コンビニやファストフードでエラそうにクレームを入れている客は何様なのか?

【連載】正しい店とのつきあい方。 店や街とのつきあい方がわからない人が増えている。初めてなのに常連と同じように扱われないと怒る人や金さえ払えば何でもしてくれると思う人。お客様は神様、などではない。客としてのあり方を街と店に深い考察を持つ江弘毅氏が語る。

2016年07月06日
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コンビニやファストフードでエラそうにクレームを入れている客は何様なのか?
Summary
1.サービスを与える側と受ける側の関係性
2.「どういう客を優先するか」で店は変わる
3.神戸・長田のうまい焼肉屋での話

「お客様は神様です」という言葉の功罪

南仏のニースに客の態度で値段を決めるカフェがあって、「コーヒ−」とだけ言って注文する客と、「こんにちは。コーヒーをください」と言う客とは、5倍もの値段の違いがある。
そんな記事を読んだ。

フランスではサービスを与える側と受ける側は常に対等だ、とはよく耳にするが、本邦ではやはり客がえらい立場にあるようだ。
かといってサービスマンも人間、カネを払いさえすれば何でも通るとわがまま放題の客やエラそうにしている客に対しては、対応を悪くすることもあるとは、これまたよく聞くことだ。

街場の飲食店はピンからキリまであって、客が勝手に冷蔵庫からビールを出して飲む立ち呑み居酒屋からメートル・ド・テルやソムリエが何人もいる(いわゆる)グラン・メゾンまである。
それぞれの店の常連を見ていると、どうも後者の側に×な客が多く見かけるが、これは当然のことなのだろうか。

またコンビニやファストフード店で、レジでなにやらクレームを入れている客を見ることがあって、こちらの方がいやな気分になったりする。

店は何を優先しているのか?

飲食店のサービスはもちろん良いに越したことはないけれど、無愛想でコワい接客だがものすごいうまいものを食べさせる店も多い。

店側はもちろん客にうまいものを出そうとするのは当然だが、どういう客を優先するかは店舗形態やその店の考え方によって違う。

スターバックスや吉野家は常連客を優先することはない(もっとも客側にも常連という見地はない)し、同じ鮨屋にしても地元客を優先するのか政財界のお偉いさんや有名人を優先するのかで店はがらりと変わる。

客をどやしつけることが趣味みたいなとあるラーメン店もあるが、客はその店が何を優先しているのか(カネ以外に)を感じ取ることによって、良い客にも悪い客にもなってしまう。
飲食店でサービスする人をかしづかせたりひざまずかせたりするのがあたり前だと思っている人は、街場のめし屋や串カツ屋に行ったって面白くないだろう。

ある焼肉店での光景

先日、神戸のうまい焼肉とお好み焼き店密集エリアである長田に行くことがあり、せっかくだから地元の友人に「どこがうまい」と聞いて、その焼肉・ホルモン店に行ってきた。
そういえば10年ぐらい前に一度行ったことがある店で、「ああ、『味一』か」とうまい記憶が蘇った。

わたしは大阪出身で今も大阪で仕事をしているから、焼肉・ホルモンの本場の鶴橋の焼肉店に行きつけが2〜3軒ある。
大阪では「鶴橋に行く」ことと「焼肉を食べに行く」ことが同義語であるように、大阪市内の人なら鶴橋へ焼肉を食べに行ったことがない人はいないだろう。

神戸・長田は大阪の鶴橋と同様に在日コリアンが多く住むエリアで、焼肉・ホルモンのレベルが高い。
また神戸ビーフのお膝元であり、いい肉のアドバンテージは高い。

店に着くとわたしたち二人以外の客は全員地元客で、年老いた店主のおばさんと大声で世間話をしている。

席に着くと、おばさんがカンテキ(=七輪)を持ってきてくれる。
おお、すごい大きくて良い炭、焼き網はサラ(=新品)だ。これはきっとうまいやろなあ、とツレと頷き合う。

「とりあえず瓶ビール」。
そう言うと、おばさんは店の一角の冷蔵庫に瓶ビールとグラスを取りに行く。

「キムチもください」と追いかけて言うと完全に無視された。
「営業時間16:00〜20:00 *極力、お飲み物以外の追加注文はご遠慮願います *お席は1時間半以内でお願いします」と書かれてある貼り紙を「これやもんな」と指さしながらツレと顔を見合わせて、これはかなわんな失敗か、と思ったが、近くの客が「キムチ言うてるで」と言ってくれた。

おばさんは耳が遠かったのである。

一気に氷解。
おばさんがわたしのテーブルに来る。オーダーを「ハラミとバラ、テッチャン、赤セン、ミノ」と大きな声で言う。
おばさんに「辛口と中辛。どっち?」と訊かれる。
デカい声で「中辛で」。

あらかじめ揉みダレで強く味付けされる旧式の焼肉・ホルモンは、鶴橋のように焼いた肉をつけダレにどぼんとつけるスタイルではなく、つけダレなしでもうまい。

うまさのほどは写真で皆さんに十分伝わるだろうが、特筆すべきはテッチャンの「掃除」の丁寧さとミノに細かく入れた包丁。

赤セン(=赤センマイ。牛の第4胃)は焼くとぶっくり餅のようにふくらむタイプで「おお、これこれ」と久しぶりに唸った。

営業時間は午後4時から8時まで。
「4時間だけの営業でケッコーな店やな」と思うか、「なるほど下ごしらえが大変やもんな」と思うか。
まあそんなものはどちらでもいいか。

※江弘毅さんのスペシャルな記事『店づきあいの倫理学』はこちら

味一

住所
〒653-0043 兵庫県神戸市長田区駒ケ林町5-9-7
電話番号
078-642-3726
営業時間
16:00〜20:00
定休日
不定休
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/56e0jxkm0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。