『銀座レカン』の元料理長がついに独立!待望のフランス料理店『レストラン ラフィナージュ』が銀座に誕生

【連載】マッキー牧元の「今月のこの店」
日本を代表する食道楽の一人、マッキー牧元さん。毎日毎日おいしいもの巡りをする中で、マッキー牧元さんお気に入りのレストランはどんなお店なのか。「マッキー牧元の今月のこの店」と題して少しだけのぞき見させていただく。

2018年10月19日
カテゴリ
レストラン・ショップ
  • レストラン
  • 銀座
  • フレンチ
  • ワイン
『銀座レカン』の元料理長がついに独立!待望のフランス料理店『レストラン ラフィナージュ』が銀座に誕生
Summary
1.『銀座レカン』元料理長の高良康之シェフが独立!
2.一皿一皿は高みを極めた、唯一無二の美味しさ
3.『ラフィナージュ』という店名に込めた想いとは?

真のフランス料理とは何かを教えてくれる、高良シェフの料理とは?

こんなに色気を感じさせるフグは、食べたことがない。
皿の上には、厚くぶつ切りにされた、加熱をしていない半透明なフグが盛られ、傍らには揚げたアラが添えられた。

口に運ぶ。その途端に、ロックフォールの香りが抜ける。厚く切られているので、噛みしだく。何回も噛む。
するとどうだろう、フグからの濃密な旨味が滲み出して、ロックフォールの塩気やコクと手を結ぶではないか。そこへコリアンダーの甘い香りが加わって、混ざり合う。

官能に触れる、危ない瞬間に、心が喜び、震える。

フグを、コリアンダーなどでマリネして数日置き、ロックフォールとエシャロット、白ワインヴィネガーによるドレッシングで和えた料理である。
クセの強い、したたかなロックフォールとフグが調和するように、チーズの量を整え、フグを切る厚さを精妙に計算する。

食べていると、たまらなく上質な白ワインが恋しくなった。モンラッシェをこのフグに合わせたら、どんな甘美が生まれるのだろう。夢想しているだけで、興奮してくる。

そんなワインが飲みたくなる料理こそ、真のフランス料理である。
「フグを出して、日本酒が飲みたいとお客様に言われたら、僕らの負けです、フグをフランス料理に仕立てて出す意味がない」。
そう高良康之シェフは言われた。

ここ銀座『レストラン ラフィナージュ』は、高良シェフが初のオーナーシェフとなる店である。長年、『銀座レカン』の総料理長として活躍し、2017年6月『銀座レカン』改装後も新たなコンセプトで料理を披露して話題を呼んだ後、同年秋に独立のため辞められた。
そして一年、待望の店が2018年10月8日に開店した。

店内はグレーをベースにシックな設えで、優美な料理としっとりと向き合える空間である。

あえて銀座を選んだ理由は、と聞けば、「銀座という街は本物じゃないと残れない街です。伝統ある店が多く、お客様も本物を知っている。だからこそ、銀座で勝負したいという気持ちがありました。さらに、『南部亭(日比谷)』、『銀座レカン』とやってきて、(自身のお客様に)銀座のお客様が多いと実感しています。青山や恵比寿のお客様は“銀座にも”行かれているように思うが、“銀座”のお客様は“銀座しか”行かないと感じています。そんな二つの意味合いから、新たに銀座で勝負したい、という気持ちが強かったのです」。

フランス料理の根幹「香り・ソース・素材」を融合し、より太い幹へ

そして料理は、また変化した。

『銀座レカン』改装後は素材感を中心に据えて、ソースを少なめにし、より食材の生命力を感じるような、素晴らしい料理を供されたが、今回はその素材感の出し方の深みが違うように感じる。

例えば、鹿肉のロティである。

北海道・十勝のエレゾ社から届いた鹿は、精妙にロティされている。しかしどこかに、生きている艶かしい気配があって、官能が焦らされる。
ソースをからませれば、味と香りに厚みが増して、赤ワインが無性に欲しくなった。堂々たるフランス料理だが、濃縮感だけに走らず、素材感だけに走らず、人の手がかかっているのに自然で、均整美がある。

