いまブームのジビエ料理。どこで何を食べるべきかを学ぶ

東京・NY・パリ、世界の食トレンドの最前線を走る街を中心に、国内外を問わず、「次に食べるべきもの」「こんど行きたい店」をクローズアップしていきます。

2015年11月30日
カテゴリ
コラム
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いまブームのジビエ料理。どこで何を食べるべきかを学ぶ
Summary
・ジビエって何?の基礎知識
・2014年頃からトレンド食材に
・押さえておきたいポイントは?

今年もジビエの季節がやってきた。
一部の地域や特定種を除くと、日本では毎年11月15日に一斉に解禁。今年も、解禁と同時に各地のレストランでジビエ料理がラインナップされている。
もちろんこれまでも、ジビエはフランス料理店を中心にこの季節を待ちわびた愛好家たちのためにふるまわれてきたが、昨年からその動きが大きく変わった。
ぐるなび総研では、毎年年末に日本の豊かな食文化を共通の記憶として残していくためにその年の世相を反映した料理を「今年の一皿」として選定し、発表している。
2014年に「今年の一皿」として選定され、今やトレンド食材ともいえるジビエ。何が良くて、どこでどうやって食べるべきかジビエのエキスパートに話を聞いた。

ジビエがトレンド食材である理由

ジビエ(gibier)は、フランス語で狩猟によって捕獲された野生の鳥類や獣のことを指す。中でも、フランス料理でもっとも重用されてきたのはべキャス(Bécasse=ヤマシギ)。他に、コルヴェール(Colvert=青首=オスのマガモ)やグルーズ(Grouse=ライチョウ)、ピジョン・ラミエ(Pigeon Ramier=山バト、森バト)、パロンブ(Palombes=野バト)、ペルドロー(Perdreau=山ウズラ)、フザン(Faisan=キジ)などの鳥類、リエーブル(Lièvre=野ウサギ)、シュヴルイユ(Chevreuil=鹿)、マルカッサン(Marcassin=ウリ坊)などの獣が一般的に用いられる。
また、ジビエという言葉こそ使わなかったものの、日本でも昔からこれらジビエは冬の貴重なタンパク源として主に鍋料理などの材料として食べられてきた。

日本では、以前から田畑や住宅地を荒らすイノシシやシカの問題が起きていて、捕獲、駆除された鳥獣を可能な限り食肉等として活用するための方策が練られてきたが、それが昨年、厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を作成。狩猟から解体、調理、消費に至るまでのすべての工程で、安全性を確保のための取り組みが本格化。シカやイノシシの肉が一般に出回るようになり、急速に一般消費者に浸透したというわけだ。


(下の写真はエゾジカ肉。手前から外モモ、フィレ、背肉)

どんなジビエを食べるべきか?

ジビエは特に獣類については、クセのあるものが少なくない。中でも、リエーブルは「ジビエの女王」とも呼ばれ、フランスの古典料理に「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル」という煮込み料理があるが、かなり個性的な味わいであるため初心者にはオススメしかねる。
鳥類は比較的クセ少ないが、それでも一般的な鶏などに比べてかなり個性的だ。日本で食べられるジビエのなかでもっとも食べやすいと思われるのは、身が白く淡白なフザン=キジだろう。ただし、フランスでは昔からジビエの食べ方として肉の香りや旨み、柔らかさなどを引き出すために熟成させる、フザンダージュ(faisandage)という習慣がある。最近では、極端にフザンダージュすることは少なくなったが、淡白なキジに野性味を持たせるために行われていたことから、こう呼ばれるようになったと言われる。それゆえ、極端にフザンダージュしたキジはそれなりにクセがある。
そう考えると、鍋などで食べた経験があるであろう、カモやシカ、イノシシあたりが入門編としてはいいのかもしれない。

どこで食べるべきか?

昨年から本格的なブームになっただけに急遽扱いだしたという店も少なくないのが実情だろう。それゆえ、まだ食材のポテンシャルを出しきれず、期待ほどの味ではなかったということにもなりかねない。そんななか、いま東京でジビエを食べるならココと言われる店で話を聞いた。

門前仲町にあるイタリアン「パッソ・ア・パッソ」だ。
フィレンツェやトスカーナで修業し、2002年に同店を開いたオーナーシェフの有馬邦明さん。晩秋になると彼の作るジビエ料理を求めて、毎日満席となる超人気店だ。

扱うジビエは、マガモ、コガモ、キジ、ヤマドリ、イノシシ、ホンシュウジカ、エゾジカ、アナグマ、ツキノワグマ、ヒグマ、タヌキ、ハクビシン、ウサギなどと多岐にわたる。

(下の写真はコガモ)

有馬さんのジビエ料理が美味しい理由は素材にある。
例えば、シカなら水が綺麗な場所、イノシシなら里芋を食べているもの、アナグマならみかんを食べて育ったもの。猟の際は、例えばシカは犬に追わせるが、追われたシカは水辺に逃げる習性があるので、川の近くで待ち構え、逃げる距離を短くすることで、毒素の発生が押さえられ、肉質が良いままで保たれる。さらにすぐに血抜きや内臓の処理をすることも重要だ。

鳥も日本海側で捕れるものが多い。シベリアから渡ってきた鳥は新潟など日本海側に飛来し、その後太平洋側に飛んで行くが、太平洋側に飛んでくるものは水に浸かっていることが多いのだという。水が濁っていたりするとその匂いが羽根にしみつき不味くなるのだそうだ。また、鉄砲で撃ったものでは弾がどこに当たるかわからないし、水の上に落ちたりするため網獲りにする。犬に取りにいかせるシーンを目にしたことがる人も多いだろうが、犬に取らせると獲物を噛むため、そこから菌が入り、傷んでしまう。

(下の写真はマガモ。※色鮮やかなほうがオス。いわゆる、青首)

また発送する際にも首をどの方向に曲げるかということや羽をちゃんとしまうということも肉質が良いまま保たれるためには重要だし、肉の温度を下げないように新聞紙などでくるんで発送されたものでないといけないのだという。

ちなみにいま有馬さんが特にその肉質に惚れ込んでいるのがアナグマ。イノシシなどと同様、脂の融点が低いため人間の体内で消化する時にあまり体力を使わないのだという。
そんな様々なことを知ってジビエを食べるとその美味しさが増すのではないか?寒くなり本格的なジビエシーズンが到来した。フレンチ、イタリアンだけでなく、あらゆるジャンルであらゆるスタイルの料理が増えてきているので、一度味わってみてはどうだろうか?

※料理写真は、「アナグマのロートロ」。
料理はコース10,000円(税・サ別)

パッソ ア パッソ

住所
〒135-0000 東京都江東区深川2丁目6-1 アワーズビル 1階
電話番号
03-5245-8645
営業時間
18:00~21:30(L.O.)
定休日
定休日 水曜(臨時休あり)
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/n6a7z2kh0000/

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