2人の縁をもっと深めたいなら… 銀座の隠れ家 カウンターフレンチ『フルヌス』に行くべし!

みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
#カウンターフレンチ『フルヌス』@銀座

2019年02月13日
カテゴリ
レストラン・ショップ
  • レストラン
  • 銀座
  • フレンチ
  • ビストロ
  • 隠れ家
  • ワイン
  • 連載
2人の縁をもっと深めたいなら… 銀座の隠れ家 カウンターフレンチ『フルヌス』に行くべし!
Summary
1.2人の距離感、コミュニケーションを促すレストランとは?
2.ワインナビゲーターが発見! 銀座のカウンターフレンチ『フルヌス』
3.料理はおまかせ! 一期一会の食材とワインで縁を深めよう!

美食と空間で縁を深めるレストランとは?【ワインナビゲーター・岩瀬大二】

今回は、酒場やレストランだからこそ円滑に進む2人のコミュニケーション術を紹介したい。

ちょうどタイミングとしてはバレンタインデーやホワイトデー。2人の関係が始まったり、縁を深めたりするには良い時期だ。でも、関係が始まったり、縁を深めたりするのは恋愛関係ばかりではない。もっといろいろな関係がある。

話は変わるが、編集やライターの仕事をしていると、年間を通して企画のカレンダーというのは自然とできあがる。わりと長くそういう仕事をしているが、変わらないものもあれば新しく生まれるものもあるのだが、例えばクリスマス。これはバブル時期にライターデビューをした筆者の経験上、それほど変わっていない。

もちろんバブルのころの、華やかさを通り過ぎて踊り狂ったようなものと比べれば、現在は落ち着いた感じはある。家族で過ごすという人はバブルで減って、バブル崩壊後にはまた増えて、現在はどちらもなんだかバランスよい需要があるようだ。

フレンチディナー&ホテルの予約と、家で楽しむスイーツ&コンビニグルメのバランスは後者が多くなってきているようだが、でも本質的に変わらないのはおおむねハッピーで、煌びやかで、山下達郎のクリスマス・イヴとマライア・キャリーのクリスマスソングが似合うような日ということだろう。

2人の関係をつくる日、関係を深める日として利用したいお店

で、バレンタインデーとホワイトデー。

実はこの日のメディアの捉え方は結構変化している。女性が男性にチョコレートをプレゼントする。それに対して男性がお礼をする。そこにデートとギフトの需要が高まる。これが今までの伝統行事。でも昨今、こうしたコミュニケーションは成立しづらくなった。

男性はそれほどチョコレートをもらうことにモテの要素を感じなくなったし、なにより別にこの日でなくとも告白のタイミングはカジュアルになってきている。ギフトやコミュニケーションとして残っているのは女性同士の友チョコだったり、この期間にこぞってお披露目される名ショコラティエたちの新作を自分たちで楽しむということ。

でも……、

せっかくある程度、コミュニケーションとギフトが紐づき根付いた習慣。うまく円滑な2人の関係をつくる日、関係を深める日として利用してみてはいかがだろう。こういう日だから人を誘いやすい理由にもなるだろう。

冒頭にも書いたように、恋愛関係のスタートでもいいし、女性同士でもいい。男性の上司が部下の女性の頑張りをねぎらいながら、仕事や職場の本音を話しやすい雰囲気にするのもいい。ただ、これから縁を深める、ということは現時点では、まだ2人で一緒に食事をしたり、時間を過ごしたり、会話をすることに多少の緊張はあるという状況だろう。その緊張をほどいてくれるのが、料理やお酒だ。楽しんでいるうちに自然に会話が弾む。そこから素敵な関係が始まる。

銀座の隠れ家カウンターフレンチ『FURNUS(フルヌス)』

そんなコミュニケーションに最適な場所とはどういうところだろう。

筆者がおススメするのは「2人の心地よい距離感ができ、それを保てる空間と時間」があり、「料理そのものは当然おいしく、そのプレゼンテーションがうまい」、そして「肩の力は抜けるけれど、最後まで背筋は自然に伸びているほどよい上質感」。

