美食エリア・渋谷2丁目に注目フレンチ誕生! 数々の有名店を渡り歩いたシェフが作るつなぐフレンチ

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美食エリア・渋谷2丁目に注目フレンチ誕生! 数々の有名店を渡り歩いたシェフが作るつなぐフレンチ
Summary
1.「夢は30歳でシェフになる」その夢を本当に実現させた『Calie(キャリエ)』高木和也シェフ
2.使う食材から盛り付けの配置まで、すべてに理由があるというシェフの料理とは?
3.コンセプトは“つなぐフレンチ”、食の注目エリアである渋谷2丁目もつないでいきたい

30歳でシェフになる! 夢を実現するための驚くような手段とは?

『シェラトンホテル東京』、『オザミトーキョー』、『オレキス』、『レフェルヴェソンス』、『ラ フィネス』と名前を聞くだけでも恐縮してしまうような名店で研鑽を積み、20歳で料理の道に入り30歳でシェフになるという夢を『ビストラン エレネスク』で実現させ、今年9月19日に『Calie(キャリエ)』のシェフに就任した高木和也氏。ここまで修業先を変えることはかなり珍しい。その理由を訊ねるとホテル、ビストロ、レストラン、グランメゾンと考えられる限りのジャンルを経験してからシェフになりたかったと答えた。

すべては夢を実現させるため。ひとつの店で冷製の前菜からデザートまでひと通りできるようになったら次の店へ。まさに“修業”である。もちろん店によっては短期間で移る理由を訊かれたが夢の話をすると、それならばと受け入れてくれた。休みの日にはありとあらゆる店へ食べ歩きに出かけ、力不足の菓子作りは積極的にパティシエを手伝って技術を学んだ。有言実行、なんと本当に30歳で麻布十番『ビストラン エレネスク』のシェフとして招聘されたのである。それから2年、今度は念願の高木シェフ自身の店『Calie』をオープンさせた。

すべてに理由がある、論理的に構築する料理の世界に五感が喜ぶ

前菜は千葉県八街『エコファームアサノ』浅野悦男さんと石川県能登『高農園』高 利充、博子夫妻の野菜の再現。100軒以上の農家を回り、直接話を聞き畑仕事を手伝い、このふたりの野菜に決めた。野菜の質の高さはもちろんだが、自分たちの野菜がどんな料理になり客の反応はどうだったのかを聞いてくる、そして自分を店のスタッフだと考えて欲しいとの言葉に惹かれた。

送られてきたらまず生で食べてみる。それから煮る、焼く、蒸す、揚げる…、いろんな方法の中から最適だと思ったもので調理する。例えば苦みを消す場合、まず水溶性か脂溶性かで分け、水溶性なら煮たり茹でたり、脂溶性なら焼く、揚げる。そうやって野菜の本質を見極め、より高みへと導くのである。生産者の想いがつまった野菜、その想いを確かな技術と感性で最高の形にして客に伝えるシェフ。“つなぐフレンチ”とはこういうことなのか。

最高級のブルターニュ産オマールにふさわしく、色鮮やかで華やかな皿にうっとり。「さっきまで生きていたので新鮮さを楽しんでもらうよう、ギリギリの火入れにしました」と高木シェフ。

なるほど、刺身のようにとろんとした食感と火が入ったことによってたつオマールの香りに舌がとろけそうだ。この味わいを創るのは火入れの感覚だけではない。水溶性という性質をふまえた料理のテクニックも必要なのだ。水溶性は淡水(水道水)だと味や香りが溶けてしまうので可能な限り水に入れる時間を少なくする、茹でた後も氷水ではなく氷塩水につけるといったこだわりよう。

鱚は尾だけを揚げ、身はレアに焼く。「自分の感覚なのですが尾や鱗は揚げると甲殻類の味がするんです。だから丸ごとおいしく食べてもらえます」というシェフ。見えないところにより手をかけることによって最低限の食材でもおいしいひと皿に成りえるのだ。

肉の火入れに一番自信があるというシェフ。ランド産の鳩は緩くは出したくないが熱すぎるとレア感が失われる。火入れのテクニックは骨つきで7割ほど焼き、余熱で8割までもっていき、皮目をパリッと焼いて8,5割、その余熱で9,5割、最後は温めた皿で10割にしてテーブルへ。さらに言えば最初の7割の焼き加減は客のペースをみながら調節している。なんて綿密な計算の火入れなのだろうか。「修業先で鍛えられたこともあるのですが温度計を使わなくても不思議と感覚でできるので得意分野なんでしょうね。温度管理の方法も知り尽くしているので、どんな状況にも対応できます」と言うだけあって目を見張るほどやわらかくてジューシー、本当に見事な仕上がりである。

