なぜ「シャンパーニュ」は祝祭のお酒なのか?

みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
♯祝祭にオススメの「シャンパーニュ」

2017年12月15日
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なぜ「シャンパーニュ」は祝祭のお酒なのか?
Summary
1.なぜ「シャンパーニュ」は祝祭のお酒なのか?
2.シャンパーニュ騎士団おすすめの「シャンパーニュ」3選
3.クリスマスで恋人と飲むべき「シャンパーニュ」。親友と飲むべき「シャンパーニュ」

実に、ストイックに育まれたお酒。それが「シャンパーニュ」

クリスマス、年末年始のシーズン。やはりそこにはシャンパーニュが似合う。そう、シャンパーニュは生まれたときから祝祭の酒だ。1750年代のパリ、王宮。ルイ15世とマダム・ポンパドゥールが舞い踊り、そこには新しい黄金色の発泡ワインがあった。ナポレオンの時代から現代の戦士たち、例えば世界最高峰のモータースポーツやヨットレース、フットボールでは、祝勝の場に最もふさわしい酒として、そのセレブレーションを飾ってきた。「007」、ジェームズ・ボンド。そのスクリーンに必ずシャンパーニュが登場するのも、それは愛と仕事の勝利の象徴。

一方で人生の苦悩をいやしてくれる酒でもあった。文豪アーネスト・ヘミングウェイは、こう言った。「金があるときにはまずシャンパーニュに金を遣う。それが金の一番正しい遣い方だ」。極貧にあえぐ若手時代。成功を掴んでシャンパーニュを飲む先達を見ていた日々。おそらくヘミングウェイは思った。あれが成功した者の幸せなのだ、と。そして挫折と成功とを繰り返したナポレオンも「勝利をすればシャンパーニュが飲める。負けたとすればシャンパーニュを飲む必要がある」と言ったとされる。一杯のシャンパーニュが、勝利の証にもなり、再び胸を張って生きるエナジードリンクにもなる。

一方でシャンパーニュは実にストイックに育まれたお酒でもある。1650年代、オーヴィレール修道院。今もシャンパーニュの名前としてオマージュされ続ける修道士ドン・ピエール・ペリニヨンらの尽力によってその原型が作られたが、とにもかくにもシャンパーニュ造りは難しかった。

冷涼な環境だからこそ生まれる、美しき「シャンパーニュ」

そもそもシャンパーニュは、スパークリングワインの総称でもないし、他のスパークリングが名乗れるものではない。ざっくりと言えば、「シャンパーニュという指定された地域」で「シャンパーニュの限定されたブドウ品種」を「シャンパーニュ独自のメソッドとルール」を用いて造られなければその名を名乗れない。このブランドを守る裏側には、恵まれない土地、環境を英知によって恵みに変えたという誇りがある。

シャンパーニュは数多くの名産地(ボルドーであったりブルゴーニュであったり)を持つフランスにあって、ワイン造りの北限。霜や雹も容赦なく襲ってくる年もあり、春先も霜が降りる。冷涼すぎて当時の感覚からすれば、まともなワインなど作れないという場所。その場所だからこそできるワインを追求した結果が世界のどこにもない黄金の泡だった。冷涼な環境だからこそ生まれる美しい酸と輝き。エレガンスとミネラル感なのだ。

なぜ「シャンパーニュ」は祝祭のお酒なのか?

さらに、天然のカーヴ(貯蔵庫)がある。古代ローマ時代。占領したシャンパーニュ地方でワイン造りを試みたローマ人たちは冷涼な気候とともに石灰質という土壌を前に、企みを諦める。その代わり、良質な石灰岩を建築用として掘り出し、運び出す。ランスやエペルネといった中心地の地下はローマの搾取の象徴のように空しく空洞があいたが、これが恵みとなる。くりぬかれた石灰の地下道は1年中、最適な温度と湿度とほの暗さを保ち、シャンパーニュにとって最良の状況で眠りにつくことができる。挫折、苦難と思われていたものが勝利の祝祭へと変わる。シャンパーニュは祝祭の酒。なぜか? それはテイストやバブルだけではない。長い歴史を含めた物語がボトルの中に閉じ込められ、それが抜栓とともに光を放つからなのだ。

クリスマス、年末を飾る! シャンパーニュ騎士団おすすめの「シャンパーニュ」がこれ

1年を振り返り、祝い、次の1年を明るく祝う場所にふさわしいシャンパーニュ。そんなストーリーを思いながら、自分の物語に重ね合わせて選ぶのはどうだろう。毎日の仕事に悩み、疲れ、それでも仕事にやりがいをもって取り組んだ1年だった。恋に悩み、疲れ、それでも恋やら愛やら、青いかもしれないけれど信じている。状況は良いことばかりではないけれど、この出逢いからきっとなにかが始まる。毎日を戦ってきた自分、2人、仲間へのご褒美……。

クリスマス、年末年始、そこにあるべきシャンパーニュを3つ紹介しよう。

「メゾン マム マム グラン コルドン」

ボトルに描かれた印象的で立体的な赤いリボンは、フランス最高勲章「レジオン・ドヌール」がモチーフ。2000年から15年もの間、F1の表彰台での公式シャンパーニュとして、世界各地で行われる最高峰レースの勝利の瞬間を祝福してきた『メゾン マム』の新アイテムだ。

なんといってもコンセプトが「挑戦、勝利、祝福」。『メゾン マム』も、このワインを手掛ける最高醸造責任者ディディエ・マリオッティ自身にとっても、このプロジェクトは挑戦。ブランドの命でもあり骨格でもあるピノ・ノワールを軸に、パワー、瑞々しさ、凝縮感からの溢れんばかりの生命力という表現に挑んだ。まさに、口にした瞬間、喉を通した瞬間、挑んだ表現力が力強く、しかしエレガントに伝わってくる。造り手の挑戦を味わい、自分の挑戦への力に変える。黄金に輝くグラスは、一足早い勝利のトロフィーになる。

次に、大切な恋人と過ごす、クリスマスにぴったりなシャンパーニュがこれ。

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