【日本でしか飲めない!】キャンティ・クラシコ地区で生まれた特殊で特別なワイン

【連載】東京・最先端のワインのはなし verre26  ヴァンナチュール。自然派ワインとも訳されるこのワインは、これまでのスノッブな価値観にとらわれない、体が美味しいと喜ぶワイン。そんなワインを最先端の11人が紹介する。

2016年06月01日
カテゴリ
レストラン・ショップ
  • レストラン
  • ワイン
  • オーガニック
  • 東京
  • 連載
【日本でしか飲めない!】キャンティ・クラシコ地区で生まれた特殊で特別なワイン
Summary
1.2011年だけ造られた“干しぶどう”から生まれたワイン
2.自然のまま人間が余計な手を加えないからできた奇跡
3.フィレンツェからキャンティ街道を約1時間で表れるワイナリー

一般的にイタリアでもっとも有名なワインと言うと「キャンティ」を思い浮かべる人は少なくないだろう。では、キャンティってどんなワインだろうか? サンジョヴェーゼを主体とした気軽な赤ワインだろうか? 昔のキャンティを知る人なら藁で包まれた丸いボトルを思い浮かべるかもしれない。しかし、ひと括りにキャンティと言ってもその範囲は広大だ。24万haというからトスカーナ州の約一割を占める広大な土地ゆえ、ブドウが栽培される場所によってその特徴が大きく異なることは容易に想像ができる。

今回、表参道『フェリチタ』の永島農さんが紹介してくださったのは、キャンティの中でも古来からの産地・キャンティ クラッシコ地区の南端、カステルヌオーヴォ・ベラルデンガの標高360mに位置するワイナリー、レ・ボンチエだ。
この年間12,000本の小規模なワイナリーを運営するのがジョヴァンナ・モルガンティ女史。約3haの畑を自然農法により栽培。マメ科の植物などを緑肥として撒き、それが自然に堆肥化したものを使う。1haあたり7,400本という高密植で栽培されたブドウはすべて手作業による収穫。開放式木製の発酵槽で野生酵母によるアルコール発酵を行なわせ、大小様々な樽で約15カ月熟成後、若干量の二酸化硫黄を添加しノンフィルターでボトリングする。

Tondale 2011 / Le Boncie(トンダーレ /レ・ボンチエ)

そんなジョヴァンナさんが造るレ・ボンチエだが、2011年に大きな事件に巻き込まれた。相手は自然。セパージュはサンジョヴェーゼ90%で残り10%がコロリーノ、フォーリア トンダ、マンモロとなっているが普段とは大きく異なるワインである。

<永島さん>
実は、このトンダーレという2011年だけに造られたワインを選んだ理由は2つあります。
一つは日本にしかないということ。
そしてもう一つは、ジョヴァンナ自身が造りたかったワインではないということです。

たまたま、私もこのワイナリーに出向いた2011年は酷暑でした。8月上旬に伺ったのですが、ブドウの完熟を待つと干しぶどうになってしまうほど、例年になく速いスピードでブドウが成長してしまいました。そんなブドウを使って造ったのがこの、トンダーレなんです。

発酵も予想だにしない出来事ばかりでした。発酵スピードが遅く、糖分はなくならない。そして干しぶどうからの糖分がどんどんワインの中に溶け込むので、いわゆる潜在アルコール度数が17度にまで上がってしまうようなワインでした。発酵が終わらないのでキリがないからブドウを絞ったわけですが、それはジョヴァンナにとっては初めての経験。

その後、樽に入れても発酵が続いてしまい、炭酸ガスも発生。一般的に知られるレ・ボンチエらしさが生まれず、ジョヴァンナ自身も呆れてしまいました。これをどうやったら売れるだろうと考えていたところに、このワインの輸入元でもあるヴィナイオータの太田久人社長が声をかけて「自然を相手に作っているのに、予定調和のワインを作りたいのか?」と問いかけたんです。自然に対して人間は何も出来ないということです。

そして、たしかにそれまでのレ・ボンチエらしさは感じないかもしれないけど、飲むと美味しいんです。今飲むと糖分が残っていて甘く感じます。だけどそれは、完全に発酵していないのではなく、酵母が完全に発酵の仕事を終えた上でなお残った糖。人間でいうと摂り過ぎた脂肪ではなく、生きていくために残っている肉のようなものだと思うんです。結構インパクトの強い味で「赤い」サンジョヴェーゼというより、「黒」っぽさを感じる濃度です。タイプは異なりますがバルバカルロの2003年ヴィンテージを思い出しました。

そんなワインだからこんなエチケットになったんです。
トンダーレというのは、トンド=円、オバーレ=楕円→tondo(丸いの意)とovale(オーヴァル)。円でも楕円でもない樽に入れてあったワイン。
最初はこの暴走に涙したけど、最後は美味しくて笑顔になったということを表しています。

彼女のワイナリーがあるのはキャンティ街道の奥のほうで、フィレンツェから1時間とちょっとの街。肥沃な粘土質で、濃度の高いブドウが生まれるところです。風光明媚で、イタリアの肉料理についてこの人の右に出るものはいないと言われるダリオ・チェッキーニさんの店も途中にあるので、ツーリストにおすすめです。
イタリアを訪れる予定がある方はぜひ訪れていただきたい場所です。

ボトル10,000円

Felicita(フェリチタ)

住所
〒107-0062 東京都港区南青山3-18-4
電話番号
03-3408-0141
営業時間
[ 2・3F レストラン]火~金18: 00 ~ L.O.22:00、土・日17:30~L.O.21:00、 [ 1F BAR ]火~金18:00~L.O.23:00
定休日
定休日 月・祝日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/a786201/
公式サイト
http://www.felicita.co.jp/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。