四谷『animism bar 鎮守の森』は日本酒の聖地! ストックされているのは約2,000本の銘酒

2016年11月29日
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四谷『animism bar 鎮守の森』は日本酒の聖地! ストックされているのは約2,000本の銘酒
Summary
1.これぞ日本酒の聖地! ストックされているのは約2,000本の銘酒
2.20人は朝飯前! ほんの少しの表情や仕草から好みを見抜く洞察力に感服
3.日本酒好きにはもはや説明不要のプラチナシート! いますぐ予約方法だ

これぞ日本酒の聖地『animism bar 鎮守の森』

『鎮守の森』、それは四谷に存在する秘密の店。そこで催される宴は日本酒のマリアージュ。ストックされているおよそ2,000本の中から料理、季節、天候、湿度、温度、そしてゲストの気分や体調を察知し最高の酒が店主、竹口敏樹氏によって選ばれる。

見るもの聞くものすべてに納得! さすがは日本酒の聖地

予約時間にインターホンを押して予約名を告げると扉が開かれる。店に入ると正面に2℃、0℃、—1℃、—2℃、—3℃、—4℃と6種の温度に設定した冷蔵庫が目に入る。それぞれの中には思わず叫び出してしまいそうな日本酒がズラリ。

「向かいに倉庫があり、そこには1,500本ほどありますよ」との言葉に「見せてもらえますか!」とお願いしてみたところ今回特別に連れていっていただけた。関係者のみ入ることのできる倉庫の中は…すごい! すごすぎる! こちらも設定温度を変えた冷蔵庫がいくつもあり、やはりその中には日本酒好きなら飛びつくものや、この店にしかない銘柄、32年前の古酒なども眠っている。

日本酒にもすぐ飲んだ方が良いものと時間が経ってもおいしいものがあり、米の凝縮感がある「龍勢」、「宝壽」、「中島屋」などは長期熟成に向くそうだ。ワインと違って米の状態が悪くても杜氏が常に同じレベルまでもっていくので、年度で味に大きな差はない。ものによっては抜栓した方が良いものもあり、それらを含め飲み頃はすべて竹口さんの舌の経験値で判断するという。これらをお披露目する古酒の会や、ひとつの銘柄を造り方違い、米違いで飲み比べる会などイベントも定期的に行っているという。

また店内には日本酒のおいしさを最大限感じてもらえるように湿度計が置いてあり、竹口さんが常にチェックしている。カウンターに並べられた水は取り扱っている蔵元の県のもので80-90種類を取り揃えている。

なぜこんなに? と訊ねると「どんな水を合わせるかによって酒の味が変わってきます。水の仕入れで気にするのは仕入れている酒と同じ県のものかどうかとph値です。硬度も大切なのですがアルカリ性か酸性かを見極めるph値が非常に関係してきます」とのこと。なるほど、酒を飲む際には水にもこだわってみると面白いかもしれない。

実食! 日本酒の素晴らしさを知った!

さて、料理とのマリアージュである。まずは「イカとキノコの煮物」と長野県「松尾 2015BY 純米生貯蔵原酒 美山錦100%」でスタート。“白いごはんが欲しくなる”煮物に芳醇で白いごはんに近い味わいを持つ「松尾」を合わせた。イメージは湧きやすいが白いごはんとは。煮物を口にすると確かに少し濃いめの味付け。そして「松尾」をひと口。なるほど非常に飲みやすい。香りがパァ〜っと広がり煮物の味を包み込む。まろやかさがあり飲んでいて疲れない。煮物を食べると次に白いごはんに手が出るような感じで飲める酒である。

