広島県の名産づくしのディナーが至極の味! 海外レストランでの修業をサポートする「シェフ・コンクール」

2019年01月20日
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広島県の名産づくしのディナーが至極の味! 海外レストランでの修業をサポートする「シェフ・コンクール」
Summary
1.全国唯一! 海外レストランでの修業を支援する広島県の取り組み
2.広島の名産づくしのひと皿が披露される「ひろしまシェフ・コンクール」
3.広島県期待の実力派シェフ一挙公開!

若手シェフをサポートする「ひろしまシェフ・コンクール」とは?

いま広島県の取り組みが興味深い。行政機関が「著名なシェフに地産食材のPRを依頼する」という取り組みは全国に多々あるが、広島県は「35歳以下の才能ある若手シェフの発掘と、そのキャリアアップのために投資し、未来の食文化を作っていく」という取り組みを2014年からスタートさせている。

具体的には「ひろしまシェフ・コンクール」を年に1回開催し、成績優秀者には、海外の星付き有名レストランでの修業を、広島県により金銭その他により支援する仕組みだ。行政が「料理人は県の財産」としてその価値を称え、若手料理人の修業に投資する取り組みは、全国で唯一だそうだ。

海外での修業を終えて帰国した後は、広島県の主催するレストランイベントなどの活躍の場を斡旋される。写真は広島県尾道市の国宝「浄土寺」を二夜限りのレストランに変身させ、海外より有名レストランのシェフを招聘して「ひろしまシェフ・コンクール」の成績上位者と共に広島県産食材を使ったディナーを作るという取り組みだ。

本稿では2018年秋に行われた同イベントと共に広島県期待の若手シェフたちを紹介していきたい。

浄土寺は6世紀に聖徳太子により開かれたと言われる。庭園には京都伏見城で豊臣秀吉が愛用した茶室「露滴庵」が移築されており、これは「最後の織部好み」とも称えられている。しんとした山の宵闇に虫の音をBGMとしながら、風情と共に味わう本ディナーは日本特有の「わびさび」を感じることのできる食事体験だった。

若手シェフとの交流のために招聘されたのは、フランス・ヴィエンヌ地方にある二つ星レストラン『ラ・ピラミッド』のオーナーシェフ、パトリック・アンリルー氏。こちらの名店は1960年代にヌーヴェル・キュイジーヌを産んだとも言われている。なぜならポール・ボキューズ氏やトロワグロ兄弟、アラン・シャペル氏らが、当時のこの店のオーナーシェフ、フェルナン・ポワン氏に師事し多大なる影響を受けたからだ。もちろんパトリック氏もその文脈を受け継ぐシェフだ。

将来期待のシェフがふるまう豪華メニューを一挙公開

では、広島県を代表する若手シェフと、本ディナーで供された料理を紹介しよう。

赤井 顕治(あかい けんじ)

2015年度「ひろしまシェフ・コンクール」成績優秀者。広島県の支援を受け、フランスで唯一の三つ星女性シェフ、アンヌ=ソフィ・ピック氏の『ラ・メゾン・ピック』で修業。赤井さんは「『ラ・メゾン・ピック』では一生懸命働き、また一生懸命楽しみ、最後には肉の火入れを任されるまでになりました。技術だけでなく、チームとのコミュニケーションや人間関係も学び、それらは大きな財産となっています。『ラ・メゾン・ピック』での経験が私を形作るのに大きく役立ったことは間違いありません。」と語る。

赤井さんは、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35 2017」で優勝したことで一躍有名となった。この「RED-U35 2017」への出場申込みをした時、まさに彼は『ラ・メゾン・ピック』で修業中だった。

広島県大崎上島町産塩田育ちのエビ 季節最後のスパイシーなトマトコンフィのバルサミコビネガー風味、シェーブルチーズのムースとライススフレを添えて

国内唯一のクレールオイスターを手掛ける大崎上島ファームスズキの車海老を軽くポシェし、日本で流通していないヴィエンヌ地方のシェーブルチーズをソース代わりに使用。散らされたマイクロハーブは広島のスーパースターファーム『梶谷農園』のもの。

