サロン、その厳格にして偉大なシャンパーニュについて

【連載】金曜日のシャンパーニュ week12  ここ数年、シャンパーニュを飲む人が増えている。香り、味わい、爽快感…他の「泡」では得られない満足感はシャンパーニュならでは。そこで、ちょっとリッチに過ごしたい金曜の夜に飲みたいシャンパーニュを日本を代表するワインジャーナリストでシャンパーニュ通として知られる柳忠之さんにセレクトしていただいた。

2016年02月05日
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サロン、その厳格にして偉大なシャンパーニュについて
Summary
1.シャンパーニュの中では孤高の存在
2.長い時間の熟成が必要なブラン・ド・ブラン
3.創業100年で38回だけのリリース

つねづね思うのが、シャンパーニュは熟成を重ねてなんぼ。最近は大手のヴィンテージでさえ7〜8年はざらで、プレステージキュヴェなら10年以上が当たり前。なかには10年以上寝かせてもなお若々しい、……というよりも、ガチガチに硬い印象の拭えないシャンパーニュがある。「サロン」だ。  

ル・メニル・シュール・オジェ村のシャルドネ生一本。初ヴィンテージの1905年から現行の2002年までわずか38ヴィンテージしかリリースされていない、孤高のブラン・ド・ブラン(白ブドウで造られた白いシャンパーニュの意)である。厳格にしていかめしく、フランス人がしばしば”Austère”(厳しい、厳格な)と表現するメニルのシャルドネのみから造られるだけに、鋼のようなミネラル感が和らぐには相当時間がかかる。最低でも10年寝かせた後でリリースされるにもかかわらず、新しいヴィンテージを出始めに飲むと、むちゃくちゃ硬い。だから、サロンにはリリース後の追熟が必須である。

そういえば、サロンはドゥラモットというもうひとつのブランドと姉妹関係にあるので、ドゥラモットの上位キュヴェという見方もしばしばされるが、それは少々違う。たしかにサロンを造らなかった年、そのブドウはドゥラモットのブラン・ド・ブラン・ヴィンテージに使われることがある。ところがその反対に、「今年はドゥラモット用のブドウが良かったから、サロンに入れてしまおう」とはならない。サロンのために収穫されるシャルドネは今なお、創立者のウジェーヌ・エメ・サロンが選んだ20区画のみに限定されている。その一つがメゾンの裏手にある1ヘクタールの「ル・ジャルダン」。その他は契約農家が所有する区画だが、1905年から今日まで、100年以上のパートナーシップが続いているというのだから恐れ入る。

熟成の話に戻すと、最近はまだ若いうちに口にするばかりで厳格さに圧倒されるのみだが、2005年頃に味わった88年ヴィンテージはじつに美味だった。この時代、サロンはすでにステンレスタンクでの醸造だが、なぜかナッティな香りに包まれた。一緒にいたサロン・ドゥラモット社長のディディエ・ドゥポン氏は、「それがメニルの神秘」と嘯いた。

今、自宅のセラーには99年が1本あるが、これが同じ17年熟成だ。ところが奥沢の「ラ・レガラード」には、96年ヴィンテージがあるという。90年代のサロンでも、とりわけ偉大とされる96年。果たして、どのようなフレーバーでわれわれを出迎えてくれるのか? それよりなにより、いったいおいくら、長田さん?

※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら

ラ・レガラード

住所
〒158-0083 東京都世田谷区奥沢2-11-8 1F
電話番号
050-3464-2584
営業時間
火~土 ディナー:18:00~23:30(L.O.23:30、ドリンクL.O.23:30) 日 ディナー:17:30~21:00(L.O.21:00、ドリンクL.O.21:00) 金~日 ランチ:11:30~13:30(L.O.13:30、ドリンクL.O.13:30)
定休日
毎週月曜日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/30yka13y0000/

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