産地で選んでいませんか? 老舗『バッハコーヒー』に聞く、本当においしいコーヒー豆の選び方【保存版】

2016年12月25日
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産地で選んでいませんか? 老舗『バッハコーヒー』に聞く、本当においしいコーヒー豆の選び方【保存版】
Summary
1.老舗『バッハ』がコーヒー豆選びのコツを伝授
2.浅煎りから深煎りまで豆チャートで好みの焙煎度合いを知ろう
3.オーナー田口護さんがすすめるコーヒーの奥深き世界

サードウェーブコーヒーのブームも相まって、昨今ますます「おいしさ」が求められるようになってきたコーヒー。街角でこだわりのコーヒー専門店を見かけることが多くなり、オフィスや自宅で本格的な味わいを楽しめる機会が増えている。そもそもサードウェーブコーヒー自体、日本の1杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れるスタイルが注目されてブームに火がついたとされている。

そんな今こそ、あらためて知りたいのが、本当においしいコーヒーの基本知識。その世界は奥が深く、豆の挽き方や淹れ方、カップの種類など、さまざまな構成要素がある。なかでも今回は、基本中の基本「コーヒー豆の選び方」について、創業48年を迎える名店『自家焙煎珈琲屋 バッハ』に教えていただいた。

『バッハ』は1972年から自家焙煎をスタート。店主の田口護さんは、コーヒー消費国である欧米各国を視察しながら国内のコーヒー黎明期を切り開いてきた人物だ。これまでに中南米など40カ国以上の生産国を訪ねて回り、数カ国のコーヒー農園を指導するなど、コーヒー豆選びのプロフェッショナルでもある。

そんな田口さんが提唱する、「本当においしい」コーヒー豆選びの必須条件は下記の通り。
① “かかりつけ”のコーヒー店(豆販売店)を持つこと
② 豆が焙煎したてである
③ 欠点豆がきちんとハンドピックされている
④ 自分好みの焙煎度合いを知っていること

では、一つ一つ詳細を見ていこう。

“かかりつけ”のコーヒー店(豆販売店)を持とう

まず大切なのが、「かかりつけ医」ならぬ自分だけの「かかりつけコーヒー店」を持つこと。“かかりつけ”とは、コーヒー豆を購入する際、自分の好みに合った豆を、店員がきちんと説明してくれるかどうかということだ。とくに、コーヒーがおいしいだけでなく、①サービスが行き届いていて、焙煎や細かい部分について尋ねても、店員がしっかりとコミュニケーションを取ってくれること。そして、②豆の形状や色合いなどが、透明の容器に入っているなどして目に見える状態で販売していること。この2点が備わっていると、おいしいコーヒー豆かどうかの判断基準がわかりやすくなる。その基準については後述するが、「粒のサイズがきちんと揃っている」「焙煎度合い(色合い)が自分の好みかどうか」などが挙げられる。

とはいえ一般的には、コーヒー豆は直射日光を避けるためパッケージングされていることが多い。そのため、店員が各商品の中身についてきちんと説明できる体制になっているコーヒー店や販売店を見つけたい。こうした「かかりつけコーヒー店」を、自宅かオフィスのそばに持つことができれば、店の人と交流しながら、「本当においしい」コーヒー豆を探せるはずだ。

焙煎したての新鮮な豆を選ぼう

実は、コーヒー豆には「消費期限」が設定されていない。おいしく飲める保証目安である「賞味期限」は、メーカーや販売元によって約3カ月~1年と、かなり開きがあるのが現状だ。けれども、コーヒー豆は生鮮食品と同じ。香りや風味は時間と共に刻一刻と劣化していくため、なるべく焙煎したての新鮮な豆を選ぶのがコツ。

『バッハ』では、豆の状態で常温保存した場合、焙煎から約10日を目安に飲み切ることを勧めている。例えば、大人2人が朝晩一杯ずつコーヒーを飲むのであれば、1週間の消費目安は約200g。一度に購入するなら同量程度がベストだ。また、保存の際には、直射日光の当たらない涼しい場所に。それが難しければ、湿気を吸わないようフリージングパックに入れて、冷凍庫で保存すると劣化を遅らせることができる。冷凍の場合にも、毎回一週間分量くらいずつ取り出して常温に戻すとおいしく飲める。なお、粉の場合、挽き立ての粉はお湯を注ぐとふわ~っと丸く膨らむので、豆の鮮度はコーヒーを淹れる際に確認しよう。

欠点豆がきちんとハンドピックされているか?

