心弾む食のマジックで身も心もほっこり!ガレットと自然派ワインで幸せに包まれる『メエボニータ』

【連載】幸食のすゝめ #098 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2019年12月11日
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心弾む食のマジックで身も心もほっこり!ガレットと自然派ワインで幸せに包まれる『メエボニータ』
Summary
1.愛情たっぷりのガレットと笑顔に元気をもらえる、参宮橋『meeBonita(メエボニータ)』
2.外苑前の自然派ワインスタンド『no.501』の看板娘メエさんが独立オープンした店
3.月替わり「世界を旅するガレット」は、世界各国の個性を絶妙なバランスで表現したオリジナルメニュー

幸食のすゝめ#098、少女の夢には幸いが住む、参宮橋。

その日の午後、小さく畳まれた乳白色の生地の中に何が包まれていたか、もうはっきりとは思い出せない。でも、胸がワクワクして、とにかく夢中になって食べた記憶だけは、今もそのまま思い出すことができる。

具材なんか問題じゃない、小学生のメエ(原賀愛夢)さんにとって、生まれて初めてのクレープは夢を包んだ魔法の食べものだったからだ。

生まれ育った府中から近い、都立の野川公園。人見街道沿いにあったお持ち帰り系のクレープ屋さんだった。今でも、あの日広がっていた青空を鮮やかに思い出すことができる。

「いつかきっと、広い青空が見える場所でクレープ屋さんを開きたい」。

そんな想いを抱きしめながら、その日からずっと彼女は、少女の夢に向かってまっすぐ歩み続けた。

「クレープ屋を開きたい」。少女の夢は、彼女の背中を力強く押し続けた

小麦粉のクレープと、蕎麦粉のガレット。両者の作り方を習得するため、下北沢や吉祥寺のクレープ屋で懸命に働いた。
ガレットだけにとらわれることなく、料理全般についても学びたかったから、フレンチデリの厨房にも入った。

そんな道のりの中で出逢い、夢中になったもう1つのもの、自然派ワインについての知識を究めるため、外苑前の自然派ワインスタンド『no.501』でも働き、看板スタッフとして有名になる。

毎日たくさん開いている様々なグラスワインと、メエちゃんのおいしい料理。飲んで買えるお洒落な立ち飲み屋『no.501』は、近隣で同じく自然派ワインを置いているベトナム料理『An Di(アンディ)』、焼鳥『今井』や系列店のとんかつ『七井戸(なないど)』と共に、外苑前を自然派ワインの街にした立役者になった。

フランス北西部では、カフェ以上に親しまれている「クレープリー」

蕎麦粉で作るガレットはフランスの北西部、ブルターニュで生まれた。同じくブルターニュ発祥の発泡酒シードルや、ワイン、コーヒーと共にガレットやクレープを楽しむ場所「クレープリー」は、現地ではカフェの数を上回っている。

日本でもお馴染みの蕎麦は、日本独自の作物と思われがちだが、中国雲南地方の原産。アジアをはじめ、ヨーロッパやアメリカ大陸でも栽培されているグローバルな作物だ。

中世十字軍によってフランスに運ばれ、ブルターニュのアンヌ女公が蕎麦栽培を無税で奨励したため、この地方で栽培が盛んになった。

デザートとしてのクレープができたのは後世で、一般的には蕎麦粉生地で塩味のガレットと、小麦粉生地で甘いクレープに分けられる。酪農が盛んなブルターニュはバターの名産地でもあり、ゲランドで有名な海塩もあり、ガレット作りに必要なすべてが揃っていた。

2019年9月、明治神宮そばに『meeBonita(メエボニータ)』をオープン

大好きなガレットとクレープ、自然派ワイン。最初のクレープ屋さんで働いた後、バックパックで世界旅行した日々の記憶、窓から見渡せる青空。

メエさんの中で、店のコンセプトははっきり過ぎるほど明確になっていた。

『meeBonita(メエボニータ)』は、これまでメエさんが働いてきたもの、学んできたもの、感じたものの集大成だ。

「mee」はもちろん愛夢(めぐむ)の愛称から、「Bonita」には2つの意味が重ねられている。ブラジルを旅していた時に出逢った小さな街、ボニート。世界最大級の大湿原パンタナールの中心地、透き通った水と空気が1つに溶け合っている街。 その美しい風景にスペイン語のボニータを重ねた。ボニータは可愛い娘や、美しいひと、女性を指す美称だ。

そして、その根底に流れるイメージは、ブラジルを旅している時に知った「サウダージ」だ。

「サウダージ」は、日本語では、郷愁、思慕、憧憬、切なさなどに訳されるが、単なるノスタルジーではない。

温かい家族や友人たちに囲まれて無邪気に過ごした子どもの頃の情景、大人になることで失ってしまった瑞々しい感情…。ポルトガルの民族歌謡、ファドの根幹に流れる感情であり、ブラジルのボサノヴァの重要なキーワードでもある。

