名フレンチ誕生! 3歳からシェフを志した女性シェフのフレンチレストラン『タンモア』【赤坂】

2018年10月07日
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名フレンチ誕生! 3歳からシェフを志した女性シェフのフレンチレストラン『タンモア』【赤坂】
Summary
1.横浜の『ふらんす懐石 修廣樹』(シュウコウジュ)を経てフランスで修業した女性シェフの新店
2.コースは7,000円1種類のみ! 和素材や中華調味料も一流フレンチに昇華
3.2タイプのアルコール・ペアリングの妙にも注目!

『ミシュランガイド』一つ星レストランで研鑽を積んだ女性シェフのフレンチがオープン

子どものころの食体験がきっかけとなり、料理人への道を歩み始める人は多い。2018年9月にオープンしたフレンチレストラン『タンモア』のシェフ・田中いずみさん(写真下)もそう。しかも彼女の場合、3歳にはこの道を志すと決めていたほどの筋金入りだ。

「母子家庭で育ったんですけど、母は料理が得意じゃなかったので、小さい頃から私が炊事担当でした」。当時夢見ていた職業はパン屋さんやお蕎麦屋さん。その理由は、「ひとりで切り盛りするのが好きだったから」。年端も行かぬ子どもとは思えない感性であるが、彼女はひたむきに研鑽を続け、34歳でついに夢を現実のものとした。

むろん修業時代も長かった。農業高等学校の食物科で学んで調理師免許を取得した後は、横浜・元町の名店『修廣樹』(シュウコウジュ)で5年間修業。そこからさらに3年間、鎌倉のフレンチレストランで修業を積んだ後、渡仏して3年半腕を磨いたというのだから、人知れぬ苦労もあっただろう。

しかし彼女はそのすべてを肯定的にとらえている。たとえば最初の修業先で辛かったことを尋ねたときにも、「一つひとつの物事に対してすごくキッチリしているシェフだったので、こちらも絶対に手が抜けませんでした。でも、どんなことに対してもきちんとするというのはお客さまへの誠意の表れ。厳しさに触れるたびに、『この人の下で働けてよかった』と思えました」と顔をほころばせてみせる。

また、二軒目の修業先では経営スタイルについて学んだという点も流石である。さらにその後のフランス時代には、パリのビストロや『ミシュランガイド』で一つ星に輝いたレストランに勤務しただけでなく、仕事が休みの日には無給で肉屋の仕事を手伝い、本場のパテやリエットの作り方を学んだ。

ペアリングを楽しんでもお手頃! 月一のデートに利用してもらいたい

「向こうでは、フランス人と日本人の味の感じ方の違いや火入れの好みについて、日々気づかされることだらけでした」。おかげでフランス人の嗜好への理解も深まったが、『タンモア』ではもちろん、自分の味を大切にしている。また、「とろけるような柔らかな時間」の意味を込めた店名通り、お客に上質な時間に酔いしれてもらえるよう、内装やサービスにも趣向を凝らした。

メニューは税別7,000円のコースのみ(肉料理は別途オプションも選べる)。アルコール・ペアリングはベーシックなAタイプ(写真上・左の5本)と変化球を楽しめるBタイプ(同・右の5本)の2種類で、お酒が苦手な人のためにノン・アルコール・ペアリングも用意。なぜアラカルトがないかというと、料理やワインを選ぶ時間を相手との会話に使ってほしいから。白を基調とした店内に絵画作品などを一切飾っていない理由も同様で、余計な情報を目に入れないことで、楽しい時間に集中してもらおうというのだ。

「夫婦やカップルの月に一度のデートに利用してもらえたらうれしいですね。子どもの手が離れたふたりに気軽に楽しんでもらいたいんです」との思いから値段設定も控えめ。とはいえ、コースはアミューズ、前菜その1、前菜その2、魚料理、肉料理、チーズ、デザート、お茶菓子の全8品、ペアリングはいずれも5種類の美酒を堪能できる。また、ランチはディナーから2品減らしたコースを用意。土日のみ提供している。

