至福のひとときを過ごす、セカンドハウスのようなフレンチレストラン
おいしい料理はつかの間、癒やしに満ちた非日常の時間へと誘ってくれる。そこに寄り添うサービスがあれば、なおさらだ。
そんな理想を叶えてくれる一軒が、大人の街・銀座に誕生した。
2018年8月にオープンした『fits GINZA(フィッツギンザ)』だ。
世界的人気を博したレストラン『エル・ブジ』(2011年閉店)や都内のフレンチなどで修業したシェフと、青山や銀座のファインダイニング(最高級レストラン)でキャリアを積んだ店主による、極上の料理とサービスがもたらす至福のひととき。思わずセカンドハウスのように使いたくなるレストランだ。
場所は銀座4丁目交差点から道を一本入ったところのビルの地下にある。スタイリッシュなロゴが印象的な扉を開くと、地下とは思えないメゾネット形式の広々とした空間が広がる。
白を基調とした内装にナチュラルな木製家具を合わせたインテリアは、まるで北欧のモダンフレンチレストランのようだ。
開放的な1階に比べ、2階は秘密の小部屋のようで個室感覚で使える。2つのタイプの空間を用途に合わせて使い分けできるのだ。
目指すのは、スタイルもジャンルも超えた”自由に楽しめる店”
シェフの角 知憲(すみ とものり)さん(写真上)は、『オテル・ドゥ・ミクニ』の三國シェフのドキュメンタリー番組に感銘を受け、シェフの道を志す。そして都内のフレンチレストランで修業している時、雑誌に特集された、世界一予約が取れないといわれたスペインのレストラン『エルブジ』の料理に衝撃を受け、すぐに働きたいとメールを出したという。
斬新な料理で、当時、世界中の注目を集めていた『エルブジ』。働きたいとの依頼が殺到しており角シェフもすぐに断られてしまった。それでも諦めずに3年間メールを出し続け、ついに念願の修業がかなったという。
それまでフランス料理一筋だった角シェフにとって、『エルブジ』のキッチンは何もかもが新しく、驚きの連続だったという。そこでの修業でフレンチの枠にとらわれない発想を身につけ、スペインや日本のレストランでキャリアを重ねていった。
店主でありソムリエも務める矢作 太一(やさく たいち)さん(写真上・左)は、 “感動のサービス”で知られる『カシータ』でキャリアをスタート。その後、銀座にある国内最大級のワインセラーを持つ『RESTAURANT DAZZLE(レストラン ダズル)』に移り、シェフソムリエを務めながら、サービスだけでなくマネジメントなどレストラン経営に関するあらゆることを学んだという。
『カシータ』や『レストラン ダズル』で同僚だった二人。矢作さんが角シェフの腕に惚れ込み、タッグを組んで“食に関して自分の好みもある程度知っているお客様に、スタイルもジャンルにもこだわらず自由に楽しんでもらえる”店を目指して、『フィッツギンザ』のオープンとなった。
旬のおすすめ食材から生まれる、絶品オーダーメイドアラカルト
メニューはアラカルトと月替わりのコースが用意されている。アラカルトはクラシックなフレンチがメインとなり、コースはモダンフレンチと、それぞれ違うコンセプトを持つ。
ユニークなのはアラカルトのスタイルだ。旬に合わせて内容が変わるメニューも用意されているが、ショープレートに盛り合わせた約10種類の“その日のおすすめ”から食材を選び、調理法やボリュームなどを好みにできるオーダーメイドスタイルがウリだ。
旬のおいしいものを目の前に、スタッフと会話しながら今日の気分に一番あった料理を決めていくのは、なんともワクワクするひとときだ。
この日の食材から、アラカルトを数点ご紹介。
前菜は「タスマニア産サーモン 低温調理 黒胡椒とサワークリーム」(写真上)。35℃という低温でサーモンを調理することで、生では味わえないしっとりとした食感が生まれる。
この食感を楽しむために、身は厚切りにカット。黒コショウをピリッと効かせたサワークリームが淡白なサーモンの味わいを引き立てている。タスマニアサーモンの、ほんのり脂ののったおいしさを存分に味わえる一皿だ。