無口もダメだが、騒ぎすぎも馴れ馴れしすぎるのもよくない。料理がうまくても忙しいのはダメ。会話のタイミングが生まれるような少しゆったりした時間が欲しい。

ちょうどよい店を見つけた。それがカウンターフレンチの店『FURNUS GINZA(フルヌス ギンザ)』。これらの要素がちゃんと満たされる店だ。場所は銀座6丁目。雑居ビルの6階。看板はかろうじてビルの1階の小さなステッカーのみ。知らなければ素通りしてしまう。銀座のなかにあって隠れ家の要素ありだ。小さなエレベーターを6階まであがる。すると世界は一変する。

「肩の力は抜けるけれど、最後まで背筋は自然に伸びている程よい上質感」、つまりは居心地の良さと少しの心地よい緊張感のある空間がそこにある。

オーナーシェフである加藤清和さん(写真上)が「厨房以外は余計なものを見せたくないので」との狙いで造った空間。L字型のカウンターの席の配置は、ほどよい間隔。料理をしっかり食べることができ、ワインもそこにある。

パン皿のスペースも必要で、ナイフとフォークをスムーズに使える幅は必要。そのフレンチならではのしつらえが馴れ馴れしさのないちょうどよい席の間隔をキープしている。声を張る必要はないが、抑えすぎることもない。2人でのはじめての横並び。

テーブルをはさんで正対するよりも距離感が縮まるのはよいのだけれど、だからといっていきなりひじが触れ合うような状況は、むしろ緊張感を増してしまう。ましてや男性同士の交友を深める場だったり、上司と部下の関係でいきなり屋台や赤提灯のような距離感もおかしなもの。

さらにオープンキッチンと席をわけるカウンターの幅も、フレンチに必要なスペースがいい距離に。目の前を阻み隔てるショーケースはないが、ここも決して馴れ馴れしくカウンターの中に自分たちの存在感が及ぶようなものではない。ほどよい照明もまた、「2人の心地よい距離感ができ、それを保てる空間と時間」を助ける。ちなみにこの空間を手掛けた店舗設計デザイナーは、パリと東京に拠点を持ち、人気のパティシエの明るいブティックや、自然と一体化したオーベルジュから、少し艶っぽい場面にも使えるシャンパンバーまで(ニューヨークの話題のラーメン店なんていう仕事も)手掛ける人物だ。

コミュニケーションが弾むプレゼンテーションも魅力

さて、席に着いたら料理と酒のオーダー。はじめての2人だと、アラカルトは難しい。料理を決めていくという作業は実は難易度が高い。遠慮だったり、探り合いが始まったりするとそれだけで時間がかかる。招待側としては予算がつかみづらいという不安もあるし、招待される側もその予算感は聞きづらい(もちろんこれをスマートにできる人はカッコいいわけだが)。

とはいえ、コースだとそれぞれの好き嫌いの問題や食の細さ太さの関係もあり、バリエーションがないと困る。そこで「料理そのものは当然おいしく、そのプレゼンテーションがうまい」が関わってくる。

『FURNUS』では、決まったメニューというのはないが、ゆるやかなコースづくりができる。基本はアミューズ(といっても通常のアミューズのイメージではなく、これだけで満足できる品数とボリュームなのだが……写真上)、前菜がシェフの名刺代わりともいえる定番で、驚きと笑顔が確約できる「ニンジンのムースとコンソメジュレ ウニ添え」(写真下)ともう1皿、メイン系2品という全5品のおまかせが中心だ。

そして何より、最初に、加藤シェフから今日食べられる食材を目の前で見せてくれるプレゼンテーションがあるのが嬉しい(写真下)。

産地や旬の説明をしてもらうことで会話のネタにもなるし、この会話の中で、ボリューム、好き嫌いの食材なども解決できる。この日、前菜の2皿目は魚介と野菜の組み合わせ。瀬戸内のサザエがあると聞いて、これに冬野菜を合わせての冷製サラダ(写真下)をオーダーした。

