秋葉原の古民家レストラン『KUFUKU±』の魅力がすごい! 築70年の古民家で新感覚フレンチを堪能

秋葉原の古民家フレンチ『KUFUKU±(クフク)』は、日本の伝統食材を活用したフランス料理が楽しめるお店。熟成や発酵などの日本古来の技法を活用した料理は、日本人にはもちろん外国人からも好評。築70年の古民家をそのまま活用した空間は、圧倒されるほどの美しさ。目でも舌でも楽しめる一軒は、デートや接待にもおすすめです。

2019年10月29日
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秋葉原の古民家レストラン『KUFUKU±』の魅力がすごい! 築70年の古民家で新感覚フレンチを堪能
Summary
1.秋葉原の隠れ家フレンチ! 築70年の古民家をそのまま生かした異空間『KUFUKU±』
2.シェフは、豪華客船「飛鳥Ⅱ」で腕をふるったフレンチ出身の竹中誠治氏
3.日本の伝統食材をフレンチテイストでオリジナルに再構築した料理

過去から未来へ、文化と命をつなぐレストラン

目の前に広げられた“安くて手軽でおいしい”に、我々日本人は弱い。手軽さや時短が重視され、いかに効率的に“おいしい”を作り出すかに価値を置く人も多いだろう。
しかし日本には元来、発酵や熟成など、丁寧に時間をかけて育むことで味わいを深める技術と知恵がある。食に関する技術が進歩したとしても、時間をかけること、長い月日を経て生み出されたおいしさには到底届かないだろう。そんな、昔から日本にある食の価値観に立ち返り、誠実に向き合うお店が新たに誕生した。

2019年5月、秋葉原駅から徒歩5分の路地裏にオープンした古民家レストラン『KUFUKU±(クフク)』だ。

豪華客船「飛鳥Ⅱ」で腕をふるった竹中誠治さん(写真上・左)が料理を手がけ、ラグジュアリーホテル、都内の有名レストラン、バーなどで経験を積んだ金澤善幸さん(同・右)がソムリエを務めるお店だ。

築70年の古民家を生かした「時」を感じさせるお店

お店のはじまりは、オーナーが築70年を超えるこの古民家と出逢ったことに端を発する。
秋葉原のこのエリアにはむかし神田青果市場があり、この古民家も元々は乾物や青果を販売していた商家だった。

匠の技が隠されているこの古民家は、宮大工が建設。今では手に入らない貴重な木材の選定、釘を使わない木組みの技術、欄干の細工など仕事の丁寧さが伝わってくる。

商家を閉めた後は何十年も空き家だったというが、その間も大家さんが毎朝雨戸を開けては風を通し、糠で床や柱を丁寧に拭きあげ大切にしてきたため、築70年たった今でも驚くほど状態がいい。

「時を超え、人々の心を解きほぐすような心地よい古民家をどう生かすべきか…。」

考えを巡らせるうち、自ずとおいしい料理とそれに寄り添うおいしいお酒を提供できる飲食店という形態にたどり着いた。この古民家の良さ、歴史が生む味わいを伝えたいという想いもあり、コンセプトは「時間」にした。

▲1階の奥には、昔の台所や食器棚をそのまま残したテーブル席

▲石造りの蔵はそのまま生かし、ワインセラーに

「飛鳥Ⅱ」出身の竹中誠治シェフが繰り広げるフレンチと和の融合

料理人として招いたのは、有名ホテルやフランス料理店を経て豪華客船「飛鳥Ⅱ」で腕をふるっていた竹中誠治さん。

「飛鳥Ⅱ時代、海外のお客さんからすると日本人が作る料理はフレンチだと思われない。自分でも、フレンチを作っているという感覚をあまり持たず、“日本人の料理人”としてプライドを持って仕事をしてきました。下船後、この古民家と出逢い、また日本の食材と深く触れ合えるようになり、その意識がより強くなりましたね」。

この古民家に呼応するよう、フレンチの技法は生かしつつも、日本に昔から伝わる「発酵」「熟成」「伝統食材」を用いた料理を創作しようと考えたのだ。

作り手の想いを伝えるストーリーテラーも担う、ソムリエの金澤善幸さん

お店の魅力は料理だけではない。金澤善幸さんをシェフソムリエとして迎え、時に意表をつくような斬新なドリンクのペアリングを提案してくれるのもこのお店の大きな特徴。

ラグジュアリーリゾートホテル、都内の有名レストラン、バーなど多様な業態で研鑽を重ねた金澤さんは、日本ワイン、自然派ワイン、地中海ワイン、さらには日本酒やカクテルまで、多岐にわたるドリンクを提案。料理に寄り添うベストなお酒を提供するのはもちろん、作り手の想いを届ける代弁者としての役割も担っており、彼のサービスに信頼を置くお客も多い。