魚料理は「穴子の鉄板焼き サフランと生姜 柿」(写真上)。穴子は生姜と酒で蒸してから鉄板で焼くことで、中はふんわり、外はカリっと香ばしく仕上げられている。添えられているのは、アマレットとシロップに漬け込んだ柿と、生姜とオマールのだしでコクを出した白ワインソース。
和食を思わせるシンプルな焼き穴子と、リキュールの風味が効いた甘い柿は、一見意外な組み合わせだが、合わせて食べるとその相性の良さに驚かされる。
シグネチャーは鴨料理。絶妙なバランスの火入れにうっとり
肉料理のメインに選びたいのは、『フィッツギンザ』のシグネチャー(看板メニュー)、鴨料理だ。この日用意されていたのはフランス、シャラン産と京都産の鴨。シャラン産は血を抜かずに処理するため、色が濃赤色で鉄分の風味が強い濃厚な味わいが特徴。一方、京都産は香りも優しく、肉質が柔らかい。
ご紹介するのは「シャラン鴨のロースト ソースポワブラード フォアグラバター」(写真上)。ローストした鴨に、鴨のだしと赤ワイン、黒コショウなどを合わせた甘酸っぱいソースにフォアグラバターでコクを出したものが添えられている。
外側がこんがりとローストされた鴨は、内側はロゼ色でうっすらと肉汁がにじんでいる。ひと口食べると、ねっとりした舌触りで驚くほど柔らかい。角シェフの絶妙な火入れのなせる業だ。
フォアグラバターを加えることで複雑味を増したソースは、濃厚な鴨の味に負けていない。フルボディの赤ワインを合わせたくなる、味わい深い一皿だ。
角シェフの個性を生かした、五感で楽しむモダンフレンチコース
食べ手が自由に楽しむアラカルトに対して、コースは小籠包や白玉粉などを使った、角シェフのオリジナリティあふれるメニューで構成されている。
コースの中の一品「三重産 真ハタのソテー 春菊のソース」(写真上)は、アーティスティックなビジュアルも楽しめるメニュー。真ハタには、アラカルトではバルサミコ酢ベースのソースを合わせているが、コースでは和の食材、春菊の香りと苦みを生かしたソースと共にいただく。
見た目も美しいグリーンのソースは、野菜の持ち味がそのまま生かされ、上品な真ハタの味わいにぴったりだ。
大人のワガママにぴったりフィット! 日常使いもできるレストラン
本数は少ないが、ソムリエ経験の長い矢作さんが厳選したワインのラインナップも見逃せない。
フランスとイタリアを中心に150種類ほどを、ビンテージや飲み頃の年代にこだわってそろえている。
昨今はどこもグラスワインに力を入れているが、同店も赤・白を各6種、スパークリング・ロゼ・甘口を各1種の計15種類を用意。特筆すべきは、コルクを抜かずにワインを注ぐ器具を使うことで、通常はグラスワインにはならないビンテージワインもいただけること。なかなかお目にかかれない極上ワインをバイザグラスで心ゆくまで堪能したい。
「角シェフのキャリアを生かしつつ、新しい価値観を作っていきたい」と語る矢作さん。極上の料理と心からくつろげるサービス。非日常というレストランのベースをきちんと整えた上で、訪れた客に自由に遊んでいただこうという趣向だ。
何かおいしいものが食べたいという気分でふらりと立ち寄ってみたり、大切な人のおもてなしに利用したりと、大人のワガママにぴったりフィットする癒やしのレストラン。
さて、今宵はどんな一皿を注文しますか。
【メニュー】
アラカルト(2人前)
タスマニア産サーモン 低温調理 黒胡椒とサワークリーム 2,300円
穴子の鉄板焼き サフランと生姜 柿 2,000円
シャラン鴨のロースト ソースポワブラード フォアグラバター 3,800円
コース
今月のコース 7,500円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です。
※テーブルチャージ1,000円別途
fits GINZA(フィッツギンザ)
- 電話番号
- 03-6264-5588
(電話予約受付時間 14:00~22:00)
- 営業時間
- 18:00~23:00(L.O.22:00)
- 定休日
- 無休
- 公式サイト
- https://fits-ginza.com/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。