昭和の薫りただよう隠れ家的ラビリンス「自由が丘デパート」に行列のできる焼きそば店

幸食のすゝめ #030  食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2016年11月21日
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昭和の薫りただよう隠れ家的ラビリンス「自由が丘デパート」に行列のできる焼きそば店
Summary
1.1カ月以上寝かせた特製ソースと、朝打ち立ての自家製麺から生まれる至極の焼きそば
2.ルーツは九州・熊本の国道3号線沿いにあった名店『さぶ』
3.昭和28年開業のDEEP自由が丘を象徴する穴場なビル「自由が丘デパート」3F

幸食のすゝめ#030、朝打ちの麺には幸いが住む、自由が丘。

「あら、券売機が入ったんだ、便利になるわね」。昭和の匂いそのままの自由が丘デパート3階、同じフロアに店があるスナックのママが、笑顔で鉄板前の孫(ソン)さんに挨拶していく。しばらくすると、1階の靴屋さんが昼ごはんの注文にやって来る。
「いつもの奴ね、今日はエビとイカもトッピングしようかしら」。
「塩ですね、いつもありがとうございます!」、爽やかな笑顔で孫さんが応える。
こちらのお店、旧名は『真打みかさ』、現在は『鉄板家 シュウ』として暖簾を掲げている。

神田神保町では2時間待ちの行列を作る焼そば

オープンエアでワインと楽しむ無添加のオシャレ派、こだわりの有機野菜とバジルソースを組み合わせた進化形、日本蕎麦の麺を使いアボカドと醤油ベースのタレで仕上げる和テイスト。次々に、概念を覆すメニューが生まれ、焼そばの世界は今大きな変革を遂げようとしている。しかし、その先頭を走り続けるのは、1カ月以上寝かせた豊潤な特製ソースと、朝打ち立ての自家製麺にこだわる新しき古典派だ。
旧名『真打みかさ』は、神田神保町で2時間待ちの行列を作る焼そばの姉妹店が高田馬場に続いて、自由が丘にも開店。新しく『鉄板家 シュウ』となり、茹で立てモチモチの麺を頬張る幸せに遭遇できる。

開店少し前、孫さんが日替わりスープの若布を炒めている。店の自由が丘寄りに設けられた製麺室では、1日寝かせて熟成した今日使う分の麺を、男性が打っている最中だ。
自家製ソースと自家製麺、その焼そばのルーツは九州・熊本の国道3号線沿いにあった『さぶ』。
『さぶ』も神保町の『真打みかさ』(旧名)も、現高田馬場店主が創業して、その後弟子に譲ったものだ。
その後、新たな天地を求め、自由が丘デパートの3階に新店をオープン。高田馬場店で製麺から学び、焼き方だった孫さんが鉄板の前に立つ。

最大の特徴である生麺は、100%北海道産の小麦を使い、店内の製麺室でその日使う分を製麺。打ちたて、茹でたての麺をそのまま鉄板の上にあけ、素早く炒めていく。加えるソースは、野菜、果物、数種のスパイスなどを1日かけて煮込み、さらに1カ月以上寝かせて熟成させたものだ。
定番のソース味のほか、隠し味でビネガーを加えた塩味も人気が高い。さっぱりした塩は、麺の味を邪魔しないため、より一層小麦のうまみが際立つ。トッピングもイカとエビ、塩タレ・チキンが選べ、さらにソーセージとスライスチーズも選べるようになった。

鉄板の上で繰り広げられる、茹でたての麺のダンス

ソーセージとチキン、そして、キムチは単品でも頼めるので、一番搾りの生や、ハイボール、缶酎ハイなどを頼み、鉄板の上で仕上がって行く焼そばを見ながら飲むこともできる。1人前ずつ袋詰めされた生麺は、かなりの太麺に見えるが、男性のきびきびした動作で1分あまりで茹で上がり、そのまま鉄板の上へ。あらかじめ豚バラ肉を香ばしく炒めていた横で、茹で上がったばかりの麺と、ネギ、キャベツ、もやしを孫さんが絶妙な小手捌きで炒めていく。
一糸乱れぬ2人のチームワークで、最後にふんわりと焼かれた玉子を載せれば、焼そばの完成だ。
テーブルには、イカ天の天かすと紅生姜、辛しマヨネーズも用意されている。

身近な友から麺界のスターへ、焼そばの魅力にはまるひと皿

うどんや蕎麦、ラーメン、パスタなど、すべての麺類の焦点は、ずばり麺そのものだ。多くのうどん屋やラーメン店が製麺室を設けたり、自家発注に向かう中、焼そばにはどこかチープでジャンクな印象があった。それは、お祭りの屋台や学祭の模擬店など、余りにもポピュラー過ぎるイメージがあったからだろう。
愛するが故の怠慢、その軌跡は、身近過ぎる焼そばに与えられた汚名を一掃し、麺界のスターダムに押し上げた小さな革命なのかもしれない。屋台の活気と楽しさそのままに、鯉口シャツで鉄板に向かう2人。でも、銀の皿に盛られた焼そばは、決して出逢ったことがない未知の感動に満ちているはずだ。朝打ちの麺には、幸いが住んでいる。

<メニュー>
焼そば(ソース味/塩味)並750円、小500円、トッピング(イカとエビ/塩タレチキン/ソーセージ)各100円、チーズ50円、
一番搾り(生)500円、スーパードライ(瓶)500円、角ハイボール450円、缶酎ハイ300円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

手打ち麺やきそば専門 真打みかさ 自由が丘店(現在の店名は『鉄板家 シュウ』)

住所
〒152-0035 東京都目黒区自由が丘1-28-8 自由が丘デパート3F
電話番号
03-5726-9216
営業時間
11:00~15:00、17:00〜売切御麺、土・日11:00〜売切御麺
定休日
定休日 水曜

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。