竹中シェフが全国各地の伝統食材をフレンチテイストでオリジナルに再構築し、それに合うようソムリエの金澤さんが幅広いドリンクのペアリングを提案する。どんな組み合わせが待っているか、料理もドリンクも行ってみてわかるその日のお楽しみが多い。

「発酵」「熟成」「伝統食材」を用いてフレンチの技法で仕上げる

「25種類の季節野菜やハーブを使った柴海農園サラダ」(写真上)は、目が覚めるような鮮やかさと繊細な盛り付けで見るものをときめかせる。野菜はすべて、千葉にある『柴海(しばかい)農園』から仕入れた有機野菜。

それぞれの食感や味を存分に楽しめるよう、1種類ずつ素材に合わせて火入れと塩加減を調整。例えば塩の浸透率が高いブロッコリーやカリフラワーは塩加減を控え、芋類は甘くなるようゆっくり火入れを行い、最後氷水に落とした際に逃げる塩味も考慮し味付けをそれぞれ分けているという細やかさだ。

味付けには、江戸時代から伝わる伝統調味料「煎り酒」と、お茶を発酵させて作る微炭酸の発泡ドリンク「コンブチャ」をチョイス。お皿にあしらわれたカラフルなソースは、ビーツ、ブロッコリー、カリフラワーそれぞれにハチミツとゴマを合わせたもの。温野菜はそのままいただくだけでなく、この3種のソースをお好みでつけて味の変化を楽しむこともできる。

温野菜サラダに合わせるのは、国内最大手ワインメーカー『メルシャン』の醸造責任者を務め、各地で技術指導もしている平山繁之さんが手がける山梨のワイナリー『98WINEs』の「TANE 霜(SOU)ロゼ」。
マスカット・ベリーAを主体に甲州ブドウを混ぜて作り上げたロゼワインは、香りがほんのり甘く、後から感じられる甲州ブドウの苦みが野菜の甘みに寄り添う。国産ワインの柔らかい質感が、ドレッシングとも相性が良い。

「平山さんは次の世代の子供たちにも豊かな資源を残したいという想いが強い方。ワインを輸送する際に発生する二酸化炭素の排出量を抑えるようボトルの重さを一律にしたり、電気をなるべく使わないよう甲州ブドウの栽培にもトラクターを使わなかったり、プレスも人力で行なったりと環境にも配慮したワイン造りをされています」(金澤さん)。

そんなストーリーとともにいただくと、味わいにさらに奥行きが感じられてくる。

千枚漬けの下には魚介がたっぷり。滋味あふれる和風セビーチェ

「新鮮な魚介を自家製の千枚漬けで覆った和風セビーチェ」(写真上)は、自家製の千枚漬けとそれぞれの発酵食材が持つ酸味とうまみを生かした一皿。旬の魚介類をコンブチャと橙酢、土佐酢などの調味料でマリネしている。

この料理も食材の食感の良さが秀逸。エビやホタテなどの魚介類は、クールブイヨンという魚介を茹でるための煮汁に白ワインとビネガーを入れ、さらに食感の良さを活かすために食材に合わせて火入れを調整。ホタテは身割れしないよう約70℃で火入れ、エビはプリッとした食感に仕上げるため沸騰直前の湯にくぐらせるというように。

シャキシャキとした千枚漬けに、レアさがありながらもしっかりと火入れされた魚介類。そして程よい酸味とうまみ、鼻を抜ける爽やかな香り。この舌に残るような味の深みや厚みは、コンブチャや橙酢、土佐酢など時間をかけて作り上げたられた発酵食材だからこそ出せる味わいだろう。

この千枚漬けの酸味にマッチするのが、『新政酒造』の日本酒「瑠璃 2018 -Lapis Lazuli-」という美山錦を使った生酛(きもと・酒母を手作業で造る製法)。ジュワッとくる生酛ならではの乳酸っぽさが、コンブチャや橙酢、土佐酢の発酵っぽい酸味と良く合う。

ヤクシカのローストは、プレート全体で屋久島を表現

今回メインでいただいた料理にも驚きがあふれていた。屋久島で育った小型の鹿「ヤクシカのロースト」(写真上)だ。ヤクシカのツノとおかひじきを屋久杉に、ピーナッツをヤクシカが食す木の実に、葉物を木々の緑に、モモ肉をヤクシカに見立て、プレート全体で屋久島を表現しているというから面白い。まるで美しいジオラマのようだ。

