【沖縄の秘境グルメ旅】今帰仁村のきれいな海を堪能した夜は、メニューのないディープ酒場『海の幸』で

味わう旅 #8

2019年07月29日
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【沖縄の秘境グルメ旅】今帰仁村のきれいな海を堪能した夜は、メニューのないディープ酒場『海の幸』で
Summary
1.旅の醍醐味は、地元で愛される店でいただく地のものにあり
2.沖縄県・今帰仁村で20年間愛され続けている居酒屋『海の幸』
3.獲れたての海鮮を使った料理が唯一無二のおいしさ

食選びは、旅の醍醐味

人間にとって、食は生命の基礎である。その昔から、生命を維持するために、その土地の環境に適応した食文化を形成してきた。それ故、食文化を紐解くと、その地の理解を深めることができる。

例えば日本の岐阜県。内陸部に位置するため、冷蔵技術がない頃から食の保存性を高める工夫がなされてきた。殺菌成分があるといわれる朴葉で食物を巻くことで生まれた「朴葉寿司(ほおばずし・写真上)」や、寒すぎて凍ってしまった漬物を焼いて食べたことから生まれた「漬け物ステーキ」などだ。国内外問わず、郷土料理が生まれる過程には何かしらの理由があるのだ。

よって、私は旅をする際、地元の郷土料理を出す店へ足を運ぶ。寿司とラーメンは大の好物だが、海外で食べたことは一度もない。また、地元の人が通う店というのも旅先の飲食店を探す上での大きなヒントになる。

その地を理解した人が通う店で外すことは少ないのに加え、楽しそうな会話に少し耳を傾けると、インターネットに載っていない地元のリアルな声が聞こえてくる。よそ者とわかると、宴に誘われることも多々ある。つまり旅先でのグルメに迷ったら、地元の人に愛された地のものを提供する店に行くことを勧めたい。

沖縄本島最後の秘境・今帰仁村

さて、今回の舞台は沖縄である。沖縄といってまず浮かぶのは、やはり県庁所在地・那覇だろう。

観光都市として発展した那覇だが、海を目の前にのんびり過ごそうと思っても、なかなかそのような場所は見当たらない。よって、石垣島や宮古島などの離島を目指す旅行者も少なくないが、近年離島へ乗り入れをする格安航空便も増えているため、那覇と同じような"観光都市感"の印象を受けるかもしれない。

そこでお勧めしたいのが、沖縄県の北部にある今帰仁村(なきじんそん)だ。公共交通機関が少なくアクセスが悪いからか、まだ観光客は少なめで、海の透明度も沖縄本土随一だ。

そんな沖縄県の秘境で、毎日地元の人で賑わう人気酒場を見つけた。真っ白な砂浜とエメラルドグリーンの海が輝く長浜ビーチのすぐ目の前にある『海の幸(うみのさち)』だ。

メニューはなし! ローカル感漂う人気店『海の幸』

『海の幸』は8名用の小上がり席と、同じく8名ほどが座れる相席テーブルのみの小さな店だ。店のウリは何といっても、目の前の海で獲れた新鮮な魚介を使った郷土料理が食べられることである。

オーナーは比嘉つよ子さん(写真上)。その夫・実臣(じつみ)さん(写真下)は漁師ということもあり、同店ではその日に釣れたばかりの鮮魚をつよ子さんが調理するというスタイルを取っている。毎日試行錯誤しながら、沖縄の海鮮を少しでもおいしく食べられる方法を研究し続けているという。

同店の特徴は、何と言っても「メニューがないこと」である。元々地元の人が集まる休憩所のようなスタイルで営業していたため、当時から決まったメニューはなく、その日にある食材で予算に応じて、おまかせで料理を提供するというのが『海の幸』スタイル。

客同士もほぼ皆知り合いなので、親戚の家で宴会を開いているようなアットホームな空間に包まれている。客に混じって威勢良くビールを飲みほす実臣さんを見ると、「これぞ沖縄だ」とほっこりするのは私だけではないだろう。この日は「予算4,000円で」と伝えてみた。

