建築士の愛が育てた「究極の餃子」!? 創業65年、未だ進化を続ける飯田橋『おけ以』

餃子で巡る世界の旅in東京 #46

2019年11月13日
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建築士の愛が育てた「究極の餃子」!? 創業65年、未だ進化を続ける飯田橋『おけ以』
Summary
1.創業65年の飯田橋『おけ以』。愛される秘密は、店主の並々ならぬこだわりにあった!
2.名物の「餃子」は、シンプルなのに奥深いおいしさ
3.「湯麵」「玉子チャーハン」も必食! 毎日でも食べられる優しいおいしさ

どうも、餃子が大好きな料理芸人「クック井上。」です!

昔ながらの雰囲気を残しつつ、商業施設やオフィスと住宅を兼ね備えた複合施設が続々と登場し、活気付く街「飯田橋」。JR中央・総武線の他、東京メトロ東西線・有楽町線・南北線・都営地下鉄大江戸線が乗り入れ、ビジネス拠点としてだけでなく、神楽坂と並んで“遊びに行く街”としても、注目されています。

そんな飯田橋を、長年見守り続けてきた町中華があります。それが、『餃子の店 おけ以』。
昼は餃子&ご飯、夜は餃子&ビールという、餃子フリークで連日賑わう、まさに“餃子の店”です。

創業から65年、愛され続ける中華料理店『おけ以』

創業は1954年。もとは神保町で営んでいたお店を、1988年に移転したのだそう。

暖簾をくぐってパッと目に付くのは、町中華では珍しい、緑色のテーブルや椅子。普通は、朱色が多いですよね。創業以来の統一カラーだそうです。
ちなみにこの緑色、常連さんの間では「おけ以グリーン」と呼ばれているんだとか。

「おけ以グリーン」は、創業以来、お客さんにめちゃめちゃ愛されているのだ!
(なんか、スーパー戦隊シリーズみたい笑)

ところで、『おけ以』っていう、ちょっと変わった店名の由来、気になりませんか?
オーナーの馬道仁(うまみち ひとし)さんに聞いてみました。

「創業者の息子さんがケイイチさんという方で、大人たちが“お”をつけて『おけいちゃん、おけいちゃん』と呼んでいたのが由来だそうですよ」
きゃは、なんてかわいらしいエピソードなんだ!

ちなみに馬道さんは創業者一族ではなく、一族外からの承継者。しかも二級建築士の肩書きを持つというから、びっくり。ちょっとこの辺りの話は後ほど。

建築士の店主が、おいしさを追求した「餃子」がうまい!

『おけ以』の名物といえば、なんと言っても「餃子」。元々は、創業者の方が、満州の人から教わったレシピを元に作ったそう。

中国では、生のニンニクをかじりながら餃子を食べるスタイルなので、それにならって『おけ以』の焼き餃子の餡にも、ニンニクは入っていません。

餡は、豚バラ肉・白菜・ニラ・すりおろし生姜・ごま油・塩コショウと超シンプル。
シンプルな餃子ゆえ、配合のバランスと、職人の技が命。
そして、皮も手作り。材料は、強力粉・水・ごま油のみ。加水率は低めだそうです。

自家製の皮で手包みしている餃子の数は、なんと1日1,300個!
気が遠くなる数を包んでは焼き、包んでは焼き…、さすが餃子の店だー!

来る日も来る日も、餃子をこんがり焼く、その鉄板の厚さは9mm。
通常は4~5mmなので、ほぼ倍ということになります。
鉄板を分厚くすることで、繰り返し繰り返し水分を注いで蒸し焼きしても、温度が下がりにくいんです。

では、その焼き方を少し覗いてみましょう。
まず、水で溶いた強力粉を入れ、沸騰したところに餃子を丁寧に並べていきます。(普通の餃子の焼き方と逆だ!)

優しく優しく、赤ちゃんに産湯をかけるように、お湯を何度も餃子にかけて蒸し焼きにしていきます。

仕上げに大豆油をたらーり。芳ばしい香りが一気に立ち昇ります。

そしてそして……いよいよ、キターーーーーーーーーーーー!

出ました、食品サンプルかってくらい美しい姿! なんのよどみもない、これこそが黄金色。
最高の焼き目&極上の焼き色、星三つです!

まずは、そのまま何もつけず、アッツアツのうちに頬張るべし。

9mmのぶ厚い鉄板で焼かれた焼き目はカリっ、上面はもっちり&ツルっとした食感。
そして噛むと、白菜の水分と豚肉の脂が相まって、じんわりとおいしさが広がります。

シンプルながらも、絶妙なバランスで練られた餡には、ちゃんと素材の味があるので、タレ無しでも十分おいしい。そして、ビールが止まりません。

そのまま2個目あたりまでは何もつけずにビールと共に味わい、3個目あたりから、お店推奨の配合のタレ(醤油2:お酢1:ラー油0.5)につけて、ご飯にワンバン、ツーバン、よいしょ!