ヤクシカは屋久島と口永良部島(くちのえらぶじま)のごく一部にしか生息していない貴重なシカ。近年増加傾向にあり、食害による生態系への悪影響が叫ばれることから、狩猟され食肉として市場に流通するようになったそう。

そんなヤクシカは、ジビエ臭がほとんどないのも特徴。通常のジビエでは香草などを使って臭みを消して焼き上げることが多いが、このヤクシカは、よりレアな「ブルー」という手法で低音ロースト。驚くほど柔らかくしっとりとしており、臭みがなく、赤身のうまみを強く感じる。

ソースにもシェフの強い想いが光る。赤ワインを煮詰めてヤクシカの骨でとっただしを加え、ラズベリーのピューレを入れて煮詰め、仕上げにヤクシカの血でつないでソースに仕立てているのだ。
この血はヤクシカ解体の際に業者が採取し、瞬間冷凍し肉とともに一頭丸ごと空輸。そのため、血生臭さは一切なく、ラズベリーのフレッシュな甘酸っぱさにコクが生きたソースに仕上がる。

「屋久島の生態系を維持するために駆除されてしまったヤクシカを、骨から血に至るまで余すことなくおいしく食べていただきたい。自然を守りながら命を大切にいただいて、次の時代につないでいく。そんなことも私たちのお店では大切にしています」と竹中シェフ。

ジビエというとフルボディの赤ワインを合わせることが多いが、金澤さんはドイツ『フーバー』の「シュペートブルグンダー」というミディアムボディの赤ワインをチョイスしてくれた。

「ヤクシカ自体に臭みがないので、重すぎないきれいな味わいのワインを選びました」と金澤さん。ピノ・ノワールを小さな樽で仕込んだ赤ワインは、ピノ・ノワールにしてはしっかりとしているが、エレガントで美しい味わいでヤクシカの滋味深さを助長する。

パンに添えられたバターにさえも『KUFUKU±』らしさが光る

肉料理に合わせていただいたパンにもこだわりが。添えてあるバターが「へしこバター」なのだ。

へしことは、若狭地方(福井県)、丹後半島(京都府)の伝統発酵料理。塩漬けにした新鮮な青魚を麹漬けにした保存食を発端とし、漁師が魚を樽に漬けこむことを「へし込む」といったことからこの名がついたという。ぬか床につける「本漬け」を経るため、作り上げるのに最低でも1年はかかる。

味のクセが強く、お酒のアテとしてのイメージが強いへしこだが、同店ではポマード状のバターとミックス。発酵バターのような芳醇な味わいに仕上がり、酸味のきいたハードバケットとよく合う。

「いつでもふらっと立ち寄れる、開かれたレストランでありたい」

「時間」をテーマに、こだわりの詰まった料理をいただける同店だが、お店づくりで大切にしているのが、地域の人たちに開かれたレストランにすること。地元の人も気軽に入りやすいようにと、一階の入り口はガラス面が広めな扉に。入ってすぐの場所はカウンター席にして、しっかりと腰を据えて食事を楽しみたいという人だけでなく、地元の人がちょっと一杯軽く飲みに行けるような、そしてスタッフと気軽にコミュニケーションをとれるようなオープンな造りにした。

その場で感じられる「おいしい」だけでなく、その先の物語やストーリーにも想いを馳せ、食材や作り手に感謝をしながら食事をいただく。歴史が紡いできた輝かしい産物を次の世代につないでいくためにも、そんな食体験の場がもっともっと広がることを願う。


撮影:岡崎慶嗣

【メニュー】
▼コース
おまかせA 6,600円
おまかせB 4,180円
ワインと日本酒のペアリング 7種4,200円、5種3,500円

▼アラカルト
ヤクシカのロースト 4,378円
新鮮な魚介を自家製の千枚漬けで覆った和風セビーチェ 1,480円

▼ドリンク
98WINES グラス1,100円、ボトル5,700円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です

KUFUKU±暮富食

住所
〒101-0021 東京都千代田区外神田4-11-8
電話番号
050-3469-8788
営業時間
火~日 ディナー:17:30~23:30(L.O.22:30、ドリンクL.O.23:00) 水~日 ランチ:11:00~14:00(L.O.13:30)
定休日
毎週月曜日 ※※ランチは、月・火お休みです。 ※10/12(土)は、台風接近に伴い、臨時休業致します。
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/79vgu3t40000/

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