欠点豆とは、虫食いや、未成熟の豆、しわの入った豆など、粒の不揃いな豆のこと。こうした豆が残っていると、コーヒーを淹れた際の渋みや異臭の原因になり、それぞれの豆の持ち味を十分に活かすことができない。『バッハ』では、生豆の状態と焙煎後の最低2回、丁寧にハンドピックを行っている。コーヒー豆を買う際は、できれば焙煎された豆の様子を確認し、粒が揃ったものを購入したい。もし豆の状態を見ることができなければ、やはり店員に訊くのが望ましい。

自分好みの焙煎度合いを知ること

次に非常に重要なポイントが「焙煎度合い」。なぜかというと、例えば同じ「ブラジル」の豆でも、「浅煎り」と「深煎り」では全く味わいが変わってしまうから。つまり、「やっぱりマンデリンだね」とか「わたしはグァテマラが好き」などと豆を産地で選ぶよりも、まず自分はどのくらいの焙煎度合いの豆が好みなのかを知ることが重要なのだ。一度自分の好きな焙煎度合いを把握すれば、たとえ豆の産地が違っても、好みの味わいからそう大きく外れることはない。

では、あなたがいつも買っている豆はどんな焙煎度合い(色)か、『バッハ』の分類を基にチャートで確認してみよう。

下段1~4:生から1ハゼ手前
下段の1~4は、すべて豆がハゼる(芯まで火が通り、豆が膨らんで開くこと)前の状態。ゆっくりと色が変化していく様子がわかる。この段階では酸味やえぐみが強く、飲むのには適さない。

上段5:浅煎り(ミディアムロースト)
1ハゼ(最初に豆がハゼること)終わり頃の段階で、コーヒーらしい香りが立ってくる最初期。この頃のコーヒーは心地よい酸味とやわらかなコクが特徴で、コーヒーの色も明るく、軽い口当たり。最近は浅煎りが人気傾向にあるが、あまりに色の明るい浅煎りは豆の渋みやエグみを感じることが多い。

上段6:中煎り(ハイロースト)
1ハゼが終了し、豆のしわがのび、香りが変化する手前の焙煎度合い。このあたりからフレッシュフルーツのようなきれいな酸味と、バターやキャラメル、バニラのような香りが立ってくる。

上段7:中深煎り(シティロースト)
豆が起き出し、2回目のハゼ(*2ハゼと呼ぶ)が始まった状態。コーヒーは酸味の角が取れ、スパイス香とともに苦味が立ち上がって、味わいに豊かさが出てくる。

上段8:中深煎り(フルシティロースト)
2ハゼに突入し、豆が大きく開いてくる。また、豆の表面にツヤツヤとした輝きが出る。深煎りの手前の状態で、コーヒーは色が深まり、酸味が弱まって苦味が豊かに表れてくる。

上段8よりさらに焙煎を強めたものが深煎り(フレンチロースト)といわれ、コク深く、チョコレートのような香りが増してくる状態になる。

いつでもおいしいコーヒーを飲むためには、まず自分の好きなコーヒー豆がどんな色合いで、どのような焙煎度合いだったかをしっかり認識することが大切。さらに、その時の気分や体調によって浅煎りから深煎りを飲み分けることができると楽しい。ここを押さえたら、次に原産国や品種、地域、さらには農園の違いまで探ってみると、よりディープな魅力に触れられる。

豆の銘柄に合わせた焙煎

『バッハ』で取り扱う豆の品種は、自家焙煎したスペシャルティコーヒー(産地や農園などの特徴が表れた高品質なコーヒーのこと)向きの「アラビカ種」のみ。同店では、国内の自家焙煎店でツヤツヤと黒光りした「深煎り」の豆が主流だった40年以上前から、浅煎りから深煎りまですでにバランスよく取り揃えていたというからすごい。ちなみに、同店がコーヒー好きにお勧めする代表的な豆の銘柄と、それに対する焙煎度合いは下記を参考にしたい。

① ケニアAA
産地はケニアの首都ナイロビから150キロほど離れたケニア山の周辺地帯。「AA」は豆のサイズ(*スクリーンという)が7㎜以上で粒揃いの最高等級品だ。ケニアの豆は品質に定評があり、スペシャルティコーヒー向きとして特にヨーロッパで評価が高い。このケニアAAに関しては、カラメルのような甘苦さを前面に押し出すこと、また、その背景に青りんごやアンズ系の香りを立たせるために「フレンチロースト」にしている。

② パナマ ドンパチ ゲイシャ・ウォッシュト

アラビカ種のなかでも、近年、そのすばらしい香りから世界の注目を集めるゲイシャ種。パナマ西部・ボケテ地区にある同種の第一人者「ドンパチ」農園フランシスコ氏の作る水洗式ゲイシャ種は、とりわけ柑橘系の酸味、上品なボディが楽しめる。こちらは、シャンパーニュのような豊かさとコーヒーらしい味わいを両立させる「ハイロースト」に。なお、水洗式(ウォッシュト)とは、収穫後すぐに果肉を剥き取って発酵槽に漬けてから水洗いし、種の周りの粘液質を完全に除去して乾燥させる方法のこと。その反対が「非水洗式」で、果肉を剥き取らずそのまま乾燥させる方法のことを指す。