「こういった組み合わせや盛り付けは一般的な日本人の発想とは異なるもので、フランス人シェフだからこその感覚だと思いました。私の感じる“おいしい”とは異なりましたが、こういう世界観もあるのだと勉強になりました。そして料理以上に、パトリックシェフと一緒に仕事をして感銘を受けたのは“仕事に取り組む姿勢”です。著名なシェフであるにも関わらず、朝早くから厨房に来て、私達と仕込み作業を一緒にする姿に『このシェフはとても真面目で仕事に真摯な人なのだな』と思いました。私はそういうシェフが好きですし、自身もそうありたいと思っています。シェフと一緒に仕事出来た事を嬉しく思っています。」と赤井さんは語る。

RED-U35 優勝メニュー「私たち~生きるということ」

現在、赤井さんは、2019年に広島県の宮島口駅近くに自らのレストラン『AKAI(アカイ)』のオープンを準備中。今後の活躍が注目を集める料理人の1人と言えよう。

小竹 隼也(こたけ じゅんや)

2014年「ひろしまシェフ・コンクール」成績優秀者。広島県の支援を受け、フランス・モントルイユ村の『ラ・グルヌイエール』で修業。オーナーシェフのアレクサンドル・ゴティエ氏はフランスのグルメガイド『Gault & Millau(ゴ・エ・ミヨ)』で、2016年にChef of the year(今年のシェフ賞)を受賞した実力派シェフだ。

「シェフの素晴らしさは、地元の生産者の食材やアイテムを料理に乗せて世界に発信していること。モントルイユは小さな村ですが、その発信力はフランスの地方の中でもトップクラスだと思います。料理人というカテゴリーの中だけで仕事をするのではなく常に進化を求め、他の職種などを見たとき何か一緒にできないかと常に考えることの大事さを学びました」と小竹さんは語る。

比婆牛にグリオッティーヌとプルーンのコンポート添え キャロットグラッセ、スパイシーなソースを添えて

小竹さんはアレクサンドルシェフの折り紙付きの実力派だけあって、ストーブ前でメインディッシュの肉料理を担当した。広島県庄原市(旧 比婆郡比和町)は、黒毛和牛の日本最古のルーツと言われる「岩倉蔓」を造成した名牛の産地。「比婆牛」はその血統を受け継ぐブランド牛で、丁寧にアロゼしながら焼き上げられたフィレ肉は、繊細な中にも深いうまみが感じられる肉質だ。

小竹さんは「パトリックシェフの料理は、僕がフランスで関心を持ってきた料理とは正反対で、非常にクラシックな料理。仕込みの段階からフランスを匂わせてくれる料理で、大変勉強になりました。中でも肉料理の付け合せの人参のグラッセは個人的にとても好きです」と語る。

アレクサンドルシェフが小竹さんに贈った折り紙

現在、小竹さんは仲間と共に新しいレストランを構想中。『ラ・グルヌイエール』直系の味を広島で味わえる日が待ち遠しい。

星本 敏男(ほしもと としお)

2015年度「ひろしまシェフ・コンクール」成績優秀者。広島県の支援を受け、フランス・ルーアン地方の二つ星レストランのシェフ、ジル・トゥルナードル氏の『ジル』で修業。ジルシェフは20代で『タイユヴァン』のシェフのポストにオファーされるが、それを固辞して故郷にレストランを開店し、ルーアン地方を代表する名店にまで築き上げた実力派だ。

「ジルさんは有名なシェフですが、毎日必ず厨房で魚料理を担当します。新作料理を考えて、良いものができた時に、調理場のスタッフ全員に、トレボン(おいしい)! トレジョリー(美しい)! と言いながら周り、その後サービススタッフにも全員に見せてまわるシェフの姿がとても素敵でした。私はジルシェフのスタイルにとても影響を受けました」と星本さんは語る。

瀬戸内産アコウをサフラン・パルメザン風味のリゾットに添えて、広島県産レモン味のオイルと季節のジャルダン野菜とともに

魚料理を得意とするジルシェフに師事しただけあり、星本さんも魚料理を担当した。「浄土寺」が位置する尾道市では「尾道あこう祭り」が開催されるほど、アコウ(キジハタ)は地元の名産品。それを上火だけでミキュイに仕上げ、同じく瀬戸内海の島々で収穫され、生産量日本一を誇る広島県産レモンによって全体の味わいを引き締めている。王道でクラシックな料理構成だが、それだけに広島県産食材の魅力がストレートに伝わる一皿だ。

「私の担当した魚料理では、アコウを薄くスライスしたものをバラのように仕上げたもので、塊の魚の火入れに比べ、繊細な仕上がりが必要で、注意した部分です。今回のイベントではパトリックシェフの料理に対する考え方を学ぶことができ、また、チームの大切さを改めて感じ取りました」(星本さん)。
 