ひだの隙間に入り込んだ酢醤油&ラー油が、一瞬にして餃子をご飯のおかずに大変身させました。
噛むたびにニラの香りが弾け、ライスにも相性抜群!
おい、『おけ以』の餃子…、ビール泥棒&ご飯泥棒の容疑で逮捕する!

この飽きない味、でもマネできない絶妙な餡のバランスと皮の食感はどうやって生まれたのか…?

『おけ以』の味を絶やしてはいけない。受け継いで、さらにおいしさを追求

「もともと私は、料理人ではなく『おけ以』の内装工事を請け負っていたんですよ」と現オーナーの馬道さん。

2005年、継ぐ人がいないということで、創業者の息子さんが、お店をたたむことを考えていたところ、「こんなにお店が愛されているのに、もったいない!」と、馬道さんが、お店を継承することとなったのだそう。

ただ、少しひっかかる事があったそうだ。

「昔から、毎日食べたものだからね。正直“これが絶対的においしい!”という認識がなかったんです」と馬道さん。
なるほど、日常的に食べていたからこその正直なお言葉!

そこで馬道さんは、ミリ単位で設計し、ものをつくる、建築士としての血が騒いだ!
一体、何がおいしさを引き出すか…。野菜なのか? 肉の切り方なのか? それとも皮の配合なのか……?
来る日も来る日も、あらゆることを繰り返し、追求し続けたのだそう。

そして仮説を立て検証すること約7年。創業時のレシピは変えず、調理法や配合バランスの微調整を重ね続け、ようやく今の作り方と味に。

土台や柱、設計図はそのままに、味の再構築をするとは、さすが建築士!

「苦労を重ねて、ようやく完成したわけですね?」と僕が聞くと、「いや、まだ8割方完成ってところかな」と馬道さん。

完成には至っておらず、未だ建築中という、「サグラダファミリア」並みのこだわり。おそるべし、馬道さん!

そんな馬道さん、最もこだわったのが、餡の製法だそう。
元々のレシピは、餡を作ったその日に皮に包んでいたが、2日間寝かせた方が、おいしくなるということを突き止めたのだとか。

人の舌の感じ方にも移り変わりがあるため、時代によってそれに添うような味を仕立てる。

変わらない為に変わる!
『おけ以』の餃子は、馬道さんの情熱によって常に進化し続けているのです!

餃子以外にも名物はたくさん!

餃子は必食メニューですが、まだまだおすすめしたいメニューもたくさんあります。
その一つが「湯麺(タンメン)」。

見てください、このビジュアル!
餃子同様、オーソドックスでいて懐かしい一杯に心踊りますよね。
鶏ガラと豚骨のWスープを1日2回とるそうで、なんとも手間をかけています!

「なんかちょっと物足りない?」……いえ、それがベストなんです! 
だってそのくらい優しい味わいの方が、毎日でも食べられるんですから。

あっ、餃子にはビールもご飯も合いますが、湯麵+餃子=”タンギョウ”もたまりません。

そして、「玉子チャーハン」も、例に漏れず懐かしさ満点のビジュアル。

必ず、少量ずつ中華鍋を振って丁寧に作るのが基本だそう。手間ひまをかけるからこそ、おいしさにつながる……。
うーん、その労力を惜しまない姿勢に、最敬礼ッ!

せっかくのおいしさ、おうちに持ち帰りたい!
そんな人のために、『おけ以』ではお持ち帰り餃子も用意しています。ただし、お持ち帰りの注文は19時まで。ご希望の方は要注意です。

「最近、炭水化物は控えてるの…」なんて人も、『おけ以』に行く日だけは解除しましょう!

餃子+ライス、餃子+ビール、餃子+湯麺、いや餃子+餃子……。
『餃子の店 おけ以』で、それぞれのお気に入りの餃子の楽しみ方を見つけましょう!

そして、完成しているようでいて未だ”建築中”という『おけ以』の餃子は、何度食べても飽きるはずがないのです!!

編集協力:有川美咲
撮影:佐々木雅久

【メニュー】
餃子 600円
湯麺 680円
玉子チャーハン 740円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込みです

餃子の店 おけ以

住所
東京都千代田区富士見2-12-16 1F
電話番号
050-5487-1154
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
ランチ 11:30~13:50
ディナー 17:00~20:50
定休日
日曜日
第3月曜日
祝日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/pazuv9hd0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。