【連載】知りたいパリ、変わるパリ。

いまや世界は狭くなり、パリで起きている情報はすぐに手に入れることができる、、、と思いがちだけど、やはりパリに暮らしその空気を吸った人だけが感じられる「今」がある。パリでレストランのコンサルタントをし、日常の暮らしがあるからこそ見えてくるもの。そんな本当の最先端のパリの食事情を伝えていただく。

2015年09月14日
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【連載】知りたいパリ、変わるパリ。
Summary
・パリ市内には300軒を超える新しいスタイルのワインバーが
・注目のレストランの地下に出来た最新店とは?

フランス人が「本当に」かしこまって飲まないワインの話。

子どものころ、憧れていたことがある。
馴染みのバーのカウンターにつき、すっとワイングラスを傾けるひと。
または、素敵なレストランで分厚いワインリストに臆することなくワインを注文し、注がれたワインの想像通りの味に、ソムリエにうなずくひと。
そんなひとにいつかなりたい、なれるのでは、と淡い夢を描いていた。
そのころは遠い存在のように思えていたワインを、ずっと身近に感じられる場所を知るまでは。

「ワインは日常的なものだよ」、と言うわりに、なんだかかしこまってワインを飲むフランス人も多い。

けれど数年前からパリに住み始めた私が、
「ワインとはこうあってもよいのか、ワインとはこう飲んじゃってもよいものなのか」
と驚きと共に開眼させてもらったのは、パリのワインバーでのことだ。

今、パリでいちばん勢いがあるのは、自然で自由な造りのヴァンナチュールを扱うワインバーだ。ヴァンナチュールというのは、日本で「自然派ワイン」とか「ナチュラルワイン」とかあるいは、古い人なら「ビオワイン」なんて呼んでいるかもしれない。兎にも角にも、そこはワイワイがやがやした、もっとフレンドリーな場所だ。がさつと言ってもいいかもしれない。いや、でも、とにかく楽しい場所だ。美味しいものと、素直な味のワインを気軽に飲む。
しばしば通ううちに親しくなったオーナーやソムリエにお薦めを訊けば、ワインリストには載っていない何かを提案してもらえて、ちょっとイレギュラーでアブノーマル(!)な面白い味のものが出てくることもある。
それはまるで、親しいバーマンにちょっとオリジナルなカクテルを作ってもらう感覚。
全然違っているのは、オーナーやソムリエがちっとも正装していないし、髪も整えられてなくてボサボサなこと。
この場所には気取りや堅苦しさなど、みじんもない。

パリの街とヴァンナチュール

ここまで読まれた方は、ヴァンナチュールにご興味を持たれることと思う。
これは古来のぶどうの栽培方法とワインの醸造方法を引き継ぐ、化学肥料等を用いず、醸造中も添加物を極力入れないワインのこと。発酵に必要な酵母もぶどうの自生酵母を用いる。
作り手によってはAOCによる原産地呼称のルールなんてお構いなし。村名などもつかないことが多いので、ヴァンド・フランス(つまり「フランスのワイン」)と表記されているものが多い。
作り方を、イタリアワインの作りをお手本にしていることもあったりする、自由度の高いワイン。例えば、果皮ごと漬け込むという赤ワインにしかしない手順を、白ワインなのにしてオレンジ色のワインを作ってみたり。。。
セパージュ(品種)と地方が一致しないこともあり。
「だってこの地でワインを作っているけど、この品種を作りたかったんだもん。だから植えてみたよ」
そんな作り手が作るワインもある。

面白いじゃない。予備知識なんてご無用のワインたち。
あとで知っていく楽しみもあるし、知らずに「あー美味しい」と思うだけでも楽しめる、自由なワインたち。
このワインの楽しみ方は、自分の好きな地区で好きに過ごす、わがままなパリジャンとパリジェンヌのライフスタイルにもマッチしているんだろうな。

そんな面白いワイン、ヴァンナチュールを楽しめるワインバーがパリにはあちこちに現れている。ワインカーヴやレストランやカフェなども含めれば、パリでヴァンナチュールを楽しめる場所はいまや300を超えるという。

パリで今、一番チェックしておきたい店とは。

たとえば、いまパリで最もエッジなレストランの一つである5区の「Restaurant A.T」。2014年に日本人シェフ、田中淳さんが開いた店である。シェフはパリのミシュラン三ツ星「ピエール・ガニエール」をはじめ、スペインの二ツ星「キケ ダコスタ」やベルギーの一ツ星「パストラル」とヨーロッパ中のガストロノミーレストランを渡り歩いた、注目のシェフ。そんなA.Tがレストランの地下に今年4月に開いたのが「Bar à Vin A.T」。

この店でも世界中のヴァンナチュール、中には日本のボーペイサージュや四恩醸造といった銘柄までもが揃えられていて、パリのシーンの最先端を垣間見ることができる。最先端の店でいただく、気取らないワイン。パリに来たらぜひ訪ねて見て欲しい。

<メニュー>
グラスワイン 約7~12ユーロ
料理 12~30ユーロ
ボトルワインは上のレストランより少し割安。

<その他お薦めのパリのワインバー>
Coinstot Vino
25-26, Passage des Panoramas 75002 Paris
+33 (0)1 44 82 08 54
12:00-24:00(土曜 18:00ー24:00)
日曜休
http://coinstot-vino.com/
※英語可

116(ソンセーズ)
2, rue Auguste Vacquerie 75116 Paris
+33 (0)1 47 20 10 45
12:30~14:30 18:00~24:00
土・日休
※2015年9月オープン 日本語・英語可

Dauphin
131, Avenue Parmentier 75011 Paris
+33 (0)1 55 28 78 88
19:30~02:00
日・月休
http://www.restaurantledauphin.net/

Le Verre Volé
67, rue de Lancry 75010 Paris
+33 (0)1 48 03 17 34
12:30~14:30 19:30~22:00
http://leverrevole.fr/
※東京・目黒にも支店あり

Clown Bar
114, rue Amelot 75003 Paris
+33 (0)1 43 55 87 35
12:00~14:30 19:00~22:30
月・火休
http://www.clown-bar-paris.fr/

Bar à Vin A.T

住所
4, rue du Cardinale Lemoine 75005 Paris (Restaurant A.T 地下)
電話番号
33-1-42-01-20-49
営業時間
19:00~02:00
定休日
定休日 月・火曜
公式サイト
http://www.atsushitanaka.com/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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須永久美
ライター