焼きのワザ、伝統のたれで味わう「伊達鶏」の焼鳥が至極の味! 名店のDNAを継ぐ荒木町の『焼鳥 多喜』

2018年12月11日
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焼きのワザ、伝統のたれで味わう「伊達鶏」の焼鳥が至極の味! 名店のDNAを継ぐ荒木町の『焼鳥 多喜』
Summary
1.荒木町で21年間も愛され続けた焼鳥店『鳥こう』跡にオープン
2.店主は『鳥よし』で16年間、修業を積んだ実力派
3.店主の焼きの技がさえる焼鳥はもちろん、「きじ丼」も満腹でも箸が止まらない

荒木町の焼鳥の名店『鳥こう』跡にオープンした実力派

かつて花街だった記憶を残すかのように、通りにも粋な風情が漂う東京・荒木町。新旧の魅力的な飲食店が立ち並ぶ一角に2018年4月16日、新たにオープンしたのが、『焼鳥 多喜』だ。

席数はカウンター18席。ヒノキのカウンターは新店らしく目にまぶしい白さだが、店全体にはなぜか歴史を重ねた店特有の落ち着いた風情が漂う。

それもそのはず、実はこの場所では21年間、街の名店として愛され続けてきた『鳥こう』が営業していた。大物政治家もお忍びで通う“知る人ぞ知る”店だったが、2018年3月末日、惜しまれつつ閉店した。

『焼鳥 多喜』の店主・滝澤文康さんは、やはり人気焼鳥店として知られる『鳥よし』で16年間、修業を積んだ実力派。独立して店を持とうとしていた矢先に、『鳥よし』店主から「『鳥こう』があった場所で店をやってみないか」と話があったという。

『鳥こう』店主と『鳥よし』の店主はかつて、創業50年以上という六本木の名店でともに研鑽を積んだ兄弟弟子。その縁から『鳥よし』の店主は、『鳥こう』がこのまま消えてしまうのを惜しんだのだ。

滝澤さんはその気持ちを汲み、『鳥こう』跡地での開業を決意したという。現在、2人の若い弟子とともに滝澤さんが厨房に立ち、『鳥こう』時代と同じようにおかみさんが接客を担当している。お客さんは圧倒的に、『鳥こう』時代からの常連が多いという。

たれの味に秘められた、兄弟弟子の証

値段のない白木のメニュー額も、『鳥長』の伝統。初めて訪れる人は値段が書かれたメニューがないのが不安かもしれないが、1本200円からと驚くほど良心的な価格だ。

カウンター前の冷蔵ケースにその日に焼く食材を並べるのは、『鳥長』から『鳥よし』『鳥こう』に受け継がれているスタイル。ハリとツヤで輝いている肉の美しさから、新鮮さが伝わってくる。

「最初は『鳥よし』で継ぎ足してきたたれをわけてもらうつもりでしたが、『鳥こう』に残されていたたれの材料は『鳥よし』とほぼ同じ配合でした。ですからたれを持ってくる必要がありませんでした」(滝澤さん)。

突き出しとして、「糠漬け」と「黄身おろし」(写真上)が出るのも『鳥長』から続く伝統。「『鳥よし 赤坂店』の店長は、『うちの糠床を持っていってもいい』と言ってくれたのですが、おかみさんの糠漬けのファンが多いので、おかみさんの漬け床を引き継いでいます」と滝澤さん。

唯一、変えたのは鶏肉。滝澤さんは「今一番おいしいと思っている」東北産の「伊達鶏(だてどり)」を使用している。

「伊達鶏は、焼きのストライクゾーンが広い。焼きが浅くても深くても、それぞれのおいしさがある。また脂もあっさりしていて、鶏の脂独特の臭いがないから、鶏が苦手な人でも抵抗なく召し上がれると思います」(滝澤さん)。

クリームのようにとろけるレバーで、焼きの技を堪能!

食べたい部位を頼むこともできるが、基本はおまかせで、満腹になったら伝えるシステム。

こちらは「ねぎ」と「かしわ(もも肉と胸肉)」(写真上)。厚みのあるもも肉は、伊達鶏の歯切れのよさを最もはっきりと感じられる部位だろう。鶏臭さがなく、力強く品のいい味わい。しっとりジューシーな焼き加減が絶妙だ。

「つくね」と「ちぎも(レバー)(写真上)。つくねは軟骨入りで、舌で押すだけでほろりとくずれる柔らかさながら、肉のうまみが凝縮されている。レバーは、クリームとパテのちょうど中間くらいの、絶妙な火の通し加減。口中でたれと融合すると、濃厚なうまみが爆発する。「レバーが苦手な人でも、うちのは食べられるという人がいます」と滝澤さんが言うのも納得だ。

焼きの技と同時に感嘆したのが、たれの味のバランス。たれ味の焼鳥が続くと途中で飽きてしまうことがあるが、こちらの店のたれはコクがあるのにさらりとしていて、何本でも食べ続けられる。甘みと醤油味のバランスが絶妙なのだ。

野菜でも光る、“焼き”の技

焼鳥をひととおり味わったところで、季節の野菜が登場。この日は新物の筍だ。

野菜はすべて築地の仲卸『タケイ』から、国産の一級品を選び抜いて仕入れているという。

炭と見分けがつかないほど真っ黒に焦がしたのは筍(写真上)。焦げた部分をむいていく。

こちらが完成した「筍」(写真上)。かんだ瞬間、その甘みとやわらかさに目をみはる。とくに根本部分が柔らかく、甘みも複雑で深い。添えられた塩を付けるのも忘れてかぶりつく。

「手羽先」と「銀杏」(写真上)は塩で。手羽先は食べやすいよう、ていねいに開かれている。仕込みの手間を惜しまないこうしたていねいさも、老舗のDNAなのだろう。「開かない方が肉汁がつまっておいしいのですが、開いたほうが短時間で焼きあがるのでふっくらやわらかく仕上がるし、何より食べやすいから」(滝澤さん)。

常連が必ず頼む絶品「きじ丼」を忘れるべからず!

焼鳥は、腹八分目でストップするのがおすすめ。常連が必ず食べるという、シメの「きじ焼き丼」(写真上)をさらにおいしくいただくためだ。

もも肉1枚をそのまま炭火で焼き、厚めにスライスする。断面からあふれる肉汁のジューシーさ、なめらかな食感とやわらかさは、焼鳥とは別趣のおいしさ。

その肉を切り海苔を敷いた熱々のご飯の上に乗せ、たれをかけるのだからたまらない。上品な伊達鶏の脂と絶品のたれがからまったご飯は、たとえ満腹でも箸が止まらない極上の味。

焼鳥は今、かつてないほど進化し、さまざまなスタイルが派生し、それぞれに支持されている。だからこそ、過剰な演出もなく、目新しいアレンジもないこちらの店の飾り気のないまっとうさが、胸を打つ。それは、差し出される焼鳥の1本1本に、誇り高い老舗のDNAが息づいているせいかもしれない。

【メニュー】
かしわ 200円
ねぎ 200円
つくね 200円
ちぎも(レバー) 200円
筍 ※時価 
手羽先 400円
銀杏 400円
きじ丼 1,400円
日本酒 600円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です

焼鳥 多喜

住所
〒160-0007 東京都新宿区荒木町9-22 菅沼ビル2F
電話番号
03-3353-5415
営業時間
17:30~23:00
定休日
日曜・祝日の月曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/jgn02kav0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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佐川 碧
ライター
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編集者/ライター/フードアクティビスト