【秋の味覚の総攻撃】神楽坂『山さき』でいただいた絶品鍋と松茸牛丼! 

【連載】クレイジーケンバンド小野瀬雅生の想う店・想う味 第23回 クレイジーケンバンドのギターにして、その食情報の確かさで多くのグルメなファンも持つ、小野瀬雅生さん。彼の愛する店、どうしても食べたくなる料理を教えていただく。

2016年10月08日
カテゴリ
賢人コラム
  • 神楽坂
  • 連載
【秋の味覚の総攻撃】神楽坂『山さき』でいただいた絶品鍋と松茸牛丼! 
Summary
1.神楽坂の落ち着いた雰囲気に合った、数少ない「江戸料理」を標榜する店
2.メインは年間を通して鍋という店でいただいた肉と松茸
3.〆は小野瀬さん曰く「世界最高峰の松茸牛丼」!

「これはウマイ!」と最初に感じたのはいつだったのだろうと考えてみるのですがなかなか容易に思い出せはしません。私が子供の頃は大変な偏食家で(毎度同じネタですみません)嫌いなモノは何かと云うよりも食べられるモノは何かを数えた方がずっと簡単でした。それが50歳を過ぎた今では好き嫌いがなくなってしまうなんてビックリです。
それはそうと最初の「これはウマイ!」は何だったか。私が生まれたのは昭和37年。高度成長期真っ只中。好況と不況を繰り返しながら全体的には上向きベクトルに跨がっていた時代。

私の住んでいた家にも様々な新製品や目新しい食べ物がウルトラマンの怪獣のように次々と出現しました。私は偏食家の常套句「いらない」を連発してどの怪獣の攻撃もやり過ごしていました。
チャレンジ精神が全くない子供のようでしたが、実際はずっと自分の中の大事なモノを守っていたのです。

何を守っていたのかと云えば、簡単に申し上げると美学。子供の頃はみんな美学を持っているでしょう。それが不細工だろうが理不尽だろうが意味不明だろうが、その美学に忠実に生きるのが子供。
自分の美学が削れたり割れたり曲がったりしないように、大事に抱きしめていました。
でもふと気がつくと腕の中にはもう何もなくなっている。
その時に「ああ、もう子供じゃないんだな」と思う段取りになっております。

なんて話は大幅に脱線しているように思われましょうが、子供の頃に大人ぶって「これはウマイ!」なんて口に出して悦に入るなんてのはよくありがちながら自分が大事にしている美学に添わない行為でして、これを私はなるべくやらないようにしていました。

常に「いらない」でした。「これはウマイ!」を思い出せないのも当たり前。
それでも私が現在ウマイと思う食べ物の大半は子供の頃にウマイと思った瞬間からの延長線上にあります。自分の中の決定的要因を日々「ウマウマウー」などと呟きながら今も深く模索中です。もしかしたら南極でピラミッドが見つかったなんてラブクラフト的な発見があるかも知れません。
ないかそんなの。

まだ夏の暑さも少し残る9月のある日、神楽坂の『山さき』に伺いました。
数年前、お世話になっている方に紹介されて始めて伺って以来、年に何度かの贅沢をこちらで堪能させてもらっています。こちらは江戸料理を標榜する数少ないお店。

江戸料理とは何ぞやなんて私が説明するのは手に余りますので割愛。
こちらのメインは年間を通して鍋。冬のねぎま鍋や寄せ鍋が名物ですが、9月のみ肉を使った鍋が戴けました。牛肉と松茸の鍋。今までなかなかタイミングが合わず遭遇出来ずにいたのですが、今回ようやく念願成就。

鍋が出てくるまでのお通し5品やお刺身もとても美味しい。しめ鯖に辛子のマッチングの妙。

海苔しぐれの深いうまみと酸味の取り合わせ。玉子焼きの濃厚な味わい。どれもシンプルながら真の心遣いが行き届いています。

その味わいがすっと心に届くのは、きっと子供の頃の私でもこれらはみなウマイと思ったと想像出来るからです。
海の幸のうまみと醤油の組み合わせの完璧さ。しみじみと沁み入るうまみの優しさ、そして力強さ。自分の奥底にあるウマイの原点はこうした味なのだと食べながら味わいながら一々納得するのでした。


さあメインの牛肉と松茸の鍋。

見目麗しい牛肉の色合い、そしてたっぷりの松茸。テーブルそれぞれに鍋奉行が付いてお給仕をしてくれるので心配は一切ナシ。一番の食べ頃を逃すことはありません。

濃厚ながらすっきりとした味わいのだしが引き出す牛肉のポテンシャル。

そして松茸の崇高さ。香り、食感、味わい、そして後味に至るまで感覚総動員ウルトラ兄弟勢揃いで迎え撃つも、秋の味覚怪獣軍団の攻勢に目を閉じて薄ら笑いを浮かべるだけの体たらく。
だしには甘ったるさ一切ナシ。だからこそ感じられる牛肉の甘みに瞠目。

醤油グッジョブ。鍋ブラボー。
気がつくとお酒も随分と進んでいてすっかり良い気分。

そこに追い打ちをかけるようにご飯の登場、そして禁断の汁かけにダメ押しの牛肉松茸トッピング。
世界最高峰の松茸牛丼。ウマウマウー。

最後のお菓子も手作りで最後の最後まで一貫した世界観に包まれて御満悦。
冬のねぎま鍋も楽しみにしております。

美味しかったです! 御馳走様でした!

山さき

住所
〒160-0000 東京都新宿区神楽坂4丁目2 福屋ビル 2階
電話番号
03-3267-2310
営業時間
18:00~20:00(閉店22:00、要予約)
定休日
日曜、祝日(GW休、盆時期休、年末年始休、臨時休あり)

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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