私の感動!グルメ
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野瀬 泰申
日本経済新聞
編集委員
野瀬 泰申
野瀬 泰申日経新聞Web版で食に関する連載(「食べ物新日本奇行」)や、様々な場所で食に携わる仕事をしているので、外食が当たり前の生活です。でもそんな生活だからこそ、僕は本当に美味しい食べ物というのは、日常の食生活の中にあるのではないか、と思います。「月に1度は高いレストランに行って美味しいものを食べようよ」なんて食生活は寂しいじゃないですか。僕が美味しいな、って思う飲食店はどこも大衆食堂みたいに日常の食の延長上にあるお店ばかりですね。
思わずもう一度行きたいと思ってしまった町の食堂
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一二三食堂
(大衆食堂/群馬・高崎)
最近一番感動した店は仕事で訪れた群馬県・高崎の住宅街あります。「一二三(ひふみ)食堂」といい、昭和5年から営業しているという街の老舗。定食だけを置いている普通の食堂なのですが、この店の「カツ丼」は素晴らしい!僕がこの店を訪れた時は、午後3時頃。お昼の時間帯では無いのに店内でたくさんのお客さんが「カツ丼」を食べているのですよ。だから僕も注文してみました。群馬県は卵とじではなくソースかつ丼の地域ですから、運ばれてきたカツ丼は一口カツが3枚ほど。そしてご飯にはきざみノリがひっそりと引いてありました。カツはやさしいソースの味が染みていて、箸で切れるほど柔らかい…。そのカツを半口食べて次はご飯に箸を伸ばしてみたら、なんとご飯には醤油だしの効いたタレがうっすらとかかっているのです。カツはお店独自のソース、下のご飯は醤油味、その間にあるきざみノリが見事に両者の味を中和していて、「あぁ、すごく丁寧で手間のかかった料理を食べさせてくれるなぁ」と感動しました。付け合せのお味噌汁も大変美味しかったです。また食後のサービスでコーヒーか牛乳を出してくれたのも本当に嬉しかったですね。もう一回行きたいと思わせるお店ってなかなか出会えませんが、「一二三食堂」はそんな数少ないお店です。あまりに感動的だったので日を改めてもう一度新幹線に乗って行きました。

鮮魚の旨さに出会ったのが金沢!
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カニ面(めん)
カニ面は私が金沢で仕事をしていた時に出会った旨いもの!ズワイガニのメスを香箱(コウバコ)蟹といいますが、この身をきれいにとり甲羅にずらっと並べてタコ糸で結んであり、金沢ではおでんのネタとなっています。殻の中や足など細い部分の身が全て入っているので、カニ面を食べるとカニの部位の微妙な味の差がわかります。金沢で働いていた頃、同僚記者とよく「カニ面に食おう!」っと言って近くのおでん屋によく行きました。カニ面だけでなく、金沢にはお饅頭のように実が甘い“饅頭貝”、甘エビの親分みたいな“ガスエビ”、など安くて美味しいお魚が豊富にあって、本当に私はこの地で美味しい魚を食べ過ぎてしまいました。
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プロフィール
野瀬 泰申
日本経済新聞編集委員
野瀬 泰申
1951年福岡県生まれ。日本経済新聞編集委員。
大阪でソースをかけた天ぷらを食べる人々の姿を見て、「食の方言」に関心を抱く。以来10年余、全国の食品サンプルを観察し続けている。著書に『秘伝「たこ焼きの踊り食い」』、『食品サンプル観察学序説』、『眼で食べる日本人−食品サンプルはこうして生まれた』、『全日本「食の方言」地図』。編著に『偏食アカデミー』など。
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