いま要注目の街、浅草・観音裏で「チューリップ」が名物のマイクロビストロがグルメたちの話題になっている

【連載】幸食のすゝめ #044 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2017年06月09日
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いま要注目の街、浅草・観音裏で「チューリップ」が名物のマイクロビストロがグルメたちの話題になっている
Summary
1.40代以上の人には懐かしい「チューリップ」と「ウフマヨ」が名物のビストロ
2.ここ1年くらいの間に注目のグルメエリアとなった浅草・観音裏に4月オープン
3.伝説の店、銀座『グレープガンボ』や浅草橋『FUJIMARU』の元料理長

幸食のすゝめ#044、自由な皿には幸いが住む、浅草観音裏

「何か食べる? やっぱりチューリップかな」、入って来たカップルの男性がオーダーする。「それと、ウフマヨね」。

すかさずシェフの山田武志さんが笑顔で応える、「はいっ、ウチは唐揚げ屋さんなので!」。
4月にオープンして以来、すっかりメニューの鉄板になった2品には、「もっと気軽に、ワインと料理を楽しんで欲しい」という山田シェフの思いが込められている。

かつて体育祭やピクニックのご馳走の定番だったチューリップは、どこか昭和を思い出させる郷愁のアイテムだ。最近、すっかり見かけなくなったせいか、店に訪れる若い客たちはそのユーモラスな造形に目を丸くすると言う。

鶏肉は、近くの千束通り商店街にある『竹松鶏肉店』で調達する。吉原に抜ける同じ場所で、130年続く老舗だ。山田シェフは、この店を先輩の和知徹さんから教わった。肉のファンタジストとして著名な、銀座『マルティグラ』のオーナーシェフだ。

山田シェフと和知さんは、かつて銀座三原小路にあった人気ビストロ『グレープガンボ』の卒業生だ。初代と4代目、店では交差しなかったが、先輩としていろんなことを教わったと言う。
ガンボはニューオリンズ、クレオール料理の定番。
オクラが入ったごった煮だ。

従来の枠に囚われない、自由で柔軟なナチュラルワインをがぶがぶ飲んで、うまい料理を思う存分食べる。絶妙なネーミングセンスは、オーナー勝山晋作さんのワイン好き、音楽好きが爆発している。
溢れ返る音楽のグルーヴの中、働き盛りの大人たちが自腹でワインを浴びるように飲む。それはまったく新しい価値観だった。

「さっきの肉、すごく美味しかったよ」、「ごちそうさま!また、来るよ」。
『グレープガンボ』では、調理場と客に境目がなかった。
ヌキテパ』から始まって、熱海のオーベルジュ、ハンガリー大使館、パリの『ザ・キッチン・ギャラリー』など、いつも客からは見えない場所にある厨房の中で料理していた山田シェフにとって、それは新鮮で喜びに満ちた体験だった。

浅草橋の『FUJIMARU』料理長を経て、自分の店を開く時、頭の中にはいつも『グレープガンボ』の熱いグルーヴがあった。
観光客で渦巻く仲見世と浅草寺を越えたら、突然目の前に現れる異空間。
観音裏に出逢った時、場所はここに決めようと思い、『FUJIMARU』の昼休みに自転車で物件を探した。

マイクロビストロという肩書きが付いたこの店は、山田シェフ1人で料理を作り、接客する。
客は開口一番、まずはウフマヨを頼んで、山田シェフが選んだナチュラルワインをグラスで注文する。料理とワインのペアリングをシェフ自身から聞きながら、これから始まる幸福な時間に胸が躍る。

ウフマヨの主役、マヨネーズは、塩と酸の代わりをアンチョビとマスタードで調理する。ただの茹で玉子なのにしっかりとうまい。人気のチューリップに使うスパイスは、蔵前にあるアフリカ系の香辛料店で調達。クスクスやムサカなどのエキゾチックなフレンチを思わせる。

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