みんな間違えてた?本当にいい白トリュフを食べる方法

【連載】通わずにいられない逸品  トレンドに流されず、一つのお店を長く観察し、愛しつづける井川直子さんにはその店に通い続ける理由がある。店、人、そして何よりその店ならではの逸品。彼女が通い続けるそのメニューをクローズアップする。

2015年11月16日
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みんな間違えてた?本当にいい白トリュフを食べる方法
Summary
・いい白トリュフの見分け方
・日本のあの常識は間違い!
・名産地で修業を積んだシェフ

白トリュフの目利きについて

さて、シーズン突入である。
この時季、新しいコートよりブーツより、私は白トリュフのために節約を始める。
だって一枚でも多く削ってもらいたいんだもの。
黒トリュフじゃ駄目なんだもの。
脳をくらくらさせる白独特の妖しい香りは、一度くらくらしてしまうと、ああ今年もくらくらしたい! と本能が要求するのだ。

問題は、「金を削る」といわれるほど高値である(年により変動する)こと。
そして目利きと管理がとても難しいことである。
質や鮮度は、単に見た目だけでは現地のプロでもわからないといわれる。じゃあどう見分けるかと言うと、五感が頼りなのだ。
触った感触、香り、水分を含んだ重さの感覚の感じ。つまり経験値。
お母さんよりおばあちゃんのおむすびがおいしいように、触った数だけ摑める感覚。
そして日本では米に入れて保管する人もいるが、白トリュフの聖地、イタリア・ピエモンテ州アルバのトリュフ商に言わせれば、「この土地で米に入れるシェフなど一人もいない」。
水分が米に取られてドライキノコになるか、内側から柔らかくなってドロドロになるか、だそうだ。
トリュフは他のキノコと同じ、水分と鮮度が命。採ったらすぐ食べる。
温かい料理の上にかけると香りが広がるけれど、火を加えると(約70℃以上)成分変化を起こすため、食べる直前にスライスする。

信じられる料理人

残念な白トリュフを、高い値段で食べさせられるのは嫌だ。
ゆえに質を見極め適正価格で食べさせてくれる、と信じられる料理人の店に行くことになるのだが、私の場合、それは代々木公園「オストゥ」である。
(※賢人・マッキー牧元さんの「オストゥ」の記事はこちらの9月4日編へ

イタリアきっての白トリュフ産地といえばピエモンテ州アルバ。周辺のランゲ・ロエロ地区で採れたものを含めてアルバ産と呼ぶ。
宮根正人シェフはピエモンテ州で5年間修業している。
修業先「ロカンダ・ネル・ボルゴ・アンティーコ」はランゲ地区の一つ、バローロにある一つ星リストランテ。つまり白トリュフ地図のど真ん中で、シーズンになると毎日触っていた人ということだ。
で、宮根シェフはどうやって見分けるのか訊いてみた。彼もまた、見た目では正直わからない、と答えた。
「大きさや形でなく、触ってみること。僕の場合、決め手は香りです。1個1個嗅いでいくと全部違っていて、その中に“おっ!”って思うものがある。あーこれこれって。僕はそれを買っています」
私は、その「おっ!」を絶対的に信用している。

白トリュフは卵やチーズと相性がいい。
「オストゥ」ではこれまで、目玉焼き、スクランブルエッグ、タヤリンと言われる卵黄たっぷりのパスタ、フォンドゥータチーズを詰めたラビオリ、パルミジャーノのシンプルなリゾットなどでいただいたことがある。
テーブルで、これらの上にシェフが生のままスライスする。

私は、思い切りやっちゃってください、と大人ぶって言う。
はらはらと落ちてくる途中からもうくらくらきて、顔いっぱいに香気を浴びると、(寒くなったからといって)あのセーター買わなくてよかったと納得するのである。

9年、同じ料理をつくり続け、深めていく

2007年にオープンして、「オストゥ」はもう9年目に入っている。
この間、考えてみれば私はずっと同じ料理ばかり食べてきたのに、「好き」がずっと変わらない。
いや、それどころかどんどん好きになっていることに気がついた。

パン粉にセモリナ粉を混ぜた細かい衣で揚げるポルチーニのフリットは、衣の「カリッ」と、茸の「トロッ」が病みつきの食感。必ず小声でそっと「おかわり」と言ってみてしまう(しないけど)。
先のタヤリンは宮根シェフの場合、現地式に包丁で切り、すこし乾燥させてから木箱で保存する。日本では冷凍保存する場合が多いが、いい悪いでなく、それではソースの吸い込み方もタヤリン独特の素朴な歯触りも「彼のピエモンテ」と違ってしまうから。そしてあえて切る太さにばらつきを持たせ、食感を無意識レベルで変化させるところにおいしさがある。
あらためて書くと見事に地味な料理ばかりだ。
その最たるものが「ヴェルジェーゼ風リゾット」だろうと思う。

この料理と初めて会ったとき、鳥肌が立った。
茶色に近い赤紫の米の中に、月桂樹の生葉が一枚差してある。私はそれを、自著の中で「茶室の花の美しさと似ている」と書いたが、何ひとつ足すものも引くものもない、潔さ、そして深みを感じたのだ。
宮根シェフが歩こうとしている、迷いのない道が見えた。

ああそれから。
忘れずに食べて欲しいのが最後のお茶菓子として出てくるジャンドゥイオッティ。ピエモンテ名物のヘーゼルナッツチョコである。

「オストゥ」ではこれを手作りしていて、やわらかさと香りが断然違う。でも、その前に金色の包装をほどくのがもったいないほどの美しい折り方を眺めて欲しい。シェフの妻、美苗さんの作で、夫妻の清潔感が伝わってくるから。

<メニュー>
夜のコースは7,500円、白トリュフは+2,500円/3g(11月末まで)

<白トリュフ豆知識>
時折白トリュフに見かける赤いシミ。これはTiglio(シナノキ)の下に育った白トリュフに見られる特徴で、香りが強く出やすいのでいいトリュフを見分ける目安の1つとされている。
白トリュフの断面がの色が違うのは育った場所の木や土などの環境によって変わるためだ。

Ostu (オストゥ)

住所
〒151-0053 東京都渋谷区代々木5-67-6 代々木松浦ビル1F
電話番号
03-5454-8700
営業時間
12:00~L.O.13:00、18:00~L.O.22:00
定休日
定休日 水曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/gc22500/
公式サイト
http://www.ostu.jp/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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