渋谷・のんべい横丁「行きたいけれど、どの店に行けばわからない」というあなたのためのパーフェクトな5選

【連載】幸食のすゝめ #042 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2017年05月17日
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渋谷・のんべい横丁「行きたいけれど、どの店に行けばわからない」というあなたのためのパーフェクトな5選
Summary
1.渋谷駅から徒歩すぐ、JR山手線沿いに広がるディープな横丁
2.終戦直後から66年、再開発の波に翻弄されながら生き延びた昭和の風景
3.初心者でもそのディープな世界に触れることの出来る5軒を紹介

幸食のすゝめ#042、漂流の街、渋谷のんべい横丁はしご酒指南

「今、どこですか?」、表通りの石垣前で古い友だちのチャッピーからの電話。
ここは漂流する横丁だ。誰もが1軒だけでなく、2軒、3軒とはしご酒を楽しみ、来た時より少し元気になって帰って行く。
渋谷のんべい横丁の小さな路地は、たくさんの優しさでできている。
そして、肩を寄せ合う40軒程の小さな店は、決して楽しいことばかりじゃない人生を照らす、小さな灯台なのかもしれない。
(イラストMAP/小西康隆)

のんべい横丁の正式名称は、渋谷東横前飲食街協同組合。現代は駐輪場になっている渋谷川とJRの高架に挟まれた、小さくて細長い土地だ。
渋谷駅ハチ公口からわずか3分で、一気に昭和にタイムスリップする奇跡の横丁。その前身である屋台が、渋谷の街にでき始めたのは昭和20年。東京大空襲で渋谷が更地同然になってから、まだ間もない頃だ。
その中で、現在の東急本店通りと、渋谷駅前で屋台を出していた人々が集まったのが現在ののんべい横丁。理由は新宿ゴールデン街と同じく、GHQの指導だった。

その後66年間、何度も再開発の波に翻弄されながらも、線路と渋谷川に挟まれた小さな横丁は昭和の良き時間を温存した。
やがて、高層ビルが建ち並ぶ渋谷の街角に、ぽつんと残ったのんべい横丁には、少しずつ新しい客たちが訪ねてくるようになった。若者たちは、古き佳き昭和の匂いを。外人たちは、クローゼットサイズの店が立ち並ぶ異郷を。誰もが、自分の中ののんべい横丁を求めて集まる。
しかし、価格表示がない、扉が閉ざされた小さなパラダイスの敷居は、一見にはハードルが高い。
今回は横丁歴30年オーバーの航海術で厳選した5軒を、ここでそっと伝授しよう。

さぁ、書を捨てよ街に出よう。渋谷駅のすぐそば、のんべいたちのエルドラドへ!

和酒と民藝に出会う門、1軒目=『黍/kibi』

2000年代の初め、代官山と恵比寿の真ん中あたりに『棗(なつめ)』という人気の店があった。アジアン・リゾート系のインテリアを東京中に流行らせた伝説の店だ。
和とアジア、インドが混在した料理も秀逸。店内のスタッフはモデルや役者の卵たちで、その後ビックネームになったコたちも多い。
その中で、店を采配していた凛とした長身美人が五嶋佳代さんだ。その後、佳代さんは恵比寿から渋谷に舞台を移し、のんべい横丁へ。
横丁で2番目にプロデュースした店が『黍(きび)』だ。

『黍』は当初、癒し系でキュートな店内で、さまざまなオリジナル料理を楽しむ店だったが、前スタッフの卒業と共に最近リニューアルされたばかりだ。
今回は佳代さんがカウンターに立ち、各地の風土から生まれ、生活に根ざした民藝の器と和酒にこだわって、静かな時間を紡いでいる。
日本酒だけでなく、ワインやウイスキーも和酒に特化。全国から集められた民藝の器たちと端正なハーモニーを奏でる。

