なぜ酒はバーで飲むべきなのか?

【店づきあいの倫理学】店は生きものであり「おいしさ」や「楽しさ」は数値化できない。だから顔の見えない他者からの情報「評価」を比較して店や食べるメニューを決めたりすることは無効だ。その店だけの「固有の身体感覚」のようなものがあり、その場その時の「代替不可能な店側/客側のコミュニケーション」が、その店の真価を決定づけている。「店と客の関係性」をもとに「よりおいしく食べるための店づきあい」の方法とは?

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なぜ酒はバーで飲むべきなのか?
Summary
1.中身や温度が同じ酒なのに、バーで飲むとどうしてこうもうまさが違うのか?
2.味覚が情報ではないように、人はデータではないということ
3.同じバーに長年通う理由とは?

ここ数カ月、立て続けに2冊のグルメ誌で「バー特集」があって、久しぶりに酒場やカクテルの話を書いた。

酒は料理と違って、その店のご主人やバーテンダーの自家醸造酒や蒸留酒というのがない。
また洋酒のカクテルにしても、定本とされる『サヴォイ・カクテルブック』や『バーテンダーズ・マニュアル』などに登録されているカクテル名とおのおのの模範とされるレシピがある。

だから「うまい/まずい」については、ライムジュースで割って飲む場合、ジンベースにするかラムにするか、またジンだったらゴードンかタンカレーを選ぶかなどの個人的、属人的な好みが「初めにありき」になる。

取材記事を書く場合も、その店の何のカクテルを採り上げるかによって書き方がまるで変わってくる。
ほぼストレートか水割りかで飲むスコッチについて、その魅力を書く場合は、取材対象となるバーのことよりも、そこで出されるスコッチの銘柄についての原産地の土地柄や醸造蒸留法といったものになってくるから厄介だ。
基本的にどこのバーで飲んでも同じ「おいしさ」になるはずだからだ。

ここ10年ぐらい、生の果物を使ったフルーツカクテルやその店のバーテンダーの創作カクテルがメディア的にスポットライトを浴び、客側に料理店の場合のように「おいしいその店のカクテル」を求める趨勢があるのは、その酒に対してのある種の「自由さ」みたいなものを求めるからなのだろう。

けれども例えばビールの場合、同じキリンラガーでもコンビニで買ってそのまま飲むのと、行きつけの居酒屋で飲むのと「味が違う」ということは誰もが感じることだ。
同じ仕事帰りののどが渇いている状態であって、缶やビールの中身や温度が同じなのに、どうしてこうもうまさが違うのだろうか。

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