

恥ずかしながら、私は数年前北アルプスで滑落した経験がある。滑落、と言っても、3メートルほど、尾根の下に滑り落ちただけなのだが、その数秒間はとんでもなく長く、怖く、本当に人生が終わったような気がした。
無事にグループの仲間の手によりに登山道まで引き上げられた時、放心状態の私に差しだされたあんぱんの、甘くてやさしくて、悔しさと安堵の涙でしょっぱくなった味は、きっと死ぬまで忘れないだろう。それからというもの、私は山でご飯を食べるたびに、おいしさと、生きていることの喜びと感謝を噛み締めている。登山グルメを山行の楽しみにすることも少なくない。

そんな私が選んだのは、鍋割山名物「鍋焼きうどん」だ。
このうどんは、鍋割山の頂上にある鍋割山荘で食べることが出来る。
鍋割山荘にたどり着くには、最寄り駅を降りたあといくつかルートがあるのだが、どの道を選んでもそこそこ長いし、高尾山や鎌倉アルプスと同じようにハイキング気分で出かけると痛い目を見ることになる。

ハンガーノックにならない程度にお腹をすかせながら、もう少し、あの頂上にはご馳走が待っているんだと自分を励まして、登山口から登ること数時間。

着いたときには、頂上直下の急登のおかげで疲労はピークに達している。近年の登山ブームで山頂はだいぶにぎわっていた。「今日は今シーズンで一番混んでいるので、一時間くらいかかります」と小屋番の日焼けしたお兄さんに言われつつ、もどかしい気持ちでうどんを待った。

ひとり分ずつ、土鍋に入った鍋焼きうどん。とじた玉子と、なると、ねぎ、きのこ、ほうれん草と油揚げの入ったシンプルなうどん。少し甘く、しいたけからもよい味の出ているうどんのだしが、汗で出た塩分を補い登山の疲れを癒してくれる。疲れと達成感もあわさってか、これが下界で食べるどんなうどんよりもおいしいのである。
(ここでうどんのお供をビールにするかコーラにするかは非常に悩ましい!)

ここまで登ってこれた達成感と、感謝を一緒に噛み締めつつ、アツアツのうどんをたいらげる。そしてまた、おいしいごはんと生きている感覚を噛み締めるために、私は山に出かけたいと思う。

鍋焼きうどん 1,000円

鍋割山荘

住所
神奈川県秦野市 鍋割山山頂
電話番号
0463-87-3298
営業時間
9:00~15:00
定休日
定休日 通年営業
公式サイト
http://nabewari.net/about

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。