早速お通しに「カタクチイワシの酢の物」(写真上)が運ばれてきた。今帰仁村の海で採れたカタクチイワシは、ハリがあって新鮮だ。酢が効いてさっぱりしているので、他の料理の合間に食べると箸休めとしてもぴったり。手の込んだお通しが運ばれてくると、店に対する期待感も高まる。

続いて、いびつな形をした貝が運ばれてきた。爪楊枝を使うと綺麗に取り出すことができる。味はサザエに近いが、サザエほどの苦みはない。これは「キラジャー」(写真上)という貝である。

全国的にはマガキガイと呼ばれており、主に静岡より南に生息する。このように沖縄では、貝や魚を独自の呼び方で呼ぶことが多い。

例えば、この「イキグサラー」(写真上)だ。文字通り”息(口内)が臭い”ためにそう名付けられたこの魚は、全国的にはホウセキキントキと呼ばれている。タイの仲間でクセのない白身魚だ。刺身でも食べることができるが、沖縄ではよく煮付けにするという。調理方法は、一般的な煮付けと異なり、醤油・酒・みりんに加えて大量のニンニクで煮つけ、そして最後にレモンを搾る。

味は、まさに和食とアジア料理のいいとこ取りという表現が正しいだろうか。沖縄は琉球王国時代、貿易が盛んだった中国やタイから様々な文化が入ってきたが、その名残ともいうべき味わいを想起する。

魚の下に敷かれているのは、地元で採れたヨモギだ。ヨモギは生だと香りが強い葉だが、甘辛く煮込まれたタレをたっぷりつけた魚と合わせるといいアクセントになる。今では、近隣のほとんどの店が煮付けにヨモギを使うが、実はこのパイオニアはつよ子さんなのだという。

海が目の前ということもあって海鮮料理はどれも絶品だが、ラフテーやソーキそば、ステーキなどの名物があるように、沖縄の人は肉もこよなく愛する。アメリカの影響で肉食化が進んだこともあるが、石垣牛やアグー豚に代表されるように、肉の質自体が高いことも理由の一つだろう。

これらの良質な肉が育つのは、沖縄の温暖な気候のもとでストレスなく育てられることに起因している。もちろん『海の幸』でもおいしい肉料理が食べられる。

沖縄で育った豚肉を使用した「三枚肉」(写真上)は、同店で1、2を争う人気メニューだ。ニンニクの効いた甘辛の三枚肉は、口の中で溶けてしまいそうなくらいやわらかく、ついついビールが進んでしまう。

そして〆に運ばれてきたのが「もずく酢」(写真上)だ。近海で獲れたもずくは一本一本が太く、その弾力性に驚かされる。味付けは、ニンニク・醤油・酢・レモンとシンプル。この一品が好きで通っている常連客も多いのだそう。どんなに満腹であろうと、これなら別腹で食べられてしまう。

沖縄の海鮮は、旅の最高の思い出になる

沖縄の魚は、海水が温かいため身が引き締まりにくく、刺身で勝負したら北海道の魚が勝つというのは確かかもしれない。しかし、海鮮をよりおいしく食べるため、沖縄の海鮮料理には代々受け継がれてきた知恵がある。

『海の幸』に行けば、食べたことも見たこともない珍しい海鮮料理に、誰もがあっと驚かされるだろう。そんなリアルな沖縄を感じることができたひとときが、あなたを沖縄の虜にするに違いない。


【メニュー】
つよ子さんのおまかせ 要相談(今回は4,000 円)
お酒 各500円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です

海の幸

住所
〒905-0426 沖縄県国頭郡今帰仁村字諸志391-1
電話番号
0980-56-3289
営業時間
18:00~22:00(L.O.21:30)
定休日
基本的には月曜日だが、予約が入れば月曜日も営業可能性あり
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/6udzfv2t0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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