酒は店内の自販機、焼鳥もセルフ! エンタテインメントな茅場町の居酒屋『ニューカヤバ』

【連載】幸食のすゝめ #022  食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2016年07月18日
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酒は店内の自販機、焼鳥もセルフ! エンタテインメントな茅場町の居酒屋『ニューカヤバ』
Summary
1.女性同士は入店不可!創業50年以上の男のパラダイス
2.毎日でも行ける本当のセンベロ
3.酒はもちろん焼鳥までセルフゆえの驚きの安さ

幸食のすゝめ#022、自販の聖域には幸いが住む、茅場町。

日本橋茅場町、ニューカヤバ。七夕の夜、2人の会社員が話している。「このきんぴらがいいんだよなぁ、ガキの頃、よく婆ちゃんが作ってくれた。あの頃は出しの香りと味噌を溶く匂いで目覚めたもんなぁ」「やっぱり、朝はトースト?ウチもそう!ま、朝メシ出ればいい方だけどさ」。
その時、若い女性が2人、入口の縄のれんを潜ろうとした。すかさず、女将の声が掛かる。
「ごめんねぇ、ウチは女性同士はお断りなの」。
凛とした声の中に、優しさが溢れている。ニューカヤバの平安は、開店以来、女将と娘の容子さん、2人の女性によって守られて来た。

50年以上男性専用車

「最近は電車に女性専用車ってできたでしょ、ウチは50年以上ずっと男性専用車なの」。容子さんが微笑みながら、話してくれた。女1人や、女性同士の客が男性で満員の店に入ってくると、一瞬にして店の空気が変わってしまう。リラックスして飲んでいた男性たちの、寛いだ雰囲気が壊れてしまうからだ。だから、カップルや1対1の男連れ以外は入店できない。
そして、ここの最大の特徴である壁際に並ぶ酒類の自販機にも、実はいくつものニューカヤバならではのこだわりが詰まっている。

街の居酒屋でサワーや、ホッピーを頼んでも、どんな焼酎が入っているか分からない。でも。自販機なら、金宮でも、麦でも、芋でも自分の好みを選べる。濃いのが好みなら、200円入れて焼酎をダブルにすればいい。ウィスキーも、バーボンやスコッチ、国産と銘柄が選べるから、好みのハイボールができあがる。オーダーが通り難かったり、ルールが難しいなどの接客ストレスもゼロ。おまけに上司や同僚と来た時に、話しが長かったら自販機行きを理由に席を抜けやすい。一見、無造作にさえ見える自販機の列は、実は客たちのストレスを軽減するための素晴らしい美徳。ニューカヤバが男たちの聖域と呼ばれる由縁だ。

もちろん、価格のリーズナブルさもニューカヤバの大きな魅力だ。花王やカネボウ、ミツカン、様々な証券会社、東京証券取引所。界隈は、江戸時代から続く日本を代表するビジネスエリアだ。しかし、舌が肥えた第一線の戦士たちでさえ、週に何度でも気軽に通える場所が欲しい。自宅と会社の間に立ち寄る大都会のオアシス、それがニューカヤバの存在だ。好きな酒を自販機で買って、好きなつまみをカウンターで選んだら、好きな場所に持って行って飲む。でも、その他にもニューカヤバには、ワクワクするようなお楽しみが待っている。それは、店の左奥に鎮座する炭火完備のセルフ焼鳥コーナーだ。

女将の秘策から産まれた素晴らしきエンタテイメント

葱を挟んだ国産の鶏肉は、街の焼鳥屋よりも大きいくらい、鮮度も見るからに新鮮だ。葱間も、つくねも、1本100円。カウンターで皿を受け取って焼鳥コーナーに行き、炭火でじっくり焼き上げて行く。

このクオリティを100円で提供できるのは、客のセルフ焼鳥という画期的なシステムの恩恵だ。どうしても、品質とボリュームを守りたかった女将の秘策は、思いがけない効果を生み出した。まるでキャンプのBBQのように自分で焼く焼鳥は、ビジネス紳士たちの童心に火を点け、焼鳥コーナーは、店いちばんの人気エリアになって行く。

日本のビジネスを支えるガレージ奥のワンダーランド

昼間はガレージだった一角に、赤提灯が提げられるとニューカヤバ開店の合図だ。客たちは自動車と自転車の合間を抜けて、馴染み深い大人のワンダーランドの暖簾を潜る。

カウンターに並ぶたくさんのつまみ類は、どれも手作りのお袋の味、値段もとびきり安い。

酒屋の角打ちがそのまま店に拡張したような店内は、昭和の街角に迷い込んだような安心感と喜びに満ちている。

窓の外には、隅田川に繋がる運河も見える。暖簾の左上にはプロ野球の中継が流れている。東京のビジネスの最前線を支えているのは、大都会の片隅で男たちを慰安する、こんな楽園の存在なのかも知れない。帰り際、赤提灯を後ろから見ると、「冒険倶楽部」という文字があった。自販の聖域には、幸いが住んでいる。

<メニュー>
自販機の酒(金宮/日本酒/麦焼酎和ら麦など)すべて100円
レモンサワー/ウーロンハイ400円、焼鳥/つくね100円
きんぴら200円、げそわさ250円、蛸ぶつ/鮪ぶつ300円

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

※森一起さんのスペシャルな記事『幸食秘宝館・武蔵小山、グルメランキング上位には載らないホントウの名店3軒を巡る』はこちら

ニューカヤバ銘酒コーナー

住所
〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町2-17-11 ※店舗の希望により電話番号は掲載不可
営業時間
17:00~21:00
定休日
定休日 土・日・祝
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/457j2hns0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。