冷製と書いたのは希望すれば温野菜にもできるというありがたい変更が可能だから。ちなみにこのサザエや野菜の中のいくつかは加藤シェフが訪問した現地の漁師や生産者から直接入手したもの。一期一会的な出逢いで入手した食材というのが、また気分を盛り上げてくれる。

メインで選べる肉が3種。その中から鳩(写真上)を選ぶ。思い切って1羽オーダーしたが、ハーフポーションでもオーダーできるなど、これも相談しながら決められる。さらにシェフが修業した場所は南仏からブルゴーニュ、アルザスと幅広く、それぞれのスタイルを生かした多彩な表現も彩りを加えてくれるから、おまかせながらもコミュニケーションの中で2人にとって気分の良いものに寄り添ってくれる。

「3人寄れば……」。これはコミュニケーションの基本的な心理を突いていると思うのだが、2人での会話は手詰まりになることがあるが、そこに3人目の誰かがいることで円滑に進む。メニューで悩む、でもそこでシェフがいる。しかも2人は横並びで、ほどよい距離に3人目がいるという状況は、通常の相対するテーブル席にサービススタッフがいるという状況よりも、2人が心地よく同志である感が強まる。これは実際に試していただくと実感してもらえるだろう。

ここまでくればあとは肩の力を抜いて。ワインも事前に予算を伝えておけばおまかせで。無題にワインの蘊蓄(うんちく)を仕込んでおくことはない。シェフの話に対してうまい聞き役に回れば、それも相手からすれば好感を得られるものなのだから。

この後はシェフの采配で、ゆったりと会話を邪魔しない、でも会話を手助けしてくれるリズムで食事が進む。食べる人をシェフが直接見ながら、そして適度に会話の中から今の状況を察してくれる、これもまたカウンターフレンチのよさなのだ。

レンガ窯で焼く絶品フレンチが高揚感を高めてくれる!

さて、単にカウンターフレンチを選ぶのではなく、この店を選んだ理由をもうひとつ紹介しよう。

店名の『FURNUS(フルヌス)』とはレンガ窯のこと。カウンターのどこからでもこの窯(写真上)が見える。もちろん料理のために使われるのだが、窯がある場所というのは不思議な落ち着きと高揚感がある。実はこの窯こそ、この店のコンセプトでもあり、加藤シェフの想いでもあり、コミュニケーションを生んでくれるものでもある。

加藤シェフが常々考えていたのは、よりゲストの近くで、ゲストの顔を見ながら料理を提供したいということ。その想いが募った時、たまたま仕込み中に聞いていたラジオでトークゲストとして出演していたのがこの窯を製造する会社の社長。思い立ってその会社がある群馬に訪ねた。

瀬戸内のサザエや野菜と同様、一期一会が縁になっていく。この窯を得たことでこの店ができた。もともとがよいコミュニケーションを生みたいという願いから生まれた店。いろいろなディテールはこの気持ちに貫かれているから、当然、ゲスト同士もよいコミュニケーションができる。それは必然であり、シェフの願いでもあるだろう。

ちょうどよい2人の距離感、これからの縁を深める。その手助けをしてくれる店。バレンタインデーでもホワイトデーでも。感謝とこれからを軽やかに祝するために。コミュニケーションを深めてくれる、ちょうどよい店をよきタイミングで利用してみよう。

【メニュー一部】
おまかせコース 12,000円
その他、アラカルト 1,800円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格は税別です

写真提供元:PIXTA(一部)

フルヌス銀座 FURNUS GINZA

住所
〒104-0061 東京都中央区銀座6-5-13 銀座美術館ビル6F
電話番号
03-6263-8735
営業時間
18:00~24:00
定休日
月曜、第1・3日曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/hufv4ccv0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。