ぷっくりした秋刀魚の山椒煮は秋田の「出羽鶴 2016 純米大吟醸 メープル 〜美しく燃える森〜 山田錦100%」と共に。こちらは大きなブルゴーニュグラスに注ぎ香りを閉じ込め十分に味を膨らませる。山椒の辛みに含まれるほのかなメンソールの爽快感、その余韻を残しすぎないように、複雑な酸味があり、キレがシャープなこの酒がちょうどよく断ち切ってくれるのだ。するとどうだろう、秋刀魚、醤油、砂糖、山椒の味が際立ってくるではないか。

なんと秋刀魚のはらわたまで優しい味に変えてくれる。抜栓した時に若干感じるスモーキーな香りが秋らしさを彷彿とさせ、紅葉が眼に浮かぶようだ。造り手、秋田清酒のダンディーな社長のようにお洒落なラベルも印象的。

次は本当に日本酒が味を変えるのか特別に試させてもらう。コースの定番のおでんだが辛子をつけるかどうかで合わせるものが違うというのだ。おでんのだしに合わせるなら広島「龍勢 2015BY冷やおろし 純米吟醸原酒 八反35号100%」、辛子をつけるなら兵庫「富久錦 錦秋の播磨路 2016 純米吟醸 兵庫夢錦」を合わせる。

まずは左の龍勢から。だしの味を決して邪魔することなく調和してくる。「相乗効果を狙っているんですよ。和風の味をふくよかにするでしょう?」と竹口さん。だしに合わせているので卵、練りもの、タネはなんでも良いそうだ。

続いて辛子をつけて大根を食べてみる。そして「富久錦」をひと口。おいしい、こちらも相乗効果がある。すると「辛子の風味を広げながらも最後に辛みを消し去ってくれるでしょう?」と竹口さん。消し去るとはどういうことなのだろうか? あと味をスッと切るのを酒が手助けするという。それならば辛子と龍勢を合わせてみればわかるかもしれない。あ、これは! 辛子の風味がいつまでも口の中に残る! なるほど、これが消し去るということか。寿司や刺身でワサビが強くてツーンときてしまった時にも「富久錦」を飲めばたちまち消えて無くなるそうだ。これは使える情報だ。

いよいよこの店のスペシャリテ・牡蠣が登場。「牡蠣の食べ比べ(2,000円)」は北海道産「昆布森」と「厚岸マルえもん」の2種。「昆布森」は海のミルクと言われる牡蠣特有のクリーミーさが特徴。こちらに合わせるのは広島「龍勢 涼風生生 27BY 特別純米生酒」。『鎮守の森』の管理で味を変えた特別仕様だ。

つまり店に届いてから温度や光の調整をして味見をしながら「育てた」ものである。そもそもクリーミーなものにアミノ酸豊富な日本酒が合わないわけがない。だからあえて酸が際立つように育てた。牡蠣にレモンや酢をかけるのと同じで、良い意味で裏切っておいしさを引き上げている。
一方「マルえもん」は鳥取「山陰東郷 26BY 生酛純米 玉栄100%(精米60%)」。今の時季特有で磯の香りが強いことを踏まえビターでコクのあるものを合わせる。すると塩気がふわ〜っと散っていくのである。“酒が牡蠣を活かすか、牡蠣が酒を活かすか”、好みはどちら?

せっかくなので料理とのマリアージュではなく、いま竹口さんがオススメする辛口好き、米のうまみ好き、フルーティーでやや甘め好き、そしてどれにも属さないバランスの良いもの好きの4つのタイプを出してもらった。

左から長野「和田龍登水 冷やおろし純米酒 ひとごこち100%」。優しくやわらかな味わいでどんな料理にも寄り添ってくれる。非常に小さい蔵元なのでほとんどお目にかかることがない。飲めるチャンスがあればぜひ!