③ コロンビア マタレドンタ
コロンビア国内でも注目の生産地が南西部の山岳地帯にあるナリーニョ県。同県内「マタレドンタ農園」で生産されたアラビカ・カトゥーラ種のコーヒー豆は、インパクトのある柑橘系のコク、華やかな酸味、複雑なスパイシーさが楽しめる。凝縮した柑橘系の香りと酸味を持った豆にしっかりと火を通して滑らかな濃度を加えるためやや浅めの「フルシティロースト」に。

④ スマトラ・マンデリン「タノバタック」
インドネシア・スマトラ島はマンデリンの主要産地。北部、トバ湖周辺で栽培されたコーヒーは、柔らかいボディ、ベリー系やハーブの風味、スパイシーな特有のフレーバーが味わえる。豆には「コーヒーの五香粉」といえるような複雑さがあり、そこにしっかりと火入れしてコクとキレを出すため「フルシティロースト」にしている。

⑤ ブルーマウンテンNo1.
「キング オブ アラビカ種」と呼ばれるブルーマウンテン。その称号は、中米カリブ海に位置するジャマイカ島のブルーマウンテン地区で生産されたもののみ名乗ることができる。No1.とは欠点豆や異物混入がほぼないことを意味し、上品でフローラルな香りとバランスの良い味わいが特徴。気品のある香りと酸味を活かし、豆のスッピンの良さを味わうために苦みを排した「ミディアムロースト」に。

最後に、『バッハ』について紹介しよう。1968年に田口護さんと文子さん夫妻がオープンした同店は、前述した通り、1972年から自家焙煎をスタートしコーヒー界を牽引してきた専門店だ。田口さんは、40カ国以上のコーヒー生産国を回り、良質のコーヒー豆を通じて信頼関係を取り結んできた姿から、世界中のコーヒー関係者に「レジェンド」と称され大きな影響を与えている(写真はパナマのドンパチ農園主フランシスコ氏と田口さん)。

店内はヨハン・セバスチャン・バッハなどのクラシック音楽が流れ、カウンターの棚にはガラスのキャニスターに入ったコーヒー豆がずらりと並ぶ。

カフェメニューはブレンドだけで4種類、ストレートコーヒーは20種類以上もある。他にもウィンナコーヒーやカフェ・オレなど様々なメニューが揃っており、これだけの専門性がありながら、お年寄りから子供まで幅広い年代が楽しめるよう、ミルクやソフトドリンクも置いてあるのが嬉しい。

2000年に開かれた沖縄サミットでは、晩餐会の食後のコーヒーとして、各国首脳に同店の「バッハブレンド」が振る舞われた。現在では、そんな憧れの『バッハ』のコーヒーを飲もうと、国内だけでなく、海外からもファンが訪れている。

自らが開発したオリジナルの焙煎機を背景に、田口さんは気さくな語り口調でこう話してくれた。「コーヒーは、これまで挙げたようないくつかのポイントさえ押さえられていれば、どんな淹れ方だろうと、どんな器具を使おうと、そうマズくなるということはありません。むしろ、自分好みの味を自在に作ることができる飲み物です。自由で、作業が簡単。だからこそ、これだけ世界中で親しまれてきたのではないかと思うんですよ」。

「『コーヒーは全ての人々を友にする』。私の好きな言葉です。この48年間、『バッハ』を通じて、妻と私は世界中のすばらしい方々と出会い、友人としてお付き合いさせていただく機会に恵まれました。コーヒーには、さまざまな立場を超えて人間同士を繋ぐ魔法の力があると思うんです。どうか皆さんも、頭でっかちな理屈や正解ばかりを求めるのではなく、それぞれに自分なりのコーヒーの楽しみ方を深めていってくださることを願っています」。

【メニュー】
バッハブレンド 570円
ケニアAA  600 円
スマトラ・マンデリン タノバタック 650円
パナマ・ドンパチ ゲイシャ ナチュラル 1,050円
ブルーマウンテンNo.1 1,200円
トースト380円
チーズケーキ 500円
※価格は税込

自家焙煎珈琲屋 バッハ

住所
〒111-0021 東京都台東区日本堤1-23-9
電話番号
03-3875-2669
営業時間
8:30~20:00
定休日
公式サイト
http://www.bach-kaffee.co.jp

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。