旬の地野菜もたっぷり堪能! 築100年の京町家で絶品フレンチが楽しめる『モトイ』

2017年02月07日
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旬の地野菜もたっぷり堪能! 築100年の京町家で絶品フレンチが楽しめる『モトイ』
Summary
1.183坪の敷地を持つ老舗呉服店がスタイリッシュなダイニングに変貌
2.シェフはホテルの中国料理店と、フランス・日本の星付きフレンチで修業
3.中国料理の技術と京の文化を吹き込んだ料理の数々

京都市中京区、俵屋町。京都御所のすぐ南に位置するこの界隈は、昔ながらの商店や飲食店や町屋、そして瀟洒なマンションが混在しつつも落ち着きのあるエリアだ。そんな中にあって、市内を南北に走る富小路通に面する『MOTOI』(モトイ)の外観(写真下)は京町家そのもの。白い暖簾と小さな照明に、控えめにロゴが入っているだけなので、そうと知らなければ足を止める人は少ないだろう。

この建物は大正時代、呉服店として建築されたそうで、約100年の時を経てもなお、そのままの姿を残している。黒みを帯びた木壁と漆喰が歳月を物語る外玄関から一歩踏む込むと、いかにも京町家らしい、長い石畳のアプローチが続く。

アプローチの奥右手にある木製玄関の引き戸を開くと待合があり、その向こうには質素だが美しい前庭。そして左手に、入口からはとても想像できない、広々と開放的なダイニングが広がっている。2階の床を取り払ったという吹き抜けの天井は、どっしりとした梁が悠々とした存在感を放つ。欄間の彫刻や、細い柱の並びが、畳の間であった頃を思わせるが、一方で、陶製のタイルを貼った艶やかな床や、何より中央に据えられた巨大なフラワーアレンジメントが、モダンでスタイリッシュな印象を醸し出している。

世界から注目されるフレンチ『HAJIME』で修業

このレストランをオープンしたのは、シェフを務める前田元(もとい)さん。実は前田さんは、フレンチのシェフにしては少し異色の経歴の持ち主だ。高校を卒業後、旧京都グランドホテルのフランス料理の門戸を叩くも、中国料理の枠しか空いていなかったため「料理の基礎を学べるなら」とそこで3年修業。その後、旧ホテル日航東京の中国料理店『唐宮』で7年間腕を振るう。中国料理の世界で10年の修業を経て「強引に方向転換を」と思った前田さんはフランスに留学。ボーヌの一つ星「ル・ジャルダン・デ・ランパール」と、ブルゴーニュの二つ星「ラ・マドレーヌ」で約1年間、念願だったフレンチの技術を習得した。

帰国後、京都フレンチの代表格との呼び声高い『ピトレスク』、さらに、革新的なスタイルで世界から注目を集める大阪の二つ星レストラン『HAJIME』で経験を積む。そうして2012年1月に開店した『MOTOI』は、その年から連続で一つ星を獲得している。

奥ゆかしい「京」のエッセンスを盛り込む料理

そんな前田さんの料理は、本人いわく「奇をてらわない」オーソドックスなスタイル。自らが生産地や市場へ奔走し吟味した食材を、フレンチの技術で最大限に生かす調理を施す。ただしそこには、季節や器の美を重んじ、奥ゆかしく控えめなことを是とする、京都のエッセンスが。さらに、スパイス遣いや表現、切り口などに、中国料理のテクニックが織り交ざる。

例えば1月初旬のある日のコースの前菜の1つ「鴨のフォアグラと黒豆 金柑」(写真上)は、脂の溶けない温度でゆっくりと火入れしたフォアグラに、カカオパウダーを合わせた一品。フォアグラはバターのように濃厚なコクがあり、そこにフワッと香るチョコの風味がアクセントを添えている。正月らしい黒豆は、山椒とクローブを使ったスパイシーな味わいだ。

続いて、こちらの料理は「カニのクルスティアン」(写真上)。カニのスープで火を入れ、少しクリームを加えた紅ズワイを包んでいるのは、見た目通り、春巻きの生地だ。口にすると、パリパリの皮からジューシーなカニ身が飛び出して、頬が思わずほころぶ。カニ味噌のソースはオリーブオイルがフルーティであと口爽やか。さりげなく添えられた赤タマネギのピクルスの酸味もうれしい。

季節を告げる地の野菜もたっぷりと

この日の魚料理は、「平スズキのポワレ クリュスタッセ たっぷりのお野菜と」(写真上)。沖合で獲れる高級魚、平スズキの皮目はフライパンでパリパリに、よく締った身はオーブンと天火でしっとりと焼き上げられている。目を見張るのは、その周囲に飾られたカラフルな野菜たち。チンゲン菜にカブ、菜の花など、旬の新鮮な地野菜がなんと40種類以上! 驚くことにその1つ1つが、茹でて、焼いて、煮て、揚げて……と、最も素材の味が引き立つ調理法で仕上げられている。

いよいよメインは「ロゼに焼き上げた尾崎牛 赤ワインソース」(写真上)。美食家の間で不動の人気を誇る尾崎牛は、ブームの前に自ら直接宮崎を尋ね、その熱意で仕入れが可能になった。ひと口味わうと、柔らかなその身から溢れ出す肉汁と上品な脂身、そして赤身のしっかりとした風味が広がる。表面にかかる岩塩と、コンフィチュールのような甘さのある赤ワインソースも相性抜群で、シェフソムリエいわく「タンニンの渋みと甘みのバランスがいい赤ワインとぜひご一緒に」とのこと。白いピューレは長芋そのままのねっとりとしたソースで、そこに堀川ゴボウが土の香りをプラス。尾崎牛と合わせれば、どこか和のエッセンスが香る、滋味豊かな味わいとなる。

なお、ズラリとボトルが並ぶワインセラーには、ヨーロッパからニューワールドまで約350種がスタンバイする(写真下)。

テーブルとテーブルの間が1mほど取られたゆとりの空間『MOTOI』。ぜひ、家族や恋人との特別な時間を過ごしてみてはいかがだろうか。また中庭の奥には、大正時代の蔵を改装した個室もあり、静謐な雰囲気の中、誰にも邪魔されず、この部屋のためだけに用意される特別なフルコースを堪能することができる。設えはもちろんだが、皿の中に隠れた京の文化や風俗、そして中国料理のエッセンスを見つける喜びを、ぜひとも感じて欲しい一軒だ。

【メニュー】
ランチコース 7,830円
ディナーコース 14,580円
ショートコース 9,720円
特別コース(蔵の個室限定) ランチ16,740円、ディナー28,080円
※価格はサービス料別、税込

レストラン MOTOI

住所
〒604-0952 京都府京都市中京区富小路二条下ル俵屋町186
電話番号
075-231-0709
営業時間
ランチ 12:00~13:00(入店時間)、ディナー 18:00~20:00(入店時間) ※完全予約制
定休日
水・木
公式サイト
http://www.kyoto-motoi.com/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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