ワインは現在、甲州をメインにしたラインナップ。季節に寄り添う厳選された日本酒は、折々に全国から届くらしい。ビールは以前から好評だったガージェリーエステラ。厳正した焼酎も揃っている。
のんべい横丁の1軒目は、大人っぽく静かに『黍』から始めよう。四季の国に生まれたことを感謝したくなる落ち着いた店。今後の旅先について、佳代さんのアドバイスだって聞くことができる。

<メニュー>
日本酒八勺800円/五勺500円、グラスワイン600円/ボトル3,000円~、
ガージェリーエステラ800円

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

黍/kibi

住所
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-25-9のんべい横丁
電話番号
03-3797-6303
営業時間
18:00~24:00
定休日
月・土・日

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

世界に向けられた解放区、2軒目=『Curva』

2軒目は、さらにバー感が強い『Curva』へ行こう。
神戸からやって来た、よっさんこと立石良広さんは、もともとのんべい横丁にやって来た観光客だった。観光1日目に横丁に来て隣り合わせた客と仲良くなる。
「明日は何やるの?」、「晴れたら浅草観光です」、「そう!じゃあ雨が降ったら、また横丁においで」。
案の定、次の日は雨。連れ回された怒濤の東京ナイトに心底惚れ込み、程なくして上京。のんべい横丁で修業して自分の城を築いた。ちなみに、その夜の3軒目は、佳代さんの『棗』だった。

『Curva』とは、イタリア語のカーブ。サッカーの試合場で熱狂的なファンたちが集まる、ゴール裏のリーズナブルな席の通称、サッカーファンのよっさんらしいネーミングだ。
関西人の人なつこさとソフトな会話。キリッとした、うまい酒。扉が開放されることが多い『Curva』は、いつも外まで溢れた内外のお客たちでいっぱいだ。
近所の店を行き来する客、トイレの帰りに店を間違えてしまう客、横丁の夜はまだ始まったばかりだ。

モヒートや生姜ハイなどの人気ドリンクのほか、ウイスキーやジン、ラムと豊富な酒の種類。モニターで流れている映画、いくつもの国の外国語。日曜担当のオースティンは、フランス語もクリアだ。
今夜、ここで語られるすべてが、明日からの生活に色を与えてくれるはずだ。
国籍も、性別も、年齢も越えて1つの空気の中で心地いいグルーヴに身を任せる。
そんな気分にさせてくれる横丁なんて、ここ以外には見つからないはずだ。

<メニュー>
モヒート800円、生姜ハイ700円、グラスワイン700円、白州900円、
季節の日本酒700円、フード300~600円、

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

Curva (クルヴァ)

住所
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-25-10のんべい横丁
電話番号
03-3400-5770
営業時間
18:00~26:00
定休日
無休

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

曜日変わりの美味しいアミューズ、3軒目=…

『Curva』の1つ隣りにあるのが、『黍』の佳代さんがのんべい横丁で最初に開いた店だ。続く2軒とも外国人たちに人気の店なので、フランス語や、ドイツ語、英語などが店の外まで聞こえて不思議な異国感を漂わせている。
2階席もあるが、彼らの多くは1階での「相席」を希望する。小さな店で今日会ったばかりの人たちと肩を寄せて酒を飲むこと。
横丁の醍醐味を誰よりも知っているのは、外国のお客さんたちかもしれない。

この店のユニークな特徴はカウンターに立つスタッフによって、全く店のキャラクーが変わってしまうことだ。
週の初め、元鮨職人だったヒカルこと小林光さんの月・火曜日は鮨バー。夜が更けて、横丁の片隅で鮨をつまむ至福は一度味わうと病みつきになる。
水曜の休みを挟んで木曜から土曜日の夜は、鮨から一転してイタリアンへ。恵比寿で『クアーレ』を主宰する福地一也さんが出張メニューで腕をふるう。
残る日曜は、新スタッフの坂上由貴さんが立つ、静かなバーへ。そのすべてにトライするファンたちも多い。

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