長野「19 poco a poco」は優しくフルーティーな香りがあり、上品な膨らみのある甘さをともなう。お酒単体で飲むのも良し、鍋をつつきながら飲むのも良し、すべてを受け入れてくれるような酒だ。

福井「白岳仙 26BY 純米吟醸 濃醇辛口」。シャープだが最後にまるみのあるやわらかなうまみと喉越しの良さを感じる。こちらは辛口好きのための1本。お燗にするのが苦手な「而今」好きにぜひ飲んでもらいたい。

島根「天穏 25BY 生酛仕込み 無濾過純米酒 佐香錦76%五百万石24%」は米のうまみが濃縮されていて常温から熱燗、そして燗冷ましに向いている。これから寒くなるので少し味の濃い“おふくろの味”の料理や揚げものに合う。

仕入れは料理を見ながら、季節、会員の好みを考慮し竹口さんが行っている。料理と日本酒をマリアージュしたおまかせコース1本だが、竹口さんと話してカスタマイズしてもらうのも楽しみのひとつであろう。

日本酒の伝道師、竹口敏樹氏の実像に迫る!

「人間の味覚は3つに分類できます。味覚過敏という苦味成分を多く感じる人、通常の味覚の人、味盲と言われる苦みや渋みを感じない人です。だから飲んだ時の表情とあごの角度はかなり注意して見ています。話をすることも大事。その人になりきって想像すればどの分類なのかがわかります。それがわかれば注ぎ方をゆっくりして飲み口をまろやかにしたり、グラスを変えたりすることでおいしく飲んでいただけます」(竹口さん)

ここで竹口さんのプロフィールをご紹介しよう。日本酒に目覚めたのは20歳のころ。当時、夜遅く終わる仕事に就いていて周りでやっている店は“赤提灯”のみ。勇気を振り絞って入った店で衝撃を受けることとなる。

鹿児島出身であった竹口さんは酒と言えば焼酎で地元の店に置いてあるのは焼酎のみ。そのイメージで店のおまかせを頼んだら出てきたのは日本酒。お酒ってこんな味だっけ?と悩んでいたら店の人が声をかけてくれた。そこで初めてこれが日本酒というものだと知る。店にあった18種類すべてを飲み比べ、日本酒の味わいの奥深さ、原料が米だけということにも感動しもっと知りたくなった。

本などで勉強するとますます面白くなり、実際に購入しようとするが種類が少なく、挙句には悪酔いすると聞かされる。それならば自分で居酒屋を始めて日本酒の良さを紹介しようと奮起、『酒徒庵』をオープンする。大人気店となるが突如閉店。少し休業し、『鎮守の森』で再スタートした。

ちょっと豆知識! 日本酒をスマートに嗜む、悪酔いしないコツ

日本酒は二日酔いになるという噂があるがそれは大きな間違い。合う水を飲みながら上質な日本酒を自分のペースで飲めば二日酔いになることはまずないそうだ。二日酔いになる一番多いケースは最後にビールやウイスキーを飲んでしまうこと。またお酒が苦手だけれど接待などで飲まなければいけない場合、最初にお燗を飲めば、苦み、辛み、渋みをほぼ感じなくなるそう。つまり甘みだけを感じるのでお酒が強くなったと勘違いするくらいだとか。タマネギが苦手な人が食べる前に燗酒を飲んだら辛みを感じず完食できたというエピソードも。

しかしながら、どんなものでも飲み過ぎれば二日酔いになる。おいしく飲むためには節度を守ることが大事なのである。竹口さんからこんな話を聞けてしまうのもこの店ならでは。こうなったら何としてもこちらに伺いたい!と思ったことだろう。

卯水酉

住所
東京都新宿区四谷3-11 第二光明堂ビルB1
電話番号
050-5487-2299
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
土・日・祝
15:00~23:00
(L.O.21:30、ドリンクL.O.22:00)
食材の仕入れ状況により、閉店時間を早める場合もございます。

月~金
ディナー 17:00~23:00
(L.O.21:45、ドリンクL.O.22:00)
食材の仕入れ状況により、閉店時間を早める場合もございます。
定休日

年末年始定休日あり(2023/12/30〜2024/1/4)
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/pgmrr3680000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。