行きつけのバーを見つけるということ

みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
♯行きつけのバーを見つけるということ

2018年07月18日
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行きつけのバーを見つけるということ
Summary
1.国内外1,000人以上のインタビューをしてきた酒旅ライターが伝える「お酒の向こう側の物語」
2.金沢で見つけた、「大人の階段」を上らせてくれる「ハイボールバー」
3.「旅先に行きつけのバーがあるんだ」。そんなセリフが残せるお店

旅先にある行きつけのバーに行くために旅をする、僕が出逢った金沢のバー【酒旅ライター・岩瀬大二】

大人の階段上る。懐かしいフォークソングのサビの一節。酒の世界、酒場の世界でもいろいろな大人の階段を上ったなあ、という瞬間があったりする。僕の場合の最初のそれは、26歳、オーセンティックなバーに先輩に連れて行ってもらって、という、わりと王道というかよくある場面。26歳、はじめての王道バーでもないし、はじめてのウイスキーでもなかった。この店での体験の何が大人の階段だったのかといえば、そこが「行きつけ」になったということだ。

私鉄沿線という気軽さと自宅への帰り道という便利さも手伝ったのか、そのあとも一人で通うようになった。そこでの大人の階段は、常連になったバーでの振る舞い方であったり、カウンターでの心地よく過ごすマナーだった。初めてその店に行ったときに、大人の階段を上ったわけではなく、振り返ってみて、あぁ、あの時がきっかけで上ったんだなと気づいたというわけだ。

「大人の階段」は「初めての体験」というのとはちょっと違う。いつもと違う体験が、自分を少し誇らしげにしてくれるということだろう。随分と酒の仕事、酒場の仕事を続けてきたが、今でも、大人の階段を上らせてくれる店、出逢いがある。旅先でたまたま出逢ったバーや酒場が、いつのまにか行きつけになって、そこに行くために旅をする。この喜びに気がついた時、それがまた、自分にとっての大人の階段。

その1軒が、金沢にある。シグネチャー(名刺代わりとでも訳そうか)はハイボール。ここ数年、ハイボールは酒場界隈ではブームから定番化した感があり、激安居酒屋で気軽に飲めるものから、一流ホテルのバーで楽しむ卓越したものまで、幅広く楽しめる。若い世代にとっては新しい酒の楽しみ方という感覚もあるようだが、昭和のバーからのまさかのリバイバルヒットだ。

ハイボールの正確な定義はないが、ざっくりいってしまえば「酒の炭酸割」。ウイスキーが一般的だが、焼酎でも果実酒でもハイボールと名乗ることは問題ない。とはいえ、やはり単にハイボールと書けば、それはウイスキーとなるのだろう。

仕事の緊張感も旅の疲れもすーっとほどける「ハイボールバー」

仕事で金沢を訪れたとき、たまたま友人のおススメでこの店に来た。特にハイボールが飲みたいというわけではなかったのだが、「マスターの人柄も良くてリラックスできる」というメッセージもあり、その日のディナーまで時間が空いたので、「0軒目使い」として気軽に訊ねたのだ。

メニューを見ると、ハイボールだけでも9種類が書かれている。その中から店の定番というハイボールをオーダーする。タンブラーを持った瞬間に驚いた。軽い。飲んでみて驚いた。軽やか。ふわふわな飲み口で、その日の仕事の緊張感や旅の疲れがすーっとほどけた。絶妙な冷感が喉の中を通っていき、後味にはスコッチウイスキーが優しく香る。

タンブラーを一度コースターに戻すと氷が軽やかなタンブラーとふれあい、優しくカランと響く。自分でも驚くほどいいリズムと速いペースであっという間に1杯目が空いた。もう少しゆっくり味わいたいと、2杯目をオーダーする。軽やかさとふわふわと優しさの謎を紐解きたいという欲にどうやら支配されてしまったようだ。

2杯目は、名物のスモークナッツをつまみながらじっくりと。その謎はその時には紐解けなかったが、金沢に行くたびに、この店を訪ねるようになった。この店でハイボールを飲むたびに、ふと思う。この店を訪ねるために金沢での用件をがんばって作っているんじゃないか。心の中でそう苦笑しながら、なんとも楽しい時間を過ごす。

さて、先日、「軽やかさとふわふわと優しさの謎」が解けた。お店の紹介とともにここで明かそう。

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岩瀬大二
ワインナビゲーター/酒旅ライター/MC
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松浦達也
編集者/ライター/フードアクティビスト