丁寧な料理は心に響く。本場パリを彷彿とさせるカジュアルなカウンタービストロ 学芸大学『えさけ』

2019年08月29日
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丁寧な料理は心に響く。本場パリを彷彿とさせるカジュアルなカウンタービストロ 学芸大学『えさけ』
Summary
1. 東京・学芸大学にオープンしたビストロ『えさけ』は駒沢大学『ビストロ・コンフル』の2号店
2. センスの良い前菜からビストロの定番料理まで、バラエティ豊かなフレンチと良質なワインを楽しめる
3. おひとりさまも大歓迎! ふらっと立ち寄りしっかり食べて飲める、稀有な店

『えさけ』は、丁寧な料理にこだわるカウンタービストロ

きちんとした料理のみを、提供する。
丁寧に仕込む。
そうすれば、必ずお客様に伝わる。

当たり前のようなことだが、愚直なまでにそこにこだわり、まっすぐ客と向き合う店がある。

東横線・学芸大学駅から徒歩で3分ほど。そこそこ交通量のある対向2車線の道路を駒沢通りに向かって歩いて行くと、左側に突然、パリのビストロを彷彿とさせる瀟洒(しょうしゃ)な店が現れる。

ここ『えさけ(Et Ca Qu’est)』は、カウンター8席のビストロ。学芸大学界隈ははしご酒を楽しむ人が多いエリアだが、そんなお客もふらっと立ち寄れる、立ち飲み用のテーブルが道路側にある。

ふと、入り口の扉に貼られた文字が目に入る。店主である倉田一海(くらたひとみ)さんからのメッセージだ。少しだけ、抜粋してみよう。

「大切な友人を家に招いて料理とワインを振る舞うような
少しだけ緊張しつつ、でもワクワクしながら
喜んでもらえるように毎日心を込めて支度しています」

店名は「うちにおいでよ」。運命的に出逢った物件で、念願の店主に

倉田さんは秋田県男鹿市の出身だ。調理師専門学校に入学とともに上京。学校を卒業後、入店したのが東急田園都市線・駒澤大学駅近くの人気店『bistro-confl.(ビストロコンフル)』だった。

当初、出店予定の2号店スタッフとして採用された倉田さんだが、入店直後にシェフが退職、新店舗の計画は保留となった。
「どうしようかと話し合いました。新しいシェフを雇うか、今店にいる料理人だけでどうにかやってみるか。シェフの経験はないけど実力はある。私たちが選んだのは、後者でした。」と倉田さんは振り返る。

結果的に『ビストロコンフル』は、若い女性3名で厨房を切り盛りする珍しい店となった。彼女らの腕前と弾ける元気さ、笑顔が店の雰囲気を明るくし、それまで以上に愛される店と進化した。

とはいえ、新店舗の計画はなくなったわけではなかった。倉田さんの入店から4年。ようやくスタッフが拡充された今年、話は一気に進む。

「2号店は小さい店をイメージし、10坪前後の広さで物件を探していました。ここは、もともと居住用の物件でしたが、駅からの近さ、人目につきやすい角地、物件の広さと条件が揃っていて。オーナーがダメ元で大家さんに交渉したら、まさかのOKが出たんです」運命の物件と巡り合い、開店にこぎつけた。
  
店名にした「えさけ」は「うちにおいでよ」という意味の秋田弁。フランス語のような秋田弁が、なんともユニークで抜群のセンスだ。

ひとり客も気軽に訪れ、丁寧な料理をいただける、みんなのフランス食堂

客層の中心は30代から50代。3、4名のグループもいるが、ひとり客が半分ほどと多い。ガラス越しに店の様子をみて空いてそうなら、予約がなくてもふらっと立ち寄れる。ワインの好きな客にとって、とても重宝する店だろう。

料理は「定番のものをきちんとおいしく作る」がテーマ。中途半端な料理を出すと格が下がる、と言い切る倉田さん。「ビストロコンフル」の人気メニューもあるが、『えさけ』だけで提供しているものも多い。客の反応や意見を大切に、日々メニューをアップデートしているそうだ。