「その時流れていた音楽とか、見つけた雲の形にインスパイアされて、今はもういない人とか、なくしてしまったものとかを思い出せる…、サウダージみたいな気持ちになれる場所にしたい」。

目の前のカウンターで満面の笑顔で話すメエさん、その微笑みの奥にある透き通った哀しみに触れる時、人はみんな日々の暮らしや大人になることですり減らしてしまった大切な感情を思い出すはずだ。らせん階段を昇り詰めた小さなクレープ屋さんは、そんな特別な場所だ。

何でも包める、ガレットという可能性

「世界中のどんな処にも粉ものがあって、色んな人たちに愛されている。インドのコルカタで出逢ったエッグロールはソテーしたチキンを焼いた生地で丸めて食べるもので、気に入りすぎて、1度エッグロールを学ぶためにインドに行ったこともある」。

そんなメエさんの旅の数だけ、『meeBonita』には、ガレットのレシピが存在する。

月替わりで登場するSpecial「世界を旅するガレット」は、その国で体験した印象をガレットの中に包み込んだもの。

ブラジルがテーマの月には、「ムケッカ」というブラジル東部・バイーア州のシーフードシチューをメインに、エビとスズキとオクラのカルルー(煮込み料理)、ファロッファ(キャッサバ粉)にチーズ(写真上)。デンデ油とココナッツミルクの甘い香りが漂うガレットは、ブラジルというフィルターを通した、世界のどこにもないメエワールドだ。

「自分に帰るため」の小さなクレープリー

最新式のフランス製ガレット・クレープメーカー、店一番の投資だと言うエスプレッソマシンで淹れられるブラジル産の豆を使ったエスプレッソ、スペイン産のカップ&ソーサー、コツコツ溜め込んだ、とっておきの自然派ワインが160本詰まったワインセラー、作家に特注した一枚一枚絵柄が違うガレット用の皿、フランス産の小麦粉と福井県の越前蕎麦粉…。

自分が大好きなものたちに囲まれて、大好きなガレットを焼くメエさん。

「目の前で作ったものを食べてもらう喜びが嬉しくて、いつまでも長く、一生作っていたい」。

彼女の笑顔に包まれていると、いつか誰もが笑顔になってしまう。忙しい日常の中で薄っぺらになってしまった心に勇気と微笑みを貰って、らせん階段を降りる頃には、みんな元気になっているはずだ。

「夢が詰まってて、何でも入れられる。見ている人をワクワクさせてくれる。だから、クレープ屋さんになりたい」。

そんな少女の日の夢を叶えたメエさん、すぐそばには明治神宮の自然、青空の中を電線が走る日本ならではの風景、道路を走り抜ける車の群れ…。府中生まれの少女のまっすぐな夢は、らせん階段の最上階でたくさんの人たちの夢を優しく包むだろう。

少女の夢には、幸いが住んでいる。


【メニュー】
<ガレット>
Complete(ハム。卵、チーズ) 1,050円
Herborie(タスマニア産スモークサーモン、マッシュポテト、オニオンコンフィ、サワークリーム、たっぷりのフレッシュハーブ) 1,600円
Oriental(大山鶏と14種類のスパイス煮、季節の野菜、自家製ラー油) 1,500円
Salade(卵、グリュイエールチーズ、フレッシュグリーン、トマト、ベーコン、リンゴ、クルミ、ブルーチーズソース) 1,700円
Special(月替わりの世界を旅するガレット) 1,800円

<クレープ>
バターブラウンシュガー 650円
キャラメルバター 800円
クレープシュゼット(オレンジバター、オレンジコンフィ、グランマルニエ) 1,200円
ホワイトチョコとブルーチーズ(ラムレーズン入り) 1,200円、

<その他アラカルト>
ラム肉トマト煮クスクス添え 1,400円
広島産カキとブルーチーズのとろとろグラタン 1,500円
その他おつまみ色々 500円〜
※お一人様にはすべてハーフ対応あり

<アルコールドリンク>
グラスワイン 700円〜
ボトルワイン 4,500円〜
※その他、自然派のビール、シードル、グラッパ、ジンもあり

<ノンアルコールドリンク>
エスプレッソ 300円
アメリカーノ 350円
ミルク入りコーヒー 500円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です

meeBonita(メエボニータ)

住所
〒151-052 東京都渋谷区代々木4-1-5 3F
電話番号
050-6871-5970
営業時間
14:00~23:00
定休日
月曜(最終日曜)定休
公式サイト
https://www.facebook.com/meeBonita.net/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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