星本さんは現在、広島県の地元・福山ニューキャッスルホテルのメインダイニング『フレンチレストラン ロジェ』の料理長を務め活躍中。星本さんのお料理を味わいたいなら、ぜひ訪れてみて欲しい。

「フレンチレストラン ロジェ」
住所:広島県福山市三之丸町8-16 福山ニューキャッスルホテル
電話:084-922-2140
URL:http://www.new-castle.net/restaurants/f_rosier/

向井 大樹(むかい たいき)

2014年度「ひろしまシェフ・コンクール」成績優秀者。広島県の支援を受け、フランス・アルザス地方の二つ星、パスカル・バスチャンシェフの『オーベルジュ・デュ・シュヴァルブラン』で修業。「バスチャンシェフの料理はクラシカルなものに重点を置きつつも、シェフの感性を散りばめたガストロノミー。そんな料理に惹かれただけでなく、シェフの人間性、良い料理を提供するには良いチームであることを改めて感じたレストランです」と向井さんは語る。

大黒神島産牡蠣の味覚発見6種類の味

牡蠣と言えば、広島県の名物の代表格。広島県大黒神島(おおくろかみしま)は無人島であるため、周辺海域にノロウィルスの感染経路となる生活排水が存在しない。加えて海水の塩分濃度が高くノロウィルスが生息しにくいので、大黒神島産の牡蠣は安全に生食できる。これを6種のアプローチにより牡蠣の味わいを表現している。ビネガーとエシャロットのスタンダードから始まり、西洋わさびのムースと海苔、カリフラワーとカレーのムース、リンゴでマリネ、サモサ風など、特に面白かったのは醤油やオイスターソースを染み込ませたタピオカで、クラシックの中にも新しいものを取り入れようとするパトリックシェフのモダン・キュイジーヌの姿勢が見て取れた。

向井さんは現在、「リーガロイヤルホテル広島」で研鑽を積んでいる最中だ。30代に向けて、自分の進むべき道を模索中とのこと。

「リーガロイヤルホテル広島」
住所:広島県広島市中区基町6-78
電話:082-502-1121
URL:https://www.rihga.co.jp/hiroshima/restaurant

山本 幸雄(やまもと ゆきお)

2016年度「ひろしまシェフ・コンクール」成績優秀者。広島県の支援を受け、ブルゴーニュを代表する三つ星レストラン、エリック・プラシェフの『メゾン・ラムロワーズ』で修業。「フランスではいくつかのレストランで修業をしましたが、私はエリックシェフに最も強い影響を受けました。私の料理観は、フランス料理のテクニックを使って、瀬戸内海の食材と季節感をシンプルに表現することを大切にしています」と語る。

本当のレモンづくし

山本さんは、その他の前菜類とデセールを担当した。先述した広島名物であるレモンを使ったアヴァンデセールで、レモンのグラニテが乗ったレモンムースの中にレモンのスポンジやレモンのコンフィなどが多層に隠されている。アシッドとアシディティとの違い、つまり酸っぱいと酸味の違いが一皿の中で明確になっている逸品。食べながら生搾りのレモン果汁を口に含むという遊び要素もあり、楽しめるデセールだ。

山本さんは現在、広島県福山市で唯一の星付きフランス料理店『ル・ミロワール』で、オーナーシェフの中山孝雄氏の右腕として活躍中。中山シェフが不在時には厨房を預かるほどに信頼を置かれ、中山シェフ曰く「フランス修業を終えて帰ってきた山本が加わり、また新しい『ル・ミロワール』の味を創っていけると思う」と言わしめるほどだ。福山市を訪れた際には、ぜひ『ル・ミロワール』に足を運んで頂きたい。

「ル・ミロワール」
住所:広島県福山市宝町3-20 ダイアパレス宝町1F
電話:084-922-5822
URL:http://le-miroir.jp/



このようにしてフランスから招聘したシェフのエッセンスは、広島県の若手シェフ達の文脈に組み込まれている。こうした広島県の食文化への投資が、5年後10年後の将来にどのように実るのか。未来を想像するとワクワクする。

文・構成/増井真太

▼本件に関する問い合わせ先
広島県商工労働局 ひろしまブランド推進課
電話:082-513-3444
Eメール:syobrand@pref.hiroshima.lg.jp

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ライター&編集 料理・酒・旅探求人