食材の個性を堪能できる『否否三杯(いやいやさんばい)』で、和食の概念が変わる【青山一番街】

2018年11月15日
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食材の個性を堪能できる『否否三杯(いやいやさんばい)』で、和食の概念が変わる【青山一番街】
Summary
1.食材のうまみを楽しめる、和食店『否否三杯』が「青山一番街」に誕生
2.シンプルだからこそ白ご飯もうまい! 吟味した3種のブレンド米を釜炊きで提供
3.NYで活躍するフードプロデューサー中東篤志さんが監修、食材の個性をシンプルに味わえる料理が魅力

注目の「青山一番街」に誕生した、和食店『否否三杯』

2018年9月7日にグランドオープンした「青山ビルヂング」地下1階のレストランフロア「青山一番街」。気鋭の料理人が腕をふるう個性的な7店舗が集まっているが、中でも注目されているのが和食店『否否三杯(いやいやさんばい)』だ。

ユニークな店名は、「否否(いやいや)~」と言いながら3杯、4杯とご飯やお酒が進む料理を提供したいという想いを込めたもの。

入口付近(写真上・左)には、1人でも気軽に飲める屋台のような雰囲気のビッグテーブル。奥のソファ席(同・右)のテーブルは、木や金属など様々な素材の質感を生かした美しいデザインとなっている。

キッチン前カウンター(写真上)では、厳選された食材を炭火で焼き上げる様子や、ずらりと並べられたおばんざいを眺めながら食事やお酒を楽しめる。40席しかないのに、それ以上の広がりを感じさせる空間デザインだ。

日本の食のよさを再発見できる店を作りたかった!

料理の監修をしているのは、京都の名店『草喰(そうじき) なかひがし』の主人・中東久雄さんを父にもち、ニューヨークと日本を拠点に“日本の食”にまつわる事業を展開している中東篤志さん(写真下)。

中東さんは2歳になる頃から家族で台所に立ち、ごく自然に父親が持つ和食の哲学の薫陶(くんとう)を受けて育った。

「泣いていても、包丁を持たせるとピタッと泣き止む子供だったそうです(笑)」と中東さん。しかし成長した中東さんが目指したのは料理人ではなく、バス釣りのプロ。高校卒業後に渡米し、車にガスコンロを積み自炊しながら、各地の大会を渡り歩いたそう。

その先々で和食を作り、周りに喜ばれたことから自らのバックグラウンドを再確認し、料理人になることを決意。

ニューヨークの精進料理店『嘉日(Kajitsu)』で副料理長兼GMを務めるうち、「日本の飲食文化を総合的にもっと多くの人に伝えたい」と思うようになり、会社を設立した。

「味付けをおいしくし過ぎないよう、気を付けている」

中東さんが心がけているのは、意外なことに「おいしくしすぎない」ことだという。

和食というとだしやうまみにフォーカスされがちだが、本来の料理とはだしや醤油の味ではなく、食材の持つ個性を壊さずに味わうものだと考えているからだ。

だから「何を食べているのかがはっきりわかるシンプルな料理」であることを、何よりも重視している。

その意志を強く実感できるのが、「雑魚も食べられる大根の炊いたん」(写真上)。わずかな塩、ほんの少々のみりんと日本酒のみで調味し、煮干しといっしょに炊いただけで、「あるかなきか」と言いたいほどの淡い味付けだ。

だがその奥にあるものを探るため、神経を研ぎ澄まして味わううち、今まで気づかなかった大根の持つ繊細な苦み、甘み、香りがくっきりと浮かび上がってくる。「大根って、こんな味だったのか!」「今までの煮物は大根ではなく、調味料を味わっていたのかもしれない」と衝撃を受ける味だ。

厳選した米を使った“おいしすぎない”白ご飯だから、おかわりしたくなる

「おいしくしすぎないよう気を付けている」のは、白ご飯も同じ。一口食べて甘みを強く感じるような白飯は、すぐに食べ飽きるので、「うまみを感じつつも、すっと入ってくるものがよい」(中東さん)と考え、ずっと食べ続けていたくなるすっきりとした甘みを追求。

