豚肉の旨み凝縮、フロマージュ・ド・テットはご存じか?

【連載】マッキー牧元の「ある一週間」 第9週  日本を代表する食道楽の一人、マッキー牧元さん。彼はどんなものを食べて一週間を過ごしているのか。「教えていいよ」という部分だけを少しのぞき見させていただく。

2015年11月14日
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豚肉の旨み凝縮、フロマージュ・ド・テットはご存じか?
Summary
・高知、割烹で堪能する米の旨さ
・福井県小浜の地魚
・六本木、日本一のフロマージュ・ド・テット
・銀座と鶏とすっぽんと

10月4日「ご飯の愛し方」

高知の割烹「座屋」にて、ご飯五段活用。
オーナーの奥さんのお母さん89歳が、無農薬で作ったお米だという。
まずは炊きたてご飯の一文字飯。
箸で口に持ってきた瞬間、甘く香り、目を細めながらいただく。
固めのご飯は噛めば噛むほどに甘く、優しい。
一致団結しながらも、米一粒一粒が主張してくる、たくましさに満ちている。
ああ、しみじみと、しみじみと、おいしい。

次は小振りな、土佐ジローの卵をかけて。卵はコシを切りすぎないように少しだけ混ぜ、ご飯に醤油を一垂らししてから、よくよく混ぜる。
卵の豊かな甘みと米の甘みが抱き合った。
次は、塩をはらりとかけて。
ううむ米の甘みが際立って、もう笑いが止まりません。
そしてお次は、こそげとったお焦げに醤油を二滴垂らして、カリカリバリバリ煎餅状態.
最後は特別にお願いし、釜に湯を注ぎ、お焦げをこそげて湯桶にしていただいた。
塩を振って混ぜ、茶碗に口をつけ、ざぶざぶっと掻き込めば、ああ、日本人としての幸せ、ここに極まる。

座屋

住所
高知県高知市廿代町2-8 廿代ビル1F
電話番号
050-5494-3346
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
月~金・日・祝日
ランチ 12:00~14:00
(L.O.13:30)
ディナー 18:00~21:30
(L.O.21:00、ドリンクL.O.21:00)

土・祝前日
ディナー 17:30~23:00
(L.O.22:00、ドリンクL.O.22:30)
定休日
不定休日あり
◆4月店休・・・1日◆4月カウンター休みの日・・・2,3,8~10,15~18,22~25,29,30日はお休み頂いております。◆ランチ休みの日・・・土曜日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/s033801/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

10月5日「地魚のにぎり」

「地の魚を握ってくれますか?」と、小浜「すし良」で頼むと、鯖にツバス、丸アジにノドグロ、レンコダイにアオリイカを握ってくれた。
ほのぼのとした田舎の握りの上で、魚たちがキラリと跳ねる。

すし良(スシヨシ)

住所
〒917-0093 福井県小浜市水取1-8-14
電話番号
0770-53-1521
営業時間
11:30~14:00、17:00~21:00
定休日
定休日 水曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/3wmx7unf0000/

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10月8日「豚への愛に満ちたひと皿」

「フロマージュ・ド・テット」に初めて出逢った時、なぜ豚肉なのにチーズを名乗るのか? と思った。
調べてみると、フロマージュの語源はローマ時代にさかのぼり(注1)、「型に入った」→「形作る」という意味で、テットは頭だから(注2)、「頭を形作ってまとめました」という意味になるらしい。
しかし、「ブーケドフランス」の「フロマージュ・ド・テット」はまとまっていない。
まとまっているようでもあるが、ゆるゆるである。
豚の首皮肉にまとめられながらも、耳、タン、頬肉たちが、気持ちよさそうに背伸びをしている。
食べれば、首皮肉のコラーゲンの甘さが目を細めさせ、タンの柔らかな滋味が流れ、頬肉が歯を抱き込み、耳がコリっと弾む。
このゆるいまとまりこそ、豚と豚の頭を愛したがゆえのゆるさなのである。互いの食感と味わいを活かすべく考えられた、ゆるさなのである。
それぞれの部位が的確な大きさで身を寄せ合って、歯や舌に訴えかける。
食べるごとに、「どう? おいしいでしょ」と、井本シェフが耳元で囁いて、笑ってしまう。
そんな豚への愛に満ちた「ブーケドフランス」の「フロマージュ・ド・テット」は、日本一だと思うのである。

(注1)ローマ時代にチーズは「カーセウス・フォルマティクス」と呼ばれた。「カーセウス」とは凝乳、つまり軟らかいチーズ状のものを指し、この言葉はイタリア語の「カッチョ」、ドイツ語の「ケーゼ」、そして英語の「チーズ」へと派生していった。一方、「フォルマティクス」は、「型に入った」という意味で、凝乳を樅や樺の木の皮などで作った型枠に流しこんで石をのせて脱水したことに由来している。「フォルマティクス」は後に、フランス語の「フロマージュ」やイタリア語の「フロマッジョ」に派生していった。

(注2)新ラテン語(ロマンス語)は正しいラテン語の代わりにローマ軍の兵舎で生まれた俗語を取り入れた。頭はCaputと呼ばれていたが、兵隊がふざけてTesta(丸鍋)を頭の意味に使った。これがteteとなってフランス語になり、testaとなってイタリア語に残った。ちなみにCaputマフィア言葉の「首領」という意味で今でも残っている。

ブーケ ド フランス

住所
〒106-0032 東京都港区六本木7-10-3
電話番号
03-3497-1488
営業時間
11:30~13:30、18:00~21:30
定休日
定休日 火曜・第3水曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/kr5tedge0000/
公式サイト
http://bouquetmm.exblog.jp/

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10月13日「真木よう子を想像した」

天然スッポン@璃宮

ふと気がついたら火が通されて、ふと気がついたら、塩味が付いていたんです。
鶏がそう言っていた。
お腹にエシャロットと香菜、ハマナスの酒で漬けたほうれん草を詰め、岩塩で包み、蒸し焼きにした料理である。
しなやかな肉に歯がつつまれると、塩味が自然に溶け込んだ、穏やかな滋味が流れでる。
ああ。ああ。うまい、
噛むほどに、心が安らいでいく。
噛むほどに、おいしくなれと念じた、厨士の思いが沁みていく。
これほどまでに鶏をいたわり、愛した料理はあるのだろうか。
食べるたびに、鶏が愛おしくなる。
食べるたびに、鶏と同化していく。
止まらない。次の料理があることはわかっている。しかし食べても食べても、指は無意識のまま次の鶏肉をつかんでしまう。
ふと、真木よう子が食べる姿が見たくなった。彼女は、この鶏肉を手でつかみ、ゆっくりと噛んで、目を閉じる。
そして目を開け、こちらを見、無言で微笑むのである。
銀座 赤坂璃宮の名菜。

赤坂璃宮

住所
〒104-0061 東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル5F
電話番号
050-3491-0761
営業時間
月~土 ランチ:11:30~15:00(L.O.15:00) 日・祝日 11:30~16:00(L.O.16:00) 月~土 ディナー:17:30~22:00(L.O.22:00) 日・祝日 16:00~20:30(L.O.20:30)
定休日
年中無休 ※(年末年始を除く)
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/g043401/

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