ソースで圧倒するのでもない、鹿肉の滋味で畳み掛けるのでもない。その美しさは、鹿肉の滋味と香り、ソースの三点が、それぞれに高みを極めた、唯一無二の美味しさがある。

「『銀座レカン』の頃に取り組んでいた料理は、フランスを強く意識させる、堂々たるフランス料理で、リニューアルの『銀座レカン』では、生産者の考え方や素材感を全面に押し出そうとしました。素材が軽やかに香っていくような感じです。その要素は全部、今の料理でも考えとして持っているのですが、香りは華やかというより、少し図太さをもたせてあげる。味わいも、軽さばかりではなくて、適切な濃度やコクなどを突き詰め、素材とどう向き合うかを追求しました。塩で味を決めるのではなくて、塩で最後に味を調整してあげる。素材から引っ張り出してきた厚みのあるところに、塩の力を借りて整える。今までやってきたよりも、幹が一回り太くなったような感じのソースの作り方をしています」。

例えばオマールエビは、セップのソテとソースと合わせ、上にセップを練りこんだ生地がかけられている。
噛めば、「ギシッ」と、音が聞こえるかのように歯が入っていく。こんなに凛々しい食感のオマールエビは食べたことがない。

フグ同様、よく噛みしだけば、ある瞬間にセップの香りとオマールエビの香りが、セップの旨味とオマールエビの甘みが溶け合い、一体化して別の天体が生まれるのである。
「口に入れていただいて、その時の食感をどうやって引っ張り出すかを考えると同時に、どの味が出てくるかも考えています」。
それだけにどの料理もドラマがある。

口に入れて、香りの変化やソースと素材のエキスとの出逢いに変化があり、それが一層食材の生命力を感じさせるエレガントさにつながり、ワインが恋しくなるのである。

「香りとソース、素材という3つの幹を、同じ太さぐらいにしたい。素材ばかりを出そうとするとガタガタになり、香りを軽やかに持っていこうとすると、素材を柔らかく仕上げて、ソースが落ち込む。それを全部、同じ幹の太さで、一皿の中できっちりと融合させる。次に向かっていく皿なのか、完結させるのか。三種類を整えて表現していきたいと思います」。

深化を続け“熟成”していく『ラフィナージュ』

今、東京のフランス料理は、どちらかというと素材を前面に出す料理が多くなって来た。ソースも軽く、香りも軽い料理が多い。高良シェフのように従来のフランス料理の考えを踏襲しつつ、現代の質の高い素材を、香りやソースの幹とともに太くし、厚みのある料理を生み出そうという人はいない。
それには技術もいるし、知見も経験値も必要であるし、しなやかな感性も必要である。高良シェフでこそ、到達できる料理なのかもしれない。

よく「料理が進化した」と表現されることが多いが、料理に進化という言葉を使うのは、的外れな気がする。それより「深化」だろう。
新しい店での高良シェフの料理は、そのキャリアと料理を知る僕にとって、まさに「深化」を感じさせる料理である。

「今までやって来たことを捨てるのではなくて、上手く構築していく。建築家みたいに積み上げていって、次のステージを作りたいと思っていました。『銀座レカン』の休業中、気候風土などその場所で触れられて、生産者の人の考えなどを学んだ二年半は大変有意義で、それを表現しようと思ったのが『銀座レカン』のリニュアルスタートでした。でも辞めて、これって誰寄りの料理なんだろう? と自問し、生産者寄りの料理だと思ったんです」。

「僕が作りたい料理はそんな生産者寄りの料理と、“フランス料理”が合致したものなんじゃないかなという思いがありました。だからその素材が食べられる店に食べに行ったりして、香りを引き上げるんだったら、香りだけじゃなくて素材感も引き上げて、素材感を引き上げたんだったら、それに対抗するソースをちゃんとつけて、と考えるようになっていったんですね」。

そしてソースも深化した。

「ソースはセオリー通りに作ったら、小麦粉で繋がなきゃいけない、血で繋がなきゃいけない、アルコールもたくさん入れる。いや、素材がキレイに持ち上がっているんだから、ちょっと違う。今はそのエッセンスを、フォンドヴォーとかブイヨンとかそういう名前の液体で伸ばしただけのソースにしています」。

料理の構成も変わった。

昼も夜もコースで、昼は、アペリティフアミューズ、アミューズ、前菜2皿、魚、肉、デザート。夜は、アペリティフアミューズ、アミューズ、前菜3皿、魚、肉、アヴァンデセール、メインデザート。共に最後に珈琲という流れである。最近のレストランの皿数や構成とは変わらない。

