呑兵衛のパラダイス武蔵小山の星『豚星』の新展開は何とアメリカンピザという驚き

【連載】幸食のすゝめ #049 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2017年08月15日
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呑兵衛のパラダイス武蔵小山の星『豚星』の新展開は何とアメリカンピザという驚き
Summary
1.「ピッグマック」に「スキヤキ」「ウニのクリーム」…日本人の繊細な味覚に合わせたアメリカンピザ
2.ピザが売り切れても、キンミヤを使ったレモンサワーや生ビールを片手にサイドメニューで楽しめる
3.直系50cmの薄くて巨大なアメリカンピザを目にして立ち止まるい人続出!

幸食のすゝめ#049、チーズの円盤には幸いが住む、武蔵小山

「ママ、これ食べたい」、青いヘルメットを被った男のコがライトアップされたピザのウィンドウを覗いている。
「ピッグマック」だろうか? 上に載っている、小さな豚のミンチボールに惹かれたのかもしれない。
某有名ハンバーガーへのオマージュで作られた、キョンちゃんこと佐藤喜与佳さん流のアメリカへのアンチテーゼ。
味は限りなく近いが、食材も、製法も、決してジャンクではない。一つひとつの材料は、すべて店で手作りしている。

ジャンクに見えて、実は素材に妥協しないアメリカンピザ

「お子さんが食べられるように、最初から辛い材料とかスパイス使ってないから、安心してあげてください。ウチのは、添加物とか出来合いのもの使ってないから!」、店主のキョンちゃんがテキパキと親子に説明している。
後ろでは、『豚星』からのスタッフ、ナガシーが、「スキヤキ」の味付け用の昆布だしを作っている。だしを引いたあとの昆布は、千切りして他のピザのトッピングに使われる。今回新しく仲間になったキョンちゃんの古い友だち、マヨちゃんはカウンターの中を駆け回っている。
必要最小限の具材と種類、徹底して生地の美味しさを伝えるミラノピッツァに対して、ジャンクで雑なイメージがあるアメリカンピザ。ここは、アメリカンピザを日本人の繊細な味覚で翻訳した全く新しいジャパニーズ・アメリカンだ。

遠くからでも目に留まる、異彩を放つ一軒

武蔵小山の駅を降り、かつて東洋一と謳われた巨大アーケード、パルム商店街の入口を左に見ながら直進し、26号線を渡ると『牛太郎』や『みやこや』、『自慢亭』など、街の老舗が並ぶ一角に入る。その中で異彩を放つ建物が、七夕の日にオープンしたばかりのこちらだ。
最近、見慣れてきたミラノのピッツァと違い、直系50cmの薄くて巨大なアメリカンピザは、遠くから歩いてくる人たちの目にすぐに飛び込んで来る。だから、そのまま素通りする人はほとんどいない。

実はピッツァ激戦区の武蔵小山になかった「ピザ」

『ラ・トリプレッタ』、『ピッツェリア・ラ・ロッサ』、『ピッツェリア・ベント・エ・マーレ』…。居酒屋やラーメンの激戦区・武蔵小山は、実はピッツァの激戦区でもある。そんな中、今やムサコを代表する人気店となった『豚星』が新店をオープンすると噂された時、人はみんなサイドメニューをさらに進化させたもつ焼き屋がオープンすると信じていた。
しかし、解答はアメリカンピザ。しかも、テイクアウト対応。何度も訪れたニューヨークの旅の印象が、そのままこの店の味になった。
リトルイタリーから、チャイナタウン、日本人街と化したイーストヴィレッジ。
メルティング・ポットなNYの日常が、大きなアメリカンカットのピザの中に込められている。

人の数だけ、アメリカンピザの楽しみ方がある

「イワシ2枚と、ペパロニとピッグマック、温めなくていいよ」。
「ウニ2つ、今食べ歩きしちゃう」、1人が自転車、1人が徒歩の男性同士の客が来る。
もうすっかり、ムサコの街は夜の帳に包まれている。
流しっぱなしのヴァージンラジオからは流暢なフランス語のDJで、シルヴィ・バルタン。唐突に、哀切な口笛のメロディー、「レティシア」が続く。映画「冒険者」たちで、繰り返し流れる名曲。ヒロイン、ジョアンナ・シムカスに捧げられた曲だ。
21時少し前、ボーダーのニットを着た、地元のマダムがやって来る。「あるだけ、全部ちょうだい!」、ペパロニ2枚とピッグマック、スキヤキ2枚、最後のピザが無くなって行く。

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