では、料理を見ていこう。

「フレッシュマッシュルームとルッコラ、パルミジャーノのサラダ」(写真上)。静岡の長谷川農産から取り寄せる立派なマッシュルームをルッコラと一緒に塩で和え、くるみオイルを使ったドレッシングで仕上げた一皿。マッシュルームの深い味わいが塩とパルミジャーノでグッと引き出される。また、マッシュルームのコリッとした食感とくるみオイルの香ばしさが好相性。

「馬肉のタルタル」(写真上)。粗めに叩いた馬肉にケッパー、エシャロット、穂紫蘇(ほじそ)を混ぜ込み、塩、ビネガー、ガーリックオイルで調味。付け合わせのじゃがいもフリットは馬肉と質感を合わせ、ホクホクしすぎないメークインを採用。

ねとっとした甘みを感じる馬肉に、ケッパーの独特の風味、エシャロットのシャキッとした食感、穂紫蘇の爽やかさが絶妙なバランス。思わず唸ってしまうおいしさだ。

「ブルーチーズとポワローのキッシュ」(写真上)。ブルーチーズはゴルゴンゾーラ・ピカンテを使用。ワインに合わせることを念頭にキッシュ台は極力薄く敷き、アパレイユ(卵液)も最小限に。中のブルーチーズと香りのあるポワロー(ポロネギ)のインパクトを演出する。

「プティサレ(塩漬け豚バラ肉)と白インゲン豆」(写真上)。うまみがぎゅっと凝縮した豚バラ肉を、沸かない程度のお湯の中でじっくりゆっくり火入れ。提供する直前にフライパンで表面をソテーし、脂身も焼き切り香ばしく仕上げる。

付け合わせは白インゲン豆と赤タマネギ、固めに茹でた枝豆。タマネギベースのドレッシングに合わせたバジルオイルが、口の中をさっぱりとさせてくれる。

「プリン」(写真上)。昔食べた喫茶店のプリンを思い出すような、濃いめのカラメルが印象的。一気に火を入れると固くなってしまうが、『えさけ』では湯煎しながら低温で仕上げるため、ふるふるの状態に。プリン自体の甘さは控えめで、卵のうまみをぐっと感じられ、添えられたクレームシャンティ(ホイップクリーム)のさりげない甘さが絶妙にマッチする。

ワインはフランスワインがメインだ。オーガニックなもの、状態の確かなものをセレクトし、グラスワインも味わいの印象が異なるものを複数用意。倉田さんは作り手についても詳しく、そのワインを選んだ理由を熱っぽく語ってくれる。良いものを味わってもらいたい、という気持ちがここにも存分に感じられる。

近隣の客に愛される、地域に根ざした店をめざして

「ようやく、近所の方が店の存在に気づき、少しずつ来始めてくださっています。地元の方に愛されて“あの店はわいわい賑やかだけれど、ちゃんとしているね”なんて言われたら最高です」と倉田さんは話す。今は一人で営業する日も多いが、秋にスタッフが増えたらもっと仕込みに時間を割ける。メニューの数は増やさないが、料理の内容をさらに丁寧に、充実させていきたいとのこと。

相手を自然に笑顔にさせる、優しい語り口の倉田さん。しかし、同時に内に秘めた志とブレない芯を感じさせる。

芯の強い女性は、自然とひとを惹きつける。この店はきっとすぐ、彼女の料理を食べたい客で毎日席が埋まるようになってしまうのだろう。誰にも教えたくない店、は、誰にとっても魅力的な店、なのだ。

【メニュー】
人参のラペ 300円
フレッシュマッシュルームとルッコラ、パルミジャーノのサラダ 800円
ネクタリンとモッツァレラ、生ハムのサラダ 1,300円
馬肉のタルタル 1,500円
エビとハラペーニョのマカロニグラタン 1,200円
ブルーチーズとポワローのキッシュ 800円
プティサレ(塩漬け豚バラ肉)と白インゲン豆 1,400円
アメリカ産牛肩ロースの男前ステックアッシェ 1,600円
プリン 600円

シャンパーニュ 1,200円
グラスワイン 800円より
ハートランド 600円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です

えさけ Et Ca Qu’est

住所
東京都目黒区鷹番3-14-20 1F
電話番号
050-3461-1331
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
18:00~24:00
定休日
火曜日
ぐるなび
http://r.gnavi.co.jp/g724ytuf0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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