新宿三丁目に潜んでいた肉の超名峰! ハンバーガーか?ステーキか?の誘惑に悩む

【連載】肉の兵法 第七回  肉に向かうときに雑になってはならぬ。どこでどんな肉を食べるのか、組み立てるのが大人のたしなみであり、男の作法。「大人の肉ドリル」著者である松浦達也氏が旨い店の肉をさらに旨く食べるための作法を解説する。

2016年03月14日
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新宿三丁目に潜んでいた肉の超名峰! ハンバーガーか?ステーキか?の誘惑に悩む
Summary
1.NY仕込みのステーキ&ハンバーガー店
2.バンズは東新宿の峰屋謹製
3.溶岩グリル使いの極上の焼き加減

ゲーテは言った。「長いこと考え込んでいる者が、いつも最善のものを選ぶとは限らない」と。だが「考えぬいた者は、必ず最善にたどり着ける」こともあるはずだ。そうでなければ、いくつもの看板メニューがある店で"正解"が選択できなくなってしまうではないか。

「バーガーかステーキか」。新宿三丁目の「BURGERS&STEAK CaSTLe ROCK(キャッスルロック)」でいつも突きつけられる難問である。もちろん2人以上で訪れるならシェアすればいいし、1人でもちょっと胃袋に自信があれば、看板メニューのプライムステーキ200gと、パティ120gのハンバーガーを両方食べるのもいいだろう。

だが、飲食店においてなんのためにメニューを選ぶのか。言わずもがな「その店ならではのうまいものに巡りあう」ためだ。メニュー選びに真剣になるのは、思わず歓声をあげるような奇跡に巡りあうためで、「メニューを右から左まで全制覇する」ことが目的ではない。

では、キャッスルロックの「BURGERS & STEAK」を満喫するために要素を整理したい。まずこの店で特筆すべきポイントは「焼き」である。ハンバーガーを主軸に据えた店としては、驚くほど「焼き」への気配りが徹底されている。どのくらいの徹底ぶりかというと……。

この焼き上がりである。きっちりミディアムに焼きあげられたステーキの断面からくまなく湯気が立ち上る。しかも全面ほれぼれするほどのロゼ色……。USビーフの「プライム」は味も濃厚で香りも強い。これくらいまで火を入れると、味がグンと乗ってくるのだ。ちなみに「プライム」は米国牛の格付けにおける、最高ランク。(日本に輸入されているものは)「チョイス」「セレクト」と3グレードにわかれている。

メニューに記載されたプライムステーキの重量は200gから50g単位で400gまで。だが同じ重さでも「面」が広くなれば薄くなる。個体によってベストの焼きが実現できる重さは変わる。注文時におすすめの重量を確認したいが、世の肉焼き師は例外なく、肉に一定の厚さを求める。精緻な焼きの皿にありつきたければ、やはり300g程度の重量は確保したい。

一方、ハンバーガーはどうか。この店のパティは120g、180g、240gの3種類。「ミディアム」で焼く。精妙な火入れを目指す以上、厚さは犠牲にできない。つまりベストはパティとバンズの径がピタリと合うパティ180g。このサイズである。

つまりステーキとハンバーガー、それぞれベストの焼きを注文しようとすると、合計の肉量だけで480gになる。しかもフライドポテトなど、つけ合わせもある。「それくらい食える」と鼻息を荒くするのもいいが、「量を食う」と「おいしさを堪能する」は往々にして対立する。

確かに麺類や炊きたてごはんのように「量をかっこむうまさ」もあるが、肉には、繊維を噛み締めた先にしかないうま味があるし、他にも食べるべきサイドディッシュもある。一度でメニューを制覇しようとするのではなく、同行者を探してシェアをしたり、回をわけるのが、大人のたしなみというものだ。というわけで、本日は一人でこの店を訪れるときの組み立て例を紹介しておこう。

ステーキの兵法

まず、初訪時にステーキを頼むとなれば、飲み物が必要だ。香ばしい焼きにはハイボールも捨てがたいが、ここはぜひビールを! というのも、この店ではあの「リアルハーフ」(※)がメニューにある。エビスとギネスのいいとこどり。濃厚すぎず、重すぎず、適度な味わいで肉をするすると胃袋に送り込む魔法の液体である。

※以前、サッポロビールが提案していた「エビス」+「ギネス」のハーフ&ハーフ。上手く注ぐと比重の関係で下がエビス、上にギネスという美しい2層が現れる。数年前、ギネスの扱いがキリンビールになってから、飲食店でも見かけることが減った。

ただし、このコンビには一気食いの危険が潜んでいる。ステーキのつけ合わせにはスマイルカットのフライドポテトとブロッコリーが添えられるが、途中で気を落ち着かせるためのさらなる装置が必要なので、肉に超好相性のグリーンサラダも注文したい。「小」もあるが、ベストチョイスはレギュラーサイズ。「肉肉野菜肉野菜だったよね。母さん……」という懐かしのCM(※エバラ焼肉のタレのCM)の符丁はすべての肉に通じるのだ。

そして肝心の肉。その濃厚な旨みをオリジナルソースがスッと引き締め、さらにその奥からまた旨みがやってくる。この組み合わせは、もはや味の夫唱婦随。末永くお幸せに、と口添えするまでもなし!