和素材や中華調味料も一流フレンチに昇華

メニューは月替わり。9月は、カツオ節を混ぜて焼いたタルト生地にカツオのタルタルとマスカットを乗せ、アクセントとして豆鼓(トウチ)や茗荷(ミョウガ)を添えたアミューズ(写真上)から“とろける時間”がスタートする。カツオ節がきいた香ばしいタルトの上で豆鼓のうまみやマスカットの爽やかさが混然一体となった逸品は、指でつまんでいただけるのもうれしい。一品目からラフなスタイルで楽しむことで、肩の力がふっと抜けて自然とリラックスできるではないか。

続く前菜には、秋の味覚を満喫できる2皿が用意されている。まず1皿目は、「秋刀魚とフォアグラ、山椒、マンゴー」(写真上)。自家製ブリオッシュと相性抜群の、秋刀魚とフォワグラの濃厚テリーヌだ。右下に添えられているのは秋刀魚の肝で作ったソース。トッピングには秋刀魚の骨で作ったせんべいを散らし、“味変”を楽しめるようクリームチーズと粒マスタードまで添えられた粋な一皿である。

2皿目の「秋のキノコのソテー、カシューナッツ、パンチェッタ」(写真上)は、季節のきのこ尽くしの香り高い一皿。カシューナッツソースを絡めたり、パンチェッタと一緒に口に運んだりしながら豊潤な味わいに酔いしれるのはもちろん、「ピノ・ノワール」との見事なマリアージュを楽しむのもオツである。

「ピノ・ノワール」好きなら特にゆっくりと時間をかけて堪能したい肉料理は、コースで楽しめるメニューの他に、追加でオーダー可能な別メニューも存在する。写真上の「ランド産仔鳩のロースト、サルミソース、もも肉と内臓のブリック」がそれ(プラス1,800円税別)。鳩の血液を煮詰めた赤ワインベースのソース、鳩のもも肉入りブリックと、仔鳩のうまみや栄養を余すところなくいただける贅沢な一品だ。

月に2度通って異なるペアリングを楽しむのもアリ!

先に触れた通り、『タンモア』のアルコール・ペアリングは、ベーシックなAタイプと変化球を楽しめるBタイプの2種類が用意されており、Aタイプをチョイスした場合、肉料理にはエレガントで豊かなボディの「ピノ・ノワール」が合わせられるが、Bタイプだと、豊潤な酸味と熟成感が魅力の白が注がれるのもまた一興。

どんな銘柄がセレクトされているのかは実際に足を運んで確認してほしいが、その際にはアルコールリストに添えられた味の説明にも注目してほしい。なんと説明書きを手掛けたのは、ワインに関する数々の著書で知られるワインライターの葉山考太郎氏で、週に2日は『タンモア』のソムリエを務めているというから驚きだ。

食事を楽しんだあとはお待ちかねのデザート。夏の余韻を楽しむかのように涼やかなグラスに盛りつけられた「桃づくし、オリエンタルの香り」(写真上)は、冷たい桃のソルベとむきたての果実に、桃の皮と種を搾ってスパイシーに味付けしたスープを注ぎ、ほんのりピーチ色の綿あめでフタをした洗練の一皿。スプーンで崩した綿菓子がスープに浸されると、パチパチと音を立てて弾ける様にも心華やぐこと請け合い。

夢見心地のまま家路につくことができる名店なのだ。

【メニュー】
ランチコース 5,000円
おまかせコース 7,000円
ペアリング 3,500円、4,500円
※価格は税別

フランス料理 タンモア

住所
〒107-0052 東京都港区赤坂8-13-19 インペリアル赤坂壱番館B109
電話番号
03-6447-1996
営業時間
18:00~21:00(L.O.)/土日は12:00~14:00(L.O.)、18:00~21:00(L.O.)
定休日
水曜
公式サイト
https://www.tanmoa.com/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。