京都で米料亭も営む老舗『八代目儀兵衛(ぎへえ)』から、味の個性やバランスを吟味し3種類をブレンドした米を取り寄せている。そのブレンドも、季節ごとに見直すというこだわりようだ。

キッチンには昔ながらの大きな羽釜(写真上・左)が2口あり、ランチタイムはこちらのご飯がいただける。

夜は、「つどつど炊き上げる釜炊きご飯」(同・右)というメニュー名で卓上用の小型羽釜で炊き上げたものが楽しめ、こちらも人気を博している。

素材のうまみが引き出された「鴨の炭火焼き」

「鴨の炭火焼き」(写真上)は、塩と山椒入りの米油でマリネした鴨肉を炭火で焼き、仕上げに乾燥醤油をふりかけている。

焼き上がりの香ばしさに山椒の清涼感ある香りが加わり、肉汁に溶けた乾燥醤油が、鴨肉本来の甘みを引き出す絶妙なアシストを発揮している。

付け合わせの大根おろしには、肉をカットした時に出た肉汁を吸わせている。「食べられるものはすべて食べきりたい」と中東さんはいう。

もうひとつの付け合わせは、黄色人参をホイルに包み、炭の中で焼いたもの。真っ黒に焦げた部分をこそげ落とすと、鮮やかな黄色があらわれる。イモのようにホクホクで、調味料がいらないほど豊かな甘みに驚く。

“日本の酒”を幅広く揃え、酒器にも肴にも遊び心がたくさん

お酒は、全国各地から集めた日本酒やワイン、ウィスキーなど30種類ほどが揃う

日本酒を入れた片口(かたくち:酒などをそそぐ注器)は、満杯になるとあふれる。盃を下に置いておけば、自動的に盃を満たす遊び心にあふれた演出が楽しい。

「炙り香味味噌」(写真上)は、白味噌、粒味噌にミョウガ、シソ、ショウガ、ネギ、松の実などを刻んだものを混ぜ、杉板に塗り軽く焼いている。添えの生野菜にディップしてもいいが、なめ味噌(食品として食べる味噌)にすると日本酒の肴にぴったりだ。

ランチタイムは、一汁三菜の定食を提供

ランチタイムでは、あじフライや炭焼きの豚や魚の主菜1品に、自家製すくい豆腐、京のおばんざい1種、否否三杯オリジナルブレンド米の白ご飯、具だくさんの味噌汁付きの定食などを提供している。

味噌汁は、野菜だけでだしをとり、京都の味噌店『京都御苑東しま村』から取り寄せている特別醸造白味噌を使用。

「あじフライ定食」(写真上)には刺身用のアジを使用しているので、一般的なアジフライの形ではなく棒状。骨はもちろんヒレも落として食べやすくして、細かくふるったパン粉をつけて揚げている。

ソースは味噌とゴマ入りのマヨネーズ。こだわりを尽くしたランチを楽しめる。

「世界中の贅沢なもの、おいしいものが何でも手に入る東京だからこそ、逆にシンプルに食材にフォーカスして、その食材が本来持っている味を実感してもらえる料理を出したい」(中東さん)。

だしや醤油を使うのが和食という概念が変わるだけでなく、これからの人生での“食”に対する向かい合い方までも大きく変わりそうな店だ。


【メニュー】
雑魚も食べられる大根の炊いたん 750円
つどつど炊き上げる釜炊きご飯 850円
鴨の炭火焼き 2,800円
炙り香味味噌 650円
あじフライ定食(昼のみ) 1,300円(税込)
日本酒 90ml/600円~
※価格はすべて税別
※夜はサービス料5%

否否三杯(いやいやさんばい)

住所
〒107-0061 東京都港区北青山1-2-3 青山ビルヂングB1
電話番号
03-3470-1838
営業時間
11:30~14:30(L.O.14:00)、17:30~(L.O.22:30)23:00
定休日
日曜日 祝日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/e9c57e890000/
公式サイト
https://iyaiyasanbai.tokyo/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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松浦達也
編集者/ライター/フードアクティビスト