これは珍しい! それもそのはず。まだ都内ではこちらとあと1店舗しか取り扱いがないそう。ブルゴーニュで研修した日本人が能登でワイナリーを立ち上げた。「ハイディワイナリー 相承(SOJO) 2014」。まだ始まったばかりのワイナリーゆえ、ブドウ自体は買い付けたカベルネソーヴィニョンとメルローのブレンドで、透き通るような色味はピノノワールに近い。シェフの肉料理はダイレクトにうまみはくるが味わいは繊細。鳩のミネラルとソースと合わせて、タンニンがありつつ繊細でエレガントなワインを選んだ。エチケットも日本酒っぽくてかっこいいではないか。

『Calie』の真髄である“つなぐフレンチ”は、このシンプルなデザートでも物語る。能登の『高農園』がつないでくれた金沢『ヤマト醤油』の味噌、友人の埼玉『田中農場』の卵、足繁く通ったことで絆が生まれ仕入れができることになった『西岩商事』のフルーツ。

これらがひとつでも欠けたら完成しなかったこの「味噌プリンアラモード」。味噌とプリンの組み合わせと聞いて少々懐疑的だったが、伝わるのは食材そのものが持つ滋味。そして味噌の風味はなくてはならないものであった。なぜ味噌を入れたのか問うと「日本人は乳製品を消化する酵素が弱く、それを促してくれるのが麹の力なんです。店を出た時にやっぱりフランス料理って重いよねと言われるのは悲しいからコースの後半に麹を使った料理を出そうと思って」と語る。科学的な裏付けがあってこそのホスピタリティー、あふれる優しさを感じずにはいられない。

シェフの料理の真髄に迫る! 譲れない3つのこだわり

高木シェフの料理へのこだわりは3つある。
ひとつ目、食材選びはプロの話を聞いて自身の目で確かめる。例えば今回出した鱚はデータ上だと旬ではないのだが築地に行き魚屋に話を聞いて自分の目で見ておいしいとわかったので使ってみる。野菜も食器もグラスも生産地に必ず赴き生産者と向き合う。お互いを知ることによって生まれた絆が料理を昇華させてくれるのだという。

ふたつ目はロスを出さない。前菜のように野菜そのものが主役の料理では一番おいしいところを使い、切り端は魚や肉料理のピューレにしたり揚げてフレークにしたりして使い切る。いわゆる“一物全体”をモットーにしている。

そして皿の中で“五味を揃える”こと。決めたテーマに甘み、酸味、苦み、塩み、うまみを盛り込む。そうすることで味の統一がされつつバラエティー豊かな料理になる。シェフにとっては選ぶ食材、器から盛り付けの配置まで、すべてに理由があり、理由がないものは皿の上から排除してしまう。話を訊いて面白いと思ったのは人間の習性において食べ進めていく過程を考えて、アクセントにする辛みや甘みを持つ食材やソースの位置を決めていること。見た目よりも口に入る味覚の順番にこだわりをもつ、なんという論理的な世界観なのだろう。

店名は込められたのは「仲間」、「つながり」、「宝箱」

店名の『Calie』は造語である。ca、li、eに分けてそれぞれを頭文字にするとフランス語でcamarade=仲間、lien=つながり、ecran=宝箱になる。「そもそもこの店のオーナーは仲間からの紹介だったんです。鳩に合わせたワインは食器屋さんから、お皿はグラス屋さんからと、どんどんつながっていくことが本当に嬉しかった。この店ができて今度はお客さまと僕らがつながる。僕らを通じて食材を知ったり買ったりすることでお客さまと生産者がつながるといったように、人やものがつながっていくことを体現できる店でありたいと思います。ただおいしいだけではなく食事を楽しみながら知識が豊かになる、宝箱という意味はここにあります」とシェフ。

渋谷2丁目は飲食店の新店や移転ラッシュでいま注目のエリアだ。近所のシェフたちとみんなで盛り立てていこうと結束を固めながらも名店ばかり。オリジナリティを出さなければ生き残れない。目指すは、わかりやすく本能にうったえかける味。口に入れた瞬間「おいしいよね」と言ってもらえる料理を作っていきたいと語る。瞬く間に予約困難になりそうな予感がする店の誕生を心から嬉しく思う。次なる夢は「35歳でオーナーシェフになる」こと。叶えるべくきっと猛進するに違いない。

(メニュー)
サフィール(8皿)/8,000円
ディアマン(11皿)/10,000円
※ランチは1日1組限定で5,000円(1人前)、4名以上より承る
※すべて税、サービス料別

Calie(キャリエ)

住所
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-6-8 ST青山 1F
電話番号
03-6805-1148
営業時間
コース18:00〜L.O.23:30(L.O20:30)、アラカルト20:30〜L.O.22:30 ※アラカルトの営業時間は要確認
定休日
定休日 月曜
公式サイト
http://calie-aoyama.com/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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杉本佳子
ファッションジャーナリスト兼美容食研究家