東京・五反田には、なぜ鶏料理の隠れた名店が集まっているのか!?

飲食店情報検索サイト「ぐるなび」が、約20年間にわたって蓄積してきた膨大な飲食店のデータを駆使し、dressing編集部が食トレンドを牽引する人気グルメタウンの真相を解き明かしていきます。何気なく通っていたあの街の意外な姿を知れば、お店選びがもっと楽しくなること請け合いです!

2016年01月31日
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東京・五反田には、なぜ鶏料理の隠れた名店が集まっているのか!?
Summary
1.五反田駅周辺にひしめく「居酒屋」は、5軒に1軒がブランド地鶏取り扱い店
2.オフィスエリアが広がったことで、ヘルシーな鶏料理がOLから支持された!?
3.「ここでしか味わえない地鶏」を提供する店が生き残る街・五反田

五反田駅東側は巨大企業が続々と進出を遂げる品川や大崎といったオフィスエリアに近いため、大手の居酒屋チェーンが軒並み揃い、西側は近年独り暮らしエリアとして注目を浴びている不動前や戸越銀座に近いため、立ち飲み屋やせんべろ店などコスパ優良店がひしめく。

それゆえ雑多な繁華街をイメージする人は多いが、「ぐるなび」が蓄積する最新の飲食店データから、五反田駅周辺は意外にもあるジャンル店だけが突出していることがわかった。

五反田駅周辺にひしめく「居酒屋」は、5軒に1軒がブランド地鶏の店!

「ぐるなび」が蓄積してきた飲食店の詳細なデータ(2016年1月時点)によると、東京全体と五反田駅周辺エリアで飲食店ジャンルの占有率を比較すると、「居酒屋」は東京全体の21.8%に対して、五反田駅周辺は35.4%と高い結果に。同じくビジネスマンの街として知られる新橋駅周辺が25.1%であることからも、その密集度がわかるだろう。

居酒屋の定番と言えば「焼鳥」が真っ先に思い浮かぶが、実は五反田には鶏料理の名店が多いことはご存知だろうか? この居酒屋ジャンルのなかでもブランド地鶏を扱う店舗数は22.1%と、5軒に1軒の割合でブランド地鶏が提供されていることがわかり、鶏にこだわった飲食店が多いことを裏付けている。

競争が厳しいエリアにこそ、確かな料理でファンを獲得する名店は息づくもの。五反田駅東口から徒歩3分に位置し、2005年の開店当初からブランド地鶏「青森シャモロック」を扱い、「ミシュランガイド東京2016 ビブグルマン」でも掲載されており、2010年版に焼鳥カテゴリーができて以降継続して選出されている『よし鳥』オーナー兼店長の吉本憲司さんにお話を伺った。五反田に鶏料理の名店が根付いている理由とは?

「開店当初、五反田駅周辺の焼鳥屋の数は少なかったと思うので、ここ数年で増えていった印象です。新たに焼鳥屋がオープンしても、大手チェーン店との競争に勝てず撤退してしまうお店が多かった。たくさんの居酒屋や焼鳥の店が多い五反田駅周辺でお客様から選んでもらうための差別化として、ブランド地鶏を掲げる店が増えていったんだと思います」

また、五反田はもとより会社員が多いエリアだが、大手の企業が次々と移転してきた隣駅・大崎周辺からの流れも増えたことで、東口エリアが活性化したことも一因のようだ。オフィスの増加に伴い、女性のお客さんの割合が増え、コラーゲンたっぷりでヘルシーな鶏肉料理のニーズが高まったという。

希少なブランド地鶏だからこそ、扱い方や味わい方などに徹底的にこだわる

16歳から焼鳥店で修業を積み、20年以上かけて鶏肉の奥深さを学んでいた吉本さんは、「ほかの店では食べられない鶏肉を提供したい」との思いから、全国の養鶏場を訪ね歩き、当時どこの店も扱っていなかったブランド地鶏「青森シャモロック」に辿りつく。黄斑シャモの雄とプリマスロックの雌とを交配して作られた特別種で、市場からは名古屋コーチン、比内地鶏と同等の評価を受けており、宮内庁管轄の御料牧場へひなが出荷されている唯一の地鶏だ。

青森県大鰐(おおわに)町にある養鶏場と年間契約を結び、特別に専用の鶏舎で育ててもらった「青森シャモロック」だけを毎日仕入れる。骨から余すことなく削がれた鶏肉は希少部位を含め、仕入れた当日に提供する、というこだわりだ。

※白いお皿に乗っているのは、向かって左から時計回りに、ハラミ、お尻の付け根(ぼんじり)、白い筋がついているネック(首)、骨盤のお肉と、一羽分からわずかな量しかとれないという希少部位。

「お客様が居酒屋の鶏肉ではなく、うちでしか食べられない鶏肉をあえて選んでくれるのは、自分のこだわりだけでなく、養鶏場の方など店では見えない人たちの力があってこそなんですよね。だからこそ、預かった鶏肉に対して手を抜くわけにはいかない」

長年、そして毎日、鶏肉を扱う仕事を行ってきた中で、できるだけ手に触れる面積や時間を少なくし、鶏肉をより新鮮に保つ技術が生まれたという。また、各肉質によってさまざまな香りや旨みがあるため、それらを最大限に引き出す塩は部位によって6-7種類を選別して使用。

こうして熱意をかけて串打ちをしたからこそ、「とくにねぎまは串から抜くと旨みが逃げてしまうため、串から直接食べて欲しいです」と、「青森シャモロック」を最大限に味わってもらいたいとのこと。もちろん焼鳥以外にも、たたきや鶏皮など、そのキメ細かく濃厚な肉質を存分に堪能できるメニューが揃っていることは言うまでもない。

<メニュー>
・おまかせ五本コース
(シャモロック串四本、うずら玉子串、鶏スープ)/1,800円(税込)
・鶏たたき/950円(税込)
・鶏皮ポンズ/650円(税込)

「ここでしか味わえない地鶏」を提供する店が生き残る五反田

飲食店競争が激しい五反田駅周辺で生き残るためには、素材の差別化や、他店の追従を許さない技と進化、こだわりが必須のようだ。五反田駅周辺では、ほかにもここでしか味わえない鶏料理を提供しているお店が存在感を放っている。

同じく「ミシュランガイド東京2016 ビブグルマン」の掲載店『庭つ鶏』をはじめ、元フレンチシェフが開いた信州のぎたろう軍鶏を扱う『たかはし』、山陰の大山鶏や名古屋コーチンなどブランド地鶏を多彩に揃える『それがし』と…、人気店が軒を連ねている。

また、山梨の赤鶏をはじめとした高品質な鶏肉を扱う鶏肉卸しの名店『信濃屋』が五反田で60年以上続いていることも、五反田に鶏料理が多い一因といえよう。鶏肉にこだわる店が食材確保のために足繁く通うだけでなく、横手にある精肉売り場と正面の惣菜売り場を使い分ける一般客も多いようだ。

よし鳥

住所
〒141-0022 東京都品川区東五反田1-12-9 イルヴィアーレ五反田ビル 2階
電話番号
03-5793-5050
営業時間
17:30~23:00(L.O.22:30)、土17:00~22:30(L.O.22:00)※毎週金曜日と祝前日の日は、「2時間制」
定休日
定休日 日・祝
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