ちくわぶ、すじ、花こんにゃく...寒い季節の横浜超ローカルおでん

【連載】クレイジーケンバンド小野瀬雅生の想う店・想う味 第10回 クレイジーケンバンドのギターにして、その食情報の確かさで多くのグルメなファンも持つ、小野瀬雅生さん。彼の愛する店、どうしても食べたくなる料理を教えていただく。

2016年02月16日
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ちくわぶ、すじ、花こんにゃく...寒い季節の横浜超ローカルおでん
Summary
1.東京とも違う味つけと具材
2.横浜にしかない「花こんにゃく」の正体は?
3.ジャガイモが入る焼きそばもウマウマウー

自分にとって馴染みのある食材が、実はローカルなもので他所の人は全く知らないのでビックリしたと云う話をよく聞きます。ワタシは生まれも育ちも神奈川県横浜市。親の仕事の関係上、転々と引っ越しましたが、ほぼ全て横浜市内。
北部の港北区、緑区、鶴見区から南部の戸塚区、泉区まで、そして中心部の西区、中区、神奈川区、ちょっと内陸部に入って保土ケ谷区、旭区にも住みました。磯子区とか金沢区とか、そっちは住んでいません。
一生の内で横浜市内の全部の区に住んでみたいとか思うのですが、そんな事はどうでもよろしい。横浜のローカルフードがどこにあるのかと云えば、おでんの鍋の中なのです。

「ちくわぶ」の思い出

おでんは子供の頃から大好物でした。あちこちの商店街に練り物を中心としたおでん種を売っている店があって、そこで買ってきたのをアルマイトの大きな鍋で煮て夕飯に戴きました。ワタシにとっておでんは夕飯のおかずであって、最近ようやくお酒のアテとしても戴きますが、でもやっぱりおかずとしての認識が大きい。そしてワタシがそのおでんの具の中で最も好きなのが、ちくわぶであります。

ご存じでしょうか、ちくわぶ。これが関東ローカルの食材であると知ったのは大人になってからです。端的に説明すると小麦粉に水と塩を加えて練ったのをちくわのように整形してある麩(ふ)。なので、ちくわぶ。
これを良く煮ておでんの汁がしっかり沁みたのが非常にウマイ。シェイプが崩れるほどグダグダに煮てあるのも、まだ内部に芯が残っているアルデンテ状態なのも両方好き。ご飯のおかずに炭水化物かと怪訝に思われましょうが、子供の頃から食べてるので疑問に思った事などありません。

牛ではない「すじ」

このちくわぶ、東京を中心として埼玉、千葉、神奈川の一部でしか存在しないようです。今でこそ地方のスーパーなどでも売られているようですが、やはり関東ローカル。同じ神奈川県内でも小田原の方に行くともうちくわぶは影が薄いようです。そして更にマイナーな関東ローカルな具が「すじ」。
関西で「すじ」なら牛スジでありましょうが、関東の「すじ」は正式名称スジカマボコ、サメの軟骨などが入った練り物なのです。多分ちくわぶよりも認知度が低いと思われます。ワタシは好きなんですけどね、「すじ」。こりこりとしたサメ軟骨の食感が楽しいのです。

絶滅危惧種?「花こんにゃく」

そしてそして、更に更にマイナーな具が御座います。花こんにゃく。横浜で生まれ育って、かなり年齢も重ねている方でないとご存じないかも知れない。
カマボコのエッジがギザギザしているような形状。色は薄い灰色。それをカマボコのように切って、おでんの具として煮るのです。そしてこの具の名前が花こんにゃくであると云うのも最近ようやく知ったのです。

その形状から朝日こんにゃくとか横浜こんにゃくとか、そんな呼び方もあるそうです。ワタシは子供の頃はギザギザコンニャクと呼んでいました。これが昭和初期に横浜で生まれた歴とした超横浜ローカルな食材なのだと知ったのはつい最近。東京にもないとはビックリ。
この花こんにゃく、作る時にでんぷんと小麦粉を混ぜてあります。ですから普通のこんにゃくとは食感が異なります。プリッとした歯応えではなく、噛むとすーっと歯が入って行ってシュッと噛み切れる感じ。何だかうまく説明出来ません。これを実際に戴けるお店が南区のローカルでディープな場所にあります。

街に愛されて60年余り

昭和25年から続けておられる『磯村屋』。年間を通したメインメニューは焼きそば。珍しくポテトと玉子が入る焼きそばです。具材はチョイス可能。そして夏はかき氷、秋から春にかけてはおでんが戴けます。

ここにはワタシの好きな関東〜横浜ローカルおでんの具、ちくわぶ、すじ、花こんにゃくが全部揃っています。入口横の鍋で煮えているおでんをセルフでお皿に取って(全品同一価格)、後で会計。
焼きそばが出来上がるまでおでんを戴きます。甘めの汁(横浜は東京より味付けが甘い)が具にしっかり沁みていて、どれも美味しい。
ウマウマウー。焼きそばも優しい味でウマイのです。

近所の方が鍋を持っておでんを買いに来たりしますので。夕方になるとおでんの具がかなり品薄になります。出来れば早めの訪問をオススメします。

それにしても、花こんにゃく、地味だなぁ。そこがまた魅力ですけれどもね。横浜に来て本当に横浜にしかないモノを食べてみたいなら、是非とも花こんにゃくをどうぞ。でもそんなに飛び上がるほどウマイってわけではないのであしからず。美味しかったです! 御馳走様でした!

磯村屋(イソムラヤ)

住所
〒232-0037 神奈川県横浜市南区八幡町4
電話番号
045-261-0956
営業時間
10:00~17:30
定休日
定休日 水・木曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/3dc834ac0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。