グラス1杯から軽食まで、しかもワインも買って帰れる。ヴィネリアでワインと親しくなろう【三軒茶屋】

【連載】幸食のすゝめ #058 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2018年04月05日
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グラス1杯から軽食まで、しかもワインも買って帰れる。ヴィネリアでワインと親しくなろう【三軒茶屋】
Summary
1.1杯だけ、購入だけでも可能な、ワインがもっと好きになるヴィネリアという形
2.ワインの9割はイタリア産、修業時代に現地で知り合った造り手のワインばかり
3.ワインが飲めて、買えて、ランチや軽食も食べられるワインストア&スタンド

幸食のすゝめ#058、友達のワインには幸いが住む、三軒茶屋

「マサト、葡萄は畑でできているけど、その向うには林があって、森がある。そして、その向うには川があるの、その全部を含めて環境なのよ」。初めて1人で訪れた生産者「マッサ ヴェッキア」のワイナリーで、眼下に広がる葡萄畑を見下ろしながら、奥さんのフランチェスカがゆっくりと話し出した。

駅からバスを乗り継いで行ったトスカーナの南端、マッサ・マリッティマ。バス停には、ファブリッツィオ・ニコライーニ夫妻が迎えに来てくれていた。ご飯がまだだったから、パンとプロシュートで簡単な昼食を終えてトイレに行くと、もう会計済。見知らぬ日本人に対して見せてくれたイタリア人の優しさと熱さが、イタリアワインにのめり込む第一歩だった。

246沿いのワインスタンド店主、森田雅人さんは、ウイスキーで有名な愛知県知多市出身。名古屋学芸大学卒業後、都内で4年間の設計事務所勤務を経て、飲食業界へ。イタリア料理店のマネージャーを務めた後、「(イタリアを深く理解するには)自分自身が半分イタリア人にならないとダメだ」と痛感して渡欧。

ホームステイでイタリア語を学びつつ、カルボナーラで有名な『ロショーリ』の門を叩く。しかし、肌が合わず、当時行きつけだったヴィネリア『リトロ』でスタッフに話すと、「じゃ、ウチに来れば!」と話が即決。ワインが買えて、気軽に飲めて、軽い食事もできるヴィネリアで1年半働くことになった。

休日には、ワイナリーも積極的に回った。『リトロ』は語学学校に向かうバス停の向い、ローマを一望できる、ジャニコロの丘にあった。

『リトロ』では、素晴らしい出会いも訪れた。ロバのエチケットでお馴染みのワイン、「アジノーイ」だ。ワイナリーであるピエモンテ州の『カルッシン』と店は懇意の仲で、リトロ・エチケットのマグナムが店に並んでいた。当主のブルーナ・フェッロとも出会い、彼のワイナリーで働くことを決意する。

記念すべき1日目は、フランスで開かれる見本市だった。その会場でバローロ伝説の造り手であるジュゼッペ・リナルディや、トップキュヴェ「ストッパ」で有名なエミリア・ロマーニャ州のワイナリー『ラ ストッパ』のジューリオ・アルマーニ(現当主エレナの元パートナー)に出会い、目を白黒させているうちにワイナリーでの日々が始まる。2015年の3月から、収穫が終わる11月まで、生涯忘れられない9カ月になった。

「それまで、剪定や収穫のお手伝いはしたことがあったけど、その時期以外のワイナリーを知りたかったんです。僕が知らない間に、葡萄はどんな風に育って、実って行くのか。ずっとそばにいて、見守りたいと思いました」。

その後、帰国して南青山のイタリアン『フェリチタ』へ。現『HIBANA』の永島農さんを擁する、イタリアワインの偉大なるアーカイブだ。その後、今年4月に惜しまれつつ閉店した『フェリチタ』から三軒茶屋の『ブリッカ』へ。

オーナーシェフの金田真芳さんは、かつて『フェリチタ』のスーシェフ。時期はクロスしないが、2人とも『フェリチタ』育ちだ。支店ができた今も、ワインの造り手が来日すると2店舗合同でイベントを開催する。

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