ただスプーンや泡の料理が少ない。確かに最近は、スプーンを使って食べることの多い皿が続き、液体の泡が連続して、液体だけでお腹がいっぱいになってしまう料理が多い。だが世の中は、そろそろ違う、皿一つ一つの味わいの厚みとたくましさを欲している。

「アミューズは手で取ってもらい、次に来る一皿をナイフ・フォークで食べてもらうと、まだ緊張していると思うので、次はスプーンで召し上がっていただく料理を。そのあとにやっとナイフ・フォークが登場し召し上がっていただく料理と続きます。楽しんでいただきたいから、料理の構成、順番を考えた時にどのシルバーを使って食べていただく、ですとか。どういう導入にしたほうが、人の手から、匙になって、ナイフ・フォークになるという段階を経ていってあげると、お客様の緊張がほぐれていくのか、と思うのです」。

店名『ラフィナージュ』は、熟成という意味である。そこに込めたのは、50代のシェフという熟成した技や感性だけではない。
「これから育っていく願いも込めてつけました。色々なお客様と出逢ってお客様との関係が育っていき、店自体がどんどんどんどん育っていく。そういう風にこれから伸び、育っていく気持ちを込めて熟成とつけました」。

今の成功に慢心しない。
常にもっといい方法はないかと、明日の成長を考える。それは優れた職人の証である。50代で常にその職人魂を磨き続けようとする高良シェフと、店のさらなる熟成に目が離せない。

【メニュー】
コース
昼 7,000円~
夜 18,000円~

写真:マッキー牧元・店鋪提供・dressing編集部

レストラン ラフィナージュ

住所
〒104-0061 東京都中央区銀座5-9-16 GINZA A5 2F
電話番号
050-3461-3972
営業時間
12:00~14:00(L.O.)、18:00~20:00(L.O.)
定休日
月曜、第三火曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/6rb8pd0p0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

関連記事

フランス料理界の巨匠ポール・ボキューズの味を気軽に楽しめる『ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座』
フランス料理界の巨匠ポール・ボキューズの味を気軽に楽しめる『ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座』

1.大好評の在日フランス商工会議所100周年記念イベント! 第5回目の舞台は『ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座』 2.世紀の料理人、ポール・ボキューズ氏の味がカジュアルに堪能できるブラッスリー 3.氏のエスプリを継承した料理長が織りなす、現代風に表現した正統なるフランス料理に舌鼓

dressing編集部

待望の再開! 日本最高峰のフレンチレストランの一軒・銀座『レカン』はどう生まれ変わったのか?
待望の再開! 日本最高峰のフレンチレストランの一軒・銀座『レカン』はどう生まれ変わったのか?

1.日本最高峰のフランス料理店のひとつ、銀座『レカン』が6月1日に新たなスタートを切った 2.高良康之シェフが2年半の休業期間にたどり着いた新しい『レカン』の料理のあり方とは? 3.火入れやソースのあり方など、あらゆる点で進化しつつ、古くからの常連の心を掴む店

本日オープン!インド料理の“今”を体感できる唯一無二のレストラン『スパイスラボトーキョー』【銀座】
本日オープン!インド料理の“今”を体感できる唯一無二のレストラン『スパイスラボトーキョー』【銀座】

1.“インド料理の今”を体感できる『SPICE LAB TOKYO(スパイスラボトーキョー)』が11月16日(土)、銀座にオープン! 2.世界中で支持を受ける、最先端インド料理「モダンインディアンキュイジーヌ」とは? 3.総料理長は、超高級ホテル『AMAN』の副料理長も務めたテジャス・ソヴァニ氏

桑原恵美子
ライター
【1日1組限定】本物の贅沢とはこういうこと!実力派シェフを独占できる究極の「プライベート・フレンチ」

1. ホテルの料理長、レストランのプロデューサーとして足跡を残したシェフの理想形フレンチ 2. 「お客はホスト、シェフは出張料理人」がコンセプト。1日1組限定のプライベート空間 3. 店名の語源は「未完成」。飽くなき探究心に裏打ちされた珠玉のフレンチ

露久保瑞恵
ライター&編集 料理・酒・旅探求人