めでたいお正月に飲む、あの人が溺愛した安定の味わいの一本

【連載】金曜日のシャンパーニュ week10  ここ数年、シャンパーニュを飲む人が増えている。香り、味わい、爽快感…他の「泡」では得られない満足感はシャンパーニュならでは。そこで、ちょっとリッチに過ごしたい金曜の夜に飲みたいシャンパーニュを日本を代表するワインジャーナリストでシャンパーニュ通として知られる柳忠之さんにセレクトしていただいた。

2016年01月01日
カテゴリ
レストラン・ショップ
  • レストラン
  • ワイン
  • 東京
  • 銀座
  • 連載
めでたいお正月に飲む、あの人が溺愛した安定の味わいの一本
Summary
1.チャーチルに愛されたシャンパーニュとして有名
2.42カ月という長い瓶熟成
3.日本を代表するソムリエによるシャンパーニュ専門店

新年明けての初シャンパーニュは、マニアックなRMものより安定感のあるメゾンの1本が好ましい。質的に振幅の大きなRM。年の初めにハズレを引いた日には、今年一年、何事もうまくいかないような気分になる。さて、どこのメゾンがよいだろう。ここはひとつ、気を引き締めるためにも、端正なスタイルのポル・ロジェにするとしようか。

英国宰相、ウィンストン・チャーチル

ポル・ロジェは1849年の創立以来、家族経営を貫く大手メゾン。モエ・エ・シャンドンやペリエ・ジュエと同じく、エペルネのシャンパーニュ大通りに拠を構える。1950年代からブドウ畑を買い増し、現在、自社畑の広さは90ヘクタール。これで生産量の50〜55パーセントを賄うという。

第2次大戦時の英国宰相、ウィンストン・チャーチルのお気に入りとして知られるポル・ロジェ。チャーチルが没した65年には、ラベルを黒く縁取りして弔意を表し、没後10年の75年には、遺族の了解を得たうえで「キュヴェ・ウィンストン・チャーチル」の初ヴィンテージを醸造している。
 
これは余談ながら、チャーチルが購入した最初のポル・ロジェは1895年ヴィンテージ。その他、14年、28年、34年、47年などのヴィンテージを好み、毎日少なくとも1本は開けていたというから、相当な酒豪だ。メゾンにとってはこれ以上のお得意先はないし、よい宣伝にもなったはず。なにしろチャーチルは所有する競走馬の一頭に、ポル・ロジェと名付けたほどなのだから。
 
チャーチルに限らず、ポル・ロジェは英国人好みのシャンパーニュだと思う。キリッとした辛口で、バランスがとれて隙がなく、ノンヴィンテージの「ブリュット・レゼルヴ」でも十分な熟成感がある。ルミュアージュ(動瓶)はオートマチックのジャイロパレット(動瓶機)に任せず、いまだ職人の手回しにこだわるところも、サヴィル・ロウのテイラーで仕立てたスーツのよう。ポル・ロジェのシャンパーニュを飲むと気が引き締まるのは、そのせいかもしれない。
 
年の初めから豪勢にキュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチルも一興だが、まずはブリュット・レゼルヴNV。現行は2009年ベースでこれに過去3年分のリザーヴワインが25%アッサンブラージュ(ブレンド)されている。瓶熟成期間は42ヶ月と長い。ドザージュは8グラムと低く、新鮮味と複雑味がよい案配で調和する。派手さはないが、じっくり飲み続けるとその良さがわかってくる。

さて、正統派のシャンパーニュを味わうなら、正統派のシャンパーニュ・バー。日本最優秀ソムリエのひとり、阿部誠さんが経営する銀座の「ヴィオニス」で。最適な温度とグラスでサービスされたポル・ロジェは、新年を寿ぐのに最上の選択だ。

※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら

Salon de Champagne Vionys

住所
〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-18 銀座8818ビル3F
電話番号
03-5537-0700
定休日
月~金 18:00~翌2:00(1:30LO)、 土 18:00~23:00(22:30LO)
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/gavz300/premium/
公式サイト
http://vionys.com/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。