枝そっくりな料理はどんな味!? アーティスティックな皿に心が躍る北欧フレンチ『コフク』

2017年10月04日
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枝そっくりな料理はどんな味!? アーティスティックな皿に心が躍る北欧フレンチ『コフク』
Summary
1.手間と時間をかけて作るパーツを組み合わせて構築した新しい料理に五感がフル稼働
2.日本の食材と最新の技術で創りだすアーティスティックな皿にあるのは驚きと楽しさとおいしさ
3.基礎から最先端のテクニックまで身につけた後にやっと見つけた“自分の目指す道”とは?

芸術性あふれる食事をお腹いっぱい楽しめる店が誕生

新橋駅から10分弱ほど歩けば駅前の喧騒はなかったかのようにぐっと落ち着いてくる。そこに2017年8月、『Cofuku(コフク)』がオープンした。

店名は腹つづみを打つほど満腹で世の中が平和で幸せなことを意味する故事「鼓腹」に由来し、お腹いっぱいになって楽しんでもらいたいという気持ちを込めた。

シンプルなインテリア、真っ白でしわひとつないテーブルクロス、ここにのる赤木渉シェフの皿は個性豊かな芸術作品のようだ。

日本、フランス、北欧での経験が集結した独自のスタイル

表参道『アディングブルー』ではガッツリとしたビストロ料理を、「マンダリンオリエンタル東京」の『タパス モラキュラー バー』では化学実験のような分子ガストロノミーキュイジーヌを経験した。オーナーシェフになる夢のためベーカリーに勤めパンとお菓子作りに集中した時期もあった。10年ほど日本で経験を積んだ後渡欧し、フランス『ル・プティ・ニース』、ノルウェー『マーエモ』、デンマーク『カドー』『AOC』『アマス』など、現地のミシュランガイドに名を連ねる数々の名店で本場のフランス料理、スペイン料理、北欧料理を学び、感性と技術に磨きがかかった。転機は導かれるように向かった北欧。「地域の食材を使うこと」が至極当然であることを知り、それがむしろ新鮮で自分の目指す道が見えたのだと言う。

だからシェフは国産食材を使うことにこだわる。「本当はすべてを国産にしたいのですが、まだこれだと思えるコショウが見つからないのです。西洋料理には欠かせない調味料なので納得のいくものを探したい。だから100%と言い切れないのが残念です」と話す。それでも山椒や唐辛子で代用し、ないものは自分で作る。特に日本各地に昔から存在した固定種・在来種と呼ばれる市場に出回る機会が少なく絶滅の危機にある伝統野菜を積極的に使っている。

メニューはおまかせコース1本。そのすべての皿に素晴らしいプレゼンテーションがあり、運ばれてくるたびに心が躍る。

10〜12品すべてが変化に富み驚きと喜びに満ち溢れる

こちらははじめに登場する「3つのスナック」からのひと品。

見た目ではまったくわからないこの料理は塩麹で炊いたおかゆの上に長野県産信州サーモンをマリネとフレークの2種類で重ねている。さらにすだちを削ったものを振りかけた。とにかく食感が面白い。サクサク、ふわふわ、トロトロ、「いったい何がどうなっているのだろう?」と興味がわく。口に入れるとほどなく溶けてしまうのであるが、サーモンの香りの余韻に浸りながら次の皿を待つのも楽しい。

見目麗しい皿は「春菊を使いたい」という発想から生まれた。しっとりするくらいに火を入れた茨城県産のイシガレイに春菊のソテーをのせ、その上に菊芋と海老芋を薄く丸くスライスして並べ、食用菊で作ったパウダーをふりかける。最後に手前から香り高い春菊のソースをたっぷり注ぎ、さらに春菊のスプラウトを飾れば、まるでデザートのように華やかで美しい皿となる。まさに春菊のための逸品である。

リ・ド・ヴォーのムニエルの上には栗のソテーをのせて栗のエスプーマで優しく包む。塩漬けして発酵させてから乾燥したマッシュルームパウダーと長野県産生ハムパウダーをふりかけ、モルトとココアで作られる枝に見立てたグリッシーニ、クチナシで色をつけたイチョウ型の栗のチップで構成した皿には卓越したテクニックがぎっしり詰まり、まったりしたコクとうまみに満ちている。

煙がたちこめたデザートは爽やかさ一色。砂糖シロップでコンフィにした国産レモンの皮にレモンクリームを絞りバタークリームのシャーベットをのせる。周りにはレモンとバジルのメレンゲをつけ、バジルのスプラウトをちょこんとのせていく。液体窒素で作ったバジル氷の食感たるや。作る工程が多い分子ガストロノミーのテクニックだからできる、ふわふわでシャリシャリの氷だ。甘酸っぱさと清涼感が口いっぱいに広がる至極のひと皿。

美しい芸術品の根源にあるのはシェフの経験、技術、そして想い

「国産食材を使うこと」、「自分にしかできないこと」、「発信できるテクニックを創ること」、「他にはない料理であること」、「季節を感じること」をマニフェストに、過去の経験と先端の技術で自身の料理を昇華させている。

料理名はなく、メニューには食材だけが羅列され、事細かに説明もされない。おそらくシェフは文字による先入観を極力なくし、食べた時に感じたことを楽しんでもらいたいと願っているのだろう。確かにひとくち食べて「これ何?」とメニューに記載された食材を思わず確認してしまう。見た目では冷たそうな料理が実は温かかったり、形状からは食材も味も予測がつかなかったりとサプライズの連続なのだ。これだけ奇抜なことをしても味がブレないのはフランス料理も北欧料理も本場で王道をしっかりと修業しているからだ。オープンキッチンから聞こえる音や香り、目の前に置かれた美しい料理、カトラリーを通して伝わる感触、そして口福な味わい。食べ手の想像力をかきたてる“五感が喜ぶ”店にはなんども訪れたくなるものだ。


(撮影/八木竜馬) 


【メニュー】
ランチコース 4,500円   +2,000円で魚と肉料理がつくコースへの変更が可能
ディナーコース 10,000円
※アラカルト有り
価格すべて税別、サービス料10%

Cofuku(コフク)

住所
〒105-0004 東京都港区新橋5-7-7 ロイジェント新橋B1F
電話番号
03-3578-8831
営業時間
12:00〜(L.O.13:00)、18:00〜(L.O.20:00)
定休日
日曜
公式サイト
https://www.cofuku.tokyo/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。