メディア初掲載! 大人のワンダーランド立石最後の真打、あの西村さんの『ブンカ堂』がいよいよオープン

【連載】幸食のすゝめ #082 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2019年01月16日
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メディア初掲載! 大人のワンダーランド立石最後の真打、あの西村さんの『ブンカ堂』がいよいよオープン
Summary
1.生まれ育った街、立石に開店。店名『ブンカ堂』は、オモチャの街・立石に実在した玩具店の名前
2.下町ならではの深い絆! 暖簾はもつ焼きと煮込みの老舗『宇ち多゛』の三代目朋一郎氏から贈呈
3.自然なワインと日本酒など選び抜かれた酒、力強く洒落たアテと、最上のホスピタリティ

幸食のすゝめ#082、玩具の街には幸いが住む、立石。

2018年暮の葛飾区立石、クリスマスを目前にした12月の22日。
今や開発で半分の大きさになってしまった「呑んべ横丁」がある側の出口から葛飾区役所に抜ける区役所通り商店会に、たくさんの人たちが集っていた。

その日の午後3時にいよいよオープンすることが決まった、西村(浩志)さんの独立店『ブンカ堂』の開店を今か今かと待ち詫びる人たちだ。

「今、何やってる?一緒にやんない?」、そんな電話のひと言から始まった立石のヌーヴェルバーグ『二毛作』の物語。
立石仲見世で30余年以上続くおでん種専門店『丸忠蒲鉾店』の二代目日高(寿博)さんの電話の相手は、もう1人の主役、西村さんだった。
地元で育ち、髪を切りに行く場所も一緒だった2人は、酒という共通の趣味で結ばれ理想の店造りに邁進して行く。
小脇に抱えたチャック・ベリーとマディ・ウォーターズのレコードで結ばれた、ローリングストーンズのミックとキースみたいに、2人の距離は急速に縮まって行った。

最初は閉店後のおでん屋の店先に、椅子とテーブルを出し、缶ビールやコップ酒を出すだけだった。
でも、隣りの店舗が空いたことをきっかけに、2人の夢の城がとうとう形になって行く。
2007年、『二毛作』(現在の『おでん丸忠』)のオープンだ。
西村さんが全国の酒蔵を訪ねて集めた、自然に作られた貴重な日本酒。自然派ワインの祭典「フェスティバン」などのイベントに積極的に参加して、先輩たちの薫陶(くんとう)の中、日高さんが集めた自然派のワイン。

2人が好きな酒しか置かない『二毛作』は、「梅割り」や「(焼酎ハイ)ボール」など、甲類焼酎の街だった立石に全く新しいファン層を獲得。デート中のカップルや、女性同士のグループなど、立石では珍しかった客たちも目立つようになった。
やがて2015年に、日高さんが少し離れた京成線の線路脇に新しい『二毛作』をオープン。
店は『おでん丸忠』と改名し、西村さん主宰で再スタートする。

彼のソフトでお洒落なムードと豊富な酒の知識、隣りの『丸忠蒲鉾店』できたてのおでんで、店はますます人気店になって行く。

「お酒のイベントにも、もっと積極的に参加したかったし、地方から同業者の方が訪ねて来てくれたら、もっと一緒に色んな場所を紹介したかった」。
だんだん雇われの身でいることに疑問を抱き始めた夏の終わり、意を決して店を卒業する。
自分だけの夢の城を、生まれ育った立石の街のどこかに完成させるためだった。

夢の城の名は『ブンカ堂』、オモチャの街立石に実在した玩具店の名前だ。もう30年以上前に廃業した『文化堂』は、西村さんの祖父母、そして両親が営んでいた店。
今もセルロイド工業発祥記念碑や『タカラトミー』の本社がある立石は、オモチャの街として栄え、キューピー人形などたくさんのオモチャを国内外に送り出していた。
西洋への憧憬に溢れた立石のオモチャは、まさに「文化」そのものだったに違いない。
できる限り自然に作られたワインや日本酒で、立石に新しい「文化」を運んだ西村さんの『ブンカ堂』は、三代目『文化堂』としての正しい継承だったのかもしれない。

西村さんの出発点である『おでん丸忠』や『栄寿司』、立石のランドマークである『宇ち多゛』など人気店が犇(ひし)めき合う入口から線路を渡る反対側は、開発で小さくなった「呑んべ横丁」や、『鳥房』などが有名だが、警察署裏辺りには縺(もつ)れ合うような複雑な路地の中に、旧青線時代の建物などが残る昭和の匂いが色濃い場所だ。
街の小さな医院や「ほねつぎ」の看板、昔ながらの商店街は葛飾区役所に向かう通りだ。

そんな中、周囲の風景に一線を画しながら、なぜか妙に溶け込んでいる店が西村さんの『ブンカ堂』だ。

名店から新店へ、世代を越えた街のメンタリティ

木とガラスを多用した外装、赤と青の金魚が遊ぶ瀟洒(しょうしゃ)な白いパネルの中に嵌め込まれた店名の看板。
その色に寄り添うように緑色に染められた暖簾。右端には「贈 立石仲見世 宇ち多゛より」の文字。

『宇ち多゛』の三代目朋一郎氏から贈られた暖簾は、立石では水戸黄門の印籠なみの威力を発揮する。
ここは、天下の名店のお墨付きという訳だ。小中学校の先輩である三代目の愛情と、下町ならではの立石の深い絆。

選び抜かれた酒と、心憎いアテのハーモニー

もちろん、酒の審美眼同様に名高い、西村さんの繊細でいながら力強いアテの数々も豊富に揃う。
浅漬けををその場でヨーグルトに和えたひと皿、豚の角煮や生姜焼き、〆サバ、前店から人気だった発酵ソーセージ、ライス抜きのカレーであるカルー…。

その一つひとつが喜びとおいしさに溢れていて、ワインも酒もハイボールもどんどん進んでしまう。原酒の濁り酒、生酛(きもと)のどぶを使った「どぶサワー」など、オリジナルのドリンク類も評判が高い。

でも、主役は間違いなく、西村さんのホスピタリティに満ちた接客だ。
細長い変形コの字カウンターを駆け回り、酒を注ぎ、アテをサーブし、厨房もこなす彼のライブを楽しみながら、おいしい酒と気の利いたアテに顔を綻ばせる。

『ブンカ堂』は、大人のワンダーランド立石に生まれた、姿を変えた新しいオモチャ屋なのかもしれない。

玩具の街には、幸いが住んでいる。

【メニュー】
浅漬けのヨーグルト和え 400円
〆サバ 600円
発酵ソーセージ 400円
うの花 400円
生姜焼き 600円、
カルー 400円
チーズ盛り 800円
ナッツ 200円
豚の角煮 650円
各種サワー 400円
本格焼酎 500円
グラスワイン 750円~
ボトルワイン 4,500円~
ビール生 600円
ギネス 550円
ハイボール 550円
日本酒正一合 750円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

ブンカ堂

住所
〒124-0012 東京都葛飾区立石4-27-9
電話番号
03-5654-9633
営業時間
平日 15:00~24:00、日・祝 15:00~22:00 
定休日
不定休

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。