ハンバーガーの兵法

さて今度はバーガーから入るパターン。こちらのドリンクはビール、ハイボール、レモンサワーなどは言わずもがな。ノンアルコールなら「バーガー×コーラ」という、やりすぎアメリカンテイストな相方もいいし、ノンアルコールなら、コーヒーや紅茶、スパークリングウォーターとの相性もいい。

実はこの店のバンズは、酒種酵母を使用した東新宿・峰屋のリッチなタイプのものを使用している。はさむパティは、塊肉を毎日店で挽き、味は塩、胡椒と少しのスパイスで調えたもの。余計なものは何も入れない。だからこそ、この店のハンバーガーにはクリアなドリンクが合う。肉の味がしっかりしているから、濃厚なチーズベーコンバーガーや、ブルーチーズバーガー、チリチーズバーガーのように味わいが濃厚なトッピングにもパティが負けない。もちろんシンプルなハンバーガーならば、なおさら肉の味がしっかりわかる。

ちなみに食事をする際、バーガーだけで物足りなければ、1ピースから注文できる「ベイビーバックリブ」を追加したい。

        ↑バックリブのつけ合わせはコールスロー↑

ちなみにバックリブとは、背中側の骨付き肉。脂が少なく柔らかい部位だ。この店では大型のスモーカーで燻煙を当てたあと、低温のオーブンで合計数時間加熱する。やわらかく骨離れのいい豚のリブに、ソースのほのかな酸味と甘みがピタリと合う。しかもバーガーとはまったく味わいの違うソースで、こちらもハンバーガーのアクセントになる。

敢えて言おう。「考えぬいた者は、必ず最善にたどり着ける」。戦術ありきの戦略は、愚将の兵法だ。まずは対峙すべき店やメニューと向き合い、内なる声に耳を傾ける。自らの求めに応じて戦略を練り、戦術を組み立てる。ベタではあるが、やっぱり「備えあれば、憂いなし」なのだ。

本日の余談~極上の焼きを生む溶岩グリル

さてここからは少々マニアックな話になるので、あくまで余談としてお読みいただきたい。この店ではオーダー時に特に指定をしなければ、ステーキもバーガーも店がベストだと考える「ミディアム」に焼き上げる。もっとも、一口にミディアムと言っても、ステーキとバーガーのパティの焼き上がりは微妙に違う。ステーキは断面全体がローズ・ピンクになるドンピシャのミディアム。いっぽう、もう一段深い焼きが求められるバーガーのパティはミディアム・ウェルダンとも言うべき、繊細な色に仕上げてくる。

店主の精緻な焼き上げを支えるのが、飲食店でもめったに見かけることのない溶岩グリル。こちらである。

グリル面の高さが無断階で調整可能なタイプで、キャッスルロックではもっとも高い位置にグリル面がセットされている。最下部にガスの熱源があり、その上に鶏のから揚げ大の溶岩が配されている。

ガスで熱せられた溶岩が輻射熱(遠赤外線)を発し、その熱がグリル面の斜めに入ったスリットの間を抜けて肉を温める。同時にわずかに肉に接する鉄のスリットが香ばしい焼き目をつける。通常、ガスの熱源では難しい、表面の焼き目と、肉全体の温めの両立が可能になる。

さらにちなみに、この店、新宿三丁目と二丁目の境にあることもあってか、客層は女性の一人客や外国人客までも、超バラエティに富んでいる。先日などは食べ終えた僕が階段を降りると外国人の若者4人組が英語で「ここだよ! ここここ!」(意訳)と勢い込んで、うれしそうに階段を駆け上がっていった。彼らが何を注文したのか気になって仕方がない(まさに余談)。


<メニュー>
店主の穂積貞尋さんは、2002年から2006年までNYに滞在。フュージョン料理店数店での修業を経て、2008年南行徳でキャッスルロックを開業。2014年に新宿三丁目に移転し、現在に至る。プライムステーキ200g(2,080円)~400g(3,880円)はライスやパン、チリビーンズスープとのセットも。ベースとなるハンバーガーは普通サイズ120g(1,000円)、180g(1,250円)、240g(1,500円)、その他、ブルーチーズバーガー(1,200円、1,450円、1,700円)、ベーコンチーズバーガー、チリチーズバーガー(1,350円、1,600円、1,850円)など。リアルハーフは3/4パイント(680円)、1パイント(900円)。

※松浦達也さんのスペシャルな記事『高田馬場のとっておき酒場は、あのサイトにも載っていない「もつ煮込み」の聖域だった』はこちら

Burgers & Steak CaSTLe ROCK(キャッスルロック)

住所
〒160-0022 東京都新宿区新宿3-8-9 新宿Qビル2F
電話番号
03-3356-6615
営業時間
11:30~L.O.22:00、日・祝 L.O.21:00
定休日
定休日 月曜(祝日の場合は営業、翌日休)
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/1t5c0d8y0000/
公式サイト
http://